「撃てぇっ!」
マリュー艦長の凛とした号令が響き、再び対峙したアークエンジェルとミネルバが、宇宙空間で激しくすれ違う。
その刹那、アークエンジェルの全砲門から放たれた一斉射撃が、ミネルバの装甲を正確に穿った。
『ミネルバ、もうやめてくれッ!』
さらにその直後、戦場を駆け抜けたアスランのジャスティスが、ミネルバのメインスラスターを的確に撃ち抜いた。
致命的な推進力を失い、ミネルバは完全に沈黙する。アスランはそのままアークエンジェルの加勢へと回り、ミネルバを無力化した。
そして、私は再び戦場に立っていた。
手にあるのは、ビームサーベルただ一本のみ。それでも、私の心にもう迷いはなかった。
「シン……!」
覚悟を決め、私はスラスターを全開にしてデスティニーへと一直線に突っ込んだ。今の私には、近接戦闘で決着をつけるしかない。
対するシンは、明らかに様子がおかしかった。
『なんで……なんでなんだよッ! あんたも、アスランも……! 俺は、俺はただ……っ!』
シンの悲痛な叫びが通信越しに響く。
彼の太刀筋には、先ほどまでの鋭い殺気がない。迷い、ただひたすらに迷い続けている。
その隙を、私が逃すはずはなかった。
「はあああッ!」
ピンク色の光刃が一閃する。私はデスティニーの左腕を斬り落とし、そのまま反転して右足を両断。さらに背後に回り込み、巨大な光の羽根の一部を根元から斬り裂いた。
『うわぁぁぁっ!?』
体勢を崩したデスティニーの顔面を掠めるように、サーベルの切っ先を振るう。灼熱の刃が、デスティニーのメインカメラの右側を無惨に焼き焦がした。
四肢をもがれ、半壊したデスティニー。私はそのコックピットに狙いを定め、トドメを刺そうと踏み込んだ。
――その瞬間。
ピキィィィンッ!
私の脳裏に、凄まじい悪寒とともに最悪のビジョンが閃いた。
(ネオジェネシス……!? 撃たれたら、みんな……!)
ニュータイプの直感が告げる破滅の光景。私はギリギリでサーベルの軌道を逸らし、デスティニーへのトドメを取りやめた。
シンを撃っている場合じゃない。あっちを止めなければ、すべてが終わる。
「……っ、行かなきゃ!」
私はデスティニーに背を向け、最大推力でネオジェネシスへと急行した。
力を失い、半壊したデスティニーは、月の引力に引かれるようにして月面へと力なく墜落していった。
荒涼とした大地に横たわる機体のコックピットの中で、シンはまだ迷いの中に囚われ、虚空を見つめていた。
『俺は……俺は、どうすれば……。ステラ……マユ……』
そこへ、赤い機体が静かに降り立つ。ルナマリアのインパルスだ。
インパルスは崩れ落ちたデスティニーに寄り添うように膝をつき、その半壊した機体を、痛みを分かち合うようにそっと抱きしめた。
『シン……もう、いいのよ……』
ルナマリアの涙声が響く。迷い続ける少年の心を包み込むように、彼女の温もりだけが、そこに静かに満ちていた。