※この作品はR-18です。

強化人間がSEEDの世界で活躍します   作:ナラティブ

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29話

月面宙域――地球発のレクイエムの光を中継し、プラントへと曲げるための絶対防衛拠点『第1中継ステーション(ステーション・ワン)』。

その巨大な構造物を破壊すべく、アークエンジェル、エターナル、そしてロンド・ベルの旗艦ラー・カイラムが全速で進撃を開始していた。これを阻止すべく、ザフト月艦隊のほぼ全軍が黒い宇宙を埋め尽くすほどの圧倒的な数で迎撃の陣を敷く。

まさに一触即発。戦火が切って落とされるかと思われたその瞬間、全通信回線にラクス・クラインの、凛とした静かな声が響き渡った。

『ザフト、そして地球軍の兵士の皆さん。……今、目の前にあるあのレクイエムは、人々の命を無差別に奪うだけの、無用な大量破壊兵器です。私たちは、これを断じて容認しません。これより、あの砲を完全に破壊します』

一切の迷いのない、堂々たる破壊の宣言。

「歌姫」ではなく、一人の確固たる意志を持った指導者としてのラクスの毅然とした態度と、その言葉の正しさに、迎撃に向かおうとしていたザフト兵たちの間に激しい動揺が走る。

「本当に、またあの光を撃つというのか……?」「俺たちは何のために戦っている……?」

引き金にかかった彼らの指が、わずかに鈍った。

同じ頃、全速で突撃するラー・カイラムのモビルスーツ・デッキは、戦場以上の熱気に包まれていた。

連合の有志から譲り受けた物資と、限られた時間の中で、整備班とパイロットたちは持てる技術のすべてを注ぎ込み、ジェダの改良型を組み上げていた。

「スタークジェダ、各部固定よし! 出撃準備を急げ!」

「プロトスタークジェダ、対要塞用大型ミサイルの安全装置解除! 胸部追加装甲の圧着確認!」

ハンガーには、胸部や肩部に無骨な追加装甲を施しミサイル・ポッドを配した**『スタークジェダ』、さらに重装甲化され、レクイエム中継拠点を一撃で粉砕するための巨大な対要塞用ミサイルを背負った『プロトスタークジェダ』、そしてスラスターを増設した『ジェダ高機動仕様』**が、それぞれ牙を剥くように並んでいる。

これらカスタム機に使用されなかった余剰のビームライフルやシールドなどの武装は、すべて予備の補給物資としてコンテナへと固められ、戦中での即時換装に備えてラー・カイラムのカタパルト奥へと滑り込んでいく。

そして、ハンガーの中央。

そこに佇むのは、傷ついた『白き処刑人』が完全に生まれ変わった姿――**『フルアーマーユニコーンガンダム』**だった。

両腕のシールドには、連合から譲り受けた強力なビーム・ガトリングガンが強固に接続され、左右の脚部には3連装ハンド・グレネード・ユニット、両肩には3連装ミサイル・ポッドがズラリとマウントされている。頭部バルカンも実弾が満載され、腕部には専用のロケットランチャーが追加。

さらに、焼き切れたエターナルパックの機能を再編・引き継いだ背部の可変装備**『ストライカーブラスト』**は、戦闘状況に応じて変形し、そこから直接ビームサーベルを抜刀できる独自の改修が施されていた。

「これより、大型ブースターロケットの最終接続を行う! 各パイロット、機体に搭乗しろ! 人の手じゃあの質量は持ち上がらんぞ!」

整備班長の怒号が飛ぶ。

戦艦の主機用を転用した、ユニコーンの全長をも越える巨大なブースターロケット。これは人間の力やクレーン程度では、揺れる航行中の艦内において精密にドッキングさせることは不可能だった。

「よし、俺が左側を支える! 慎重に合わせろよ!」

「了解、右側いくぞ。オーライ、オーライ……」

ガシャン、ガシャンと重々しい足音を立て、起動したジェダたちがブースターの巨体を抱え上げる。パイロットたちが極限の集中力で機体を操り、ユニコーンの背部『ストライカーブラスト』のハードポイントへと、巨大なブースターの接続プラグを誘導していく。

ミリ単位の調整。ジェダのマニピュレーターが慎重にブースターを押し込み、ユニコーンの背面にガチリ、と噛み合った。

『接続(ドッキング)完了! 固定ロック、完全密着を確認!』

システムサインが緑色に点灯し、フルアーマーユニコーンの全システムが完全覚醒(フルブースト)の咆哮を上げる。全身に凶悪なまでの火力を纏い、その背に戦艦並みの推進力を爆ぜさせる怪物。

コックピットの中で、リンは深く息を吐き出し、黒い瞳で正面を見据えた。

過呼吸の震えはもうない。頭の中に響いていた謎の強化人間の洗脳も、仲間の声が完全に消し去ってくれた。今、彼女の心にあるのは、ラクスが示した未来へ道を切り拓くという、鋼の決意だけだ。

「みんな、ありがとう。……最高の機体よ」

義足をペダルに深く踏み込み、リンはスロットルレバーを握りしめた。

「ロンド・ベル司令リン、フルアーマーユニコーン……行くわよ!!」

ラー・カイラムの電磁カタパルトが爆発的なエネルギーを放ち、無数の実弾と強大なブースターを背負った純白の魔神が、足並みの乱れるザフト月艦隊の待つ戦場へと、光の矢となって飛び出していった。「全機、突撃――っ!!」

リンの鋭い号令とともに、ラー・カイラムの巨大なカタパルトから、次々とモビルスーツが宇宙へ射出されていく。ロンド・ベルが誇る全47機のうち、動く限りのすべての戦力である40機が、暗黒の虚空へと一斉に解き放たれた。

月面をバックに、息を呑むような美しさで陣形が展開されていく。

その最前線を、追加装甲を纏った精鋭たちが突き進む。

重火力を誇るスタークジェダと、巨大な対要塞ミサイルを背負ったプロトスタークジェダ、そして背部スラスターから凄まじい業火を吹き出すジェダ高機動仕様。これらのカスタム機たちが美しく、かつ緻密な陣形(フォーメーション)を組みながら、ザフト月艦隊の防衛網を正面からこじ開けていく。

『こちら前衛隊! 敵第一波、来ます!』

ラクスの演説で足並みが乱れたとはいえ、基地を守るザフト兵たちも必死だった。

数機、数十機という単位のザクウォーリアやグフイグナイテッドの集団が、ビームトマホークや突撃銃を手に、恐るべき速度でこちらの陣形に襲いかかってくる。

「通さないわよ……! 私たちの司令の道を塞がせないで!」

だが、それを予測していたロンド・ベルのパイロットたちも一歩も引かない。

フォーメーションの外殻を固める、通常仕様のジェダたちが一斉にビームライフルを構え、迎撃の弾幕を張った。補給されたばかりの潤沢な弾薬が、容赦なくザフトのモビルスーツに襲いかかる。

ズバババババンッ!!

「な、なんだこのジェダの火力は……っ!?」

「うわぁぁぁッ!」

的確な連携連射によって、接近してきたザクウォーリアが次々と撃ち落とされ、宇宙空間に光の華を咲かせていく。通常ジェダのパイロットたちは、自らを盾にするかのように激しく動き回り、襲い来るザフトの壁を力ずくで左右に押し広げていった。

すべては、ただ一機のために。

ロンド・ベルの総力が、戦場の中央に一直線の「通り道」を作り出す。

『リン司令、今です! ぶち抜いてください!!』

「みんな……! ありがとう、行ってくるわ!!」

背中に接続された戦艦用の巨大なブースターロケットが、爆発的な轟音とともに眩い光を放った。

全身に重火器をこれでもかと満載したフルアーマーユニコーンガンダムが、ジェダたちが切り開いた光の道を、常識外れの加速度で突き進む。

強烈なGがリンの身体と機械の義足に襲いかかるが、彼女の黒い瞳は真っ直ぐにステーション・ワンを見据えていた。

仲間たちが作ってくれたこの道。その先にある悪夢(レクイエム)を、今度こそ自分の手で撃ち砕くために、純白の魔神は戦場を切り裂く一筋の閃光となって突撃していった。『前方、ザフト月艦隊の主力戦艦6隻が急速接近! 本隊を直接叩く気のようです!』

ラー・カイラムからの緊迫した通信が、突撃するモビルスーツ各隊のコックピットに響き渡る。

前方から迫るナスカ級、およびゴニド級の宇宙戦艦6隻。それらが一斉に主砲をこちらへ向け、フルアーマーユニコーンの通り道を、その圧倒的な対空砲火で塞ごうとしていた。

「戦艦の厚い壁か……だけど、私たちの前進は止められない!」

リンがスロットルをさらに押し込もうとしたその時、フォーメーションの右翼から一機の機体が猛然と加速し、ユニコーンの前に躍り出た。

重装甲を施されたその機体は――1機目のプロトスタークジェダ。

『リン司令、ここは俺たち重装甲・重火力隊に任せて、そのまま突っ切ってください!』

パイロットが叫ぶと同時に、プロトスタークジェダの背部にマウントされた、あの巨大な『対要塞・対艦用大型ミサイル』のロックが次々と解除されていく。

『標的、前方ザフト艦隊中央! ぶっ飛べェーーッ!!』

ガシィィィンッ! と凄まじい衝撃波を宇宙空間に残し、プロトスタークジェダから大型ミサイルが撃ち出された。戦艦の巨体に匹敵するほどの質量を持った弾頭が、スラスターから強烈な光の尾を引きながら、一直線に迫り来る6隻の戦艦群へと突き進んでいく。

「何だ、あの不気味なミサイルは!? 迎撃しろ! 落とせ!!」

ザフトの戦艦から無数の対空レーザーやガトリング砲が放たれ、光の網がミサイルを捉えようとする。しかし、プロトスタークジェダの放った一撃は、その激しい防空網を力ずくで食い破り、中央に位置するザフト戦艦のブリッジに真っ直ぐ突き刺さった。

――ズガァァァァァァァァンッッ!!!

宇宙の闇を昼間のように照らし出す、凄まじい大爆発。

対要塞用の破壊エネルギーは、直撃した1隻を一瞬で鉄の塵へと変え、その凄まじい爆風と衝撃波は隣接していた残りの戦艦5隻をも容赦なく巻き込んだ。

『うわあああっ! 艦の制御が効かん!』

『面舵(おもかじ)! 避けろ、衝突するッ!』

大爆発の余波をまともに受けたザフトの戦戦艦群は、装甲を激しく焼き崩され、互いに衝突を避けるためにその強固な陣形を完全に崩された。鉄の壁だったはずの6隻の戦艦が、四方八方へとバラバラに散っていく。

「見事よ……っ! ロンド・ベル、前衛隊、突撃を続行しなさい!」

リンのフルアーマーユニコーンは、爆炎と激しい煙を上げるザフト艦隊の文字通りの「隙間」を、戦艦用の巨大ブースターの爆発的な推力で一気にすり抜けた。

戦艦6隻による迎撃網は完全に崩壊。

プロトスタークジェダが切り開いたその大穴の向こうには、今や完全に剥き出しとなったレクイエムの中継拠点、ステーション・ワンの姿がはっきりと見え始めていた。

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