投降した105ダガーの武装を完全に解除させ、駆けつけた味方の部隊にパイロットの身柄を引き渡した後、私はユニコーンをネェル・アーガマへと帰還させた。
息をつく暇もなく、パイロットスーツのまま急いでブリーフィング・ルームへと向かう。直ちに、コンパスと私たち『新生ロンド・ベル』による合同作戦会議が開かれるからだ。
部屋の巨大なメインモニターには、すでに暗号化された通信回線が繋がっていた。
画面はいくつかに分割され、コンパスの最新鋭艦『ミレニアム』、そして歴戦の母艦『アークエンジェル』の艦橋が映し出されている。そして中央のモニターには、コンパスの総裁であるラクス・クラインの姿があった。
「――皆様、先ほどのオルドリン市での防衛・鎮圧任務、本当にお疲れ様でした。リンさんも、新生ロンド・ベルによる迅速な援護、感謝いたしますわ」
ラクスの凛とした、けれどどこか憂いを帯びた声が響く。私は背筋を伸ばし、軽く頷きを返した。
「いえ、コンパスの皆さんと連携できたおかげで、民間人の被害を最小限に抑えられました。……でも、被害は甚大です。あんなデストロイガンダムまで持ち出してくるなんて」
私の言葉に、アークエンジェルのマリュー艦長が厳しい表情で頷いた。
「ええ。今回のオルドリンへの侵攻を指揮しているのは、ブルーコスモス残党のトップ、ミケール大佐よ。奴は現在の混迷した世界情勢を利用し、再び各地で戦力を結集させつつあるわ」
モニターに、憎きミケール大佐の顔写真と、彼が率いるブルーコスモス残党の活動拠点、補給ルートと推測される戦略マップが展開された。
「現在、コンパス側……ミレニアムとアークエンジェルは、このミケール大佐の部隊を追撃し、彼らの拠点を叩く作戦を立案していますわ」と、ラクスが静かに、しかし決意を込めて告げる。
「ですが、奴らも散発的に動いており、正面からの攻撃だけでは取り逃がす可能性が高いのです。そこで、新生ロンド・ベルのネェル・アーガマには、別働隊として敵の退路を塞ぎ、挟撃する役割をお願いできないでしょうか?」
「挟撃して、ミケール大佐を完全に逃がさないようにするんですね。分かりました」
私はモニターに映るラクスやマリュー艦長たちの顔をまっすぐに見つめ返した。
「私たちは『裏』からコンパスを支え、平和を守ると決めました。ミケール大佐の暴走で、これ以上無関係な人たちの街が焼かれ、命が奪われるというのなら……新生ロンド・ベルが、彼らの逃げ道を完全に断ち切ってみせます」
「頼りにしていますわ、リンさん。そして、くれぐれも無理はなさらないで。共に、この悲しい連鎖を止めましょう」
ラクスの優しくも力強い言葉に、私は「はい!」と力強く返事をした。
これ以上、ミケール大佐の好きにはさせない。次なるブルーコスモス殲滅作戦に向けて、私は改めて気を引き締め直した。作戦の詳細を詰め、通信を切ろうとしたその時、ラクスがふと思い出したように穏やかな微笑みを浮かべて付け加えた。
「それからリンさん。この度の作戦には、ファンデーション王国からの協力も得られることになっていますわ。彼らの洗練された戦術と物資の提供は、私達にとっても大きな支えとなります」
「ファンデーション王国から……? そうなのね。協力してもらえるのは心強いわ」
私は素直に感謝の言葉を口にした。今は少しでも多くの力が、この戦いを早く終わらせるために必要なのだ。
「ありがとうございます、ラクス。ファンデーションと連携できれば、ミケール大佐の逃げ道を塞ぐ作戦もより盤石なものになるはずだわ」
私は気持ちを切り替え、コンパス側の担当者に視線を移した。
「協力してくれるのは心強いけど、連携を密にするなら事前のすり合わせが不可欠よ。ファンデーション王国との合同作戦会議、早急に設定をお願いできる?」
「承知しました。現地の情勢と彼らの到着予定を勘案し、直近で調整をかけます」
「ええ、お願い。ミケール大佐の尻尾を掴むために、無駄な時間はかけられないわ。詳細な日程が決まったらすぐにネェル・アーガマへ連絡して。私達もその時に合わせて詳細な陣形プランを練っておくから」
私は通信を切る間際まで、気を緩めることなく手元のコンソールで戦術マップを確認し続けた。ファンデーション王国という新たな駒を得て、戦局はさらに複雑に動こうとしている。その波を乗りこなし、今度こそミケール大佐を追い詰めるために――。