案内された重厚な扉を抜け、プラント政府の大会議室へと足を踏み入れた。
円卓を囲むようにプラント側の高官たちがすでに着席していたが、その背後に控える護衛の顔ぶれを見て、私は思わず目を丸くした。そこには見慣れた銀髪と金髪――ザフトの白服に身を包んだイザーク・ジュールと、黒服のディアッカ・エルスマンが立っていたのだ。
「イザーク! それにディアッカも……久しぶり!」
私が思わず声を弾ませると、イザークは腕を組んだまま、フンと鼻を鳴らした。
「遅いぞ、貴様ら。……まあ、元気そうにしているなら何よりだがな」
相変わらずの素直じゃない態度のイザークに、隣でディアッカがやれやれと肩をすくめて笑う。
「よお。相変わらず油の匂いが染み付いてるみたいだな、リン。カガリ代表も、遠路はるばるお疲れさん」
「ああ、二人とも息災そうで何よりだ」
短い再会を喜び合い、かつての戦友として少しだけ和やかな雑談を交わした。しかし、ここは国家間の未来を決める重要な会議の場だ。カガリがオーブ代表としての席に着くと、イザークたちも護衛としての鋭い目つきに戻り、私たちも即座に表情を引き締めた。
すぐさま、緊迫した話し合いが開始された。
「まずは、モユラン島にて進められている三国合同の『試作モビルスーツ』開発についてだが……」
プラント側の高官の言葉を受け、私はテストパイロット兼現場のメカニックとして、先ほどシンたちにも説明した新型機たちの進捗データを共有した。無人機グレイズのAI調整状況や、ザフトから持ち込まれた格闘機(リーオー)の実運用データについて、イザークたちも真剣な眼差しで報告に聞き入っている。
続いて議題に上がったのは、最近のプラントとオーブの「財政状況」についてだった。
ファンデーションとの戦いから復興が進み、平和な生活が戻りつつあるとはいえ、両国とも新型機の開発費やインフラ整備で財政は決して余裕があるわけではない。平和を維持するための持続可能な予算の割り当てについて、カガリと高官たちが慎重に数字をすり合わせていく。
しかし、真に警戒すべき議題はここからだった。
「経済の安定化は急務ですが……依然として地球に残存する『ブルーコスモス残党』の動きは無視できません。散発的ではありますが、未だにテロ行為を引き起こそうとする兆候が見られます」
プラント側の報告に、カガリが険しい表情で頷く。
「ああ。コンパスの部隊で対処にあたってはいるが……問題は地球だけではないだろう。宇宙でも、先の騒乱に乗じて『プラント過激派』の活動が再び活発になっていると聞いている」
カガリの言葉に、会議室の空気が一段と張り詰めた。ナチュラルとの共存をよしとしない純血主義の過激派たちが、宇宙の暗がりで再び不穏な動きを見せているのだ。
「それに関連して確認したいのですが」
私は手元のタブレットを操作し、モユラン島で気になっていた流通データをモニターに映し出した。
「最近の物資や、モビルスーツ用の特殊資材の流通について……何か『おかしいこと』は起きていませんか?」
私の問いかけに、ディアッカがわずかに目を細め、イザークが一歩前に出て口を開いた。
「……気づいていたか。実はここ最近、一部の資源衛星を経由する流通ルートで、用途不明のエネルギー資材や装甲材がダミー会社を通じて流れている形跡がある」
「それが、過激派やブルーコスモス残党に横流しされている可能性があるということですか?」
「断言はできん。だが、平和の裏で誰かが『戦の準備』を進めている可能性がある以上、徹底的に洗う必要がある」
街には笑顔が溢れ、確実に平和な時代へと歩みを進めている。しかし、その光の裏でうごめく不穏な影を完全に断ち切るため、私たちとカガリ、そしてイザークたちの真剣な話し合いは、その後も何時間も続いていった。