あのメサイアの激戦から、半年という月日が流れた。
世界を救ったロンド・ベル隊には、各国から数え切れないほどの勲章や莫大な褒美が贈られた。けれど、光が強ければ影もまた濃くなる。それと同時に、私たちの元には「強大すぎる私設軍隊」「秩序を乱す危険分子」という、世界からの冷酷な批判の嵐が容赦なく突きつけられていたの。
「私のせいで、みんなが傷つくのは……もう嫌だよ……」
褒美と非難の狭間で、私は一人、深く悩み続けていた。これ以上仲間たちを政治の道具にさせないため、そしてユニコーンという力をこれ以上表舞台に出さないため――私は大きな決断を下した。
ロンド・ベルの、解散。
みんなを軍から解放し、それぞれの道を歩ませる。それが私の選んだ道だった。
ロンド・ベルを正式に解散させた直後、私の前に二人の青年が現れた。キラとアスランだった。彼らは新しく創設された国際平和監視機構『コンパス』の制服を身に纏っていた。
「リン、新しく創設された『コンパス』へ来ないか? 君の力が必要なんだ」
キラが真っ直ぐな目で私を見つめ、アスランも静かに頷く。だけど、私は微笑みながら首を横に振った。
「ありがとう。でも、私は行かないわ。……表舞台のあなたたちには見えない光と影が、この世界にはまだたくさんある。私は、コンパスの手が届かない『裏』で、これからも動き続ける」
それが、私の新しい覚悟だった。平和の光を支えるための、影になるという覚悟。
その言葉を背後で聞いていた、元ロンド・ベルのパイロットたちがドタドタと足音を立てて集まってきた。激戦を共に生き残った、大切な仲間たち。
「だったら、俺たちの行き先も決まりだな!」
「そうよ。お前が裏で無茶するって言うなら、私たちは最後までリンの護衛につかせてもらうさ」
軍籍を捨ててでも私を守ると言ってくれる仲間たちの笑顔に、私の胸の奥がじわりと熱くなった。
届かない別れ
私たちがそれぞれの道を歩み出す直前、あのぶっきらぼうで、誰よりも優しかったラー・カイラムの副艦長が私を呼び止めた。そこには、キラやアスランだけでなく、月面での傷を癒やして前を向き始めたシンとルナマリアの姿もあった。
副艦長は私たち一人ひとりの顔を見つめ、最後にシンたちの肩をぽんと叩いた。
「キラ、アスラン。そしてシン、ルナマリア……」
いつもよりずっと穏やかな、まるで父親のような声だった。
「――リンのお世話を、しっかり頼んだぞ。この馬鹿娘は、すぐに一人で全部背負い込んで無理をするからな」
「ちょっと、副艦長!」
私が照れくさくて声を上げると、シンが「分かってますよ、おっさん。任せてください」と、少し照れくさそうに笑った。ルナマリアも「私たちがちゃんと見てますから」と優しく微笑んでくれる。
それが、副艦長と交わした最後の言葉だった。
その挨拶を終えた後……副艦長は静かに軍を去り、そのまま忽然と消息を絶った。どこへ行ったのか、何をしているのか、誰も知らない。完全に消息不明になってしまったの。
だけど、新しく始まったそれぞれの未来へ歩み出した私たちが、その寂しい事実を知らせる声を聞くことは、最後まで一度もなかった――。