オンゲのフレンドがリアルのセフレになりまして ~フレンドなんだからリアルでもボクと一緒に楽しいことしよ!~ 作:真喜屋五木路
読み飛ばしにご注意ください。
歩が風邪を引いてから一週間後、月曜の朝。
徹が教室のドアを開けると、そこにはいつもと少しだけ違った光景が広がっていた。
歩が徹の机を占拠しギャルが集まっているのは変わらないのだが、そこに楽しげな談笑の声はない。
代わりにうっすらと緊張が張り詰めたような面持ちで、イヤホンを耳に各々が自分のスマホとにらめっこをしていて――
「よっしゃ、ノーミス!」
――徹が歩の邪魔にならないようこっそりと席についたところで、前の席の女子(確か佐伯さんだったか)が、大きくガッツポーズを決めた。
「わ、ほんとだ! さっちゃんってばさっき始めたばっかなのにすごいじゃん!」
歩は佐伯さんが自慢げに見せつけるスマホの画面を覗き込んでパチパチと拍手を送る。周囲のギャルたちからも「おー」と感嘆の声があがった。
先ほどまでドヤ顔だった佐伯さんは、流石に少し照れ臭くなったのか髪をわしゃりとかき回す。
「いやー、それほどでも……にしても、ゲームなんて久しぶりだったけど結構熱くなれるもんだな」
「ふふ、でしょ? 普段聞いてるカッコいい曲を演奏してる感じ、楽しくない?」
「それな! いやー、こういう感じで曲にノるの新鮮で楽しいわ」
その発言を皮切りにギャルたちはあの曲も楽しそうとか、いやさっきやってみたら難しかったとか、それに歩が最初は簡単な曲で慣らすといいとアドバイスを入れたりして盛り上がり始める。
(この分だと、作戦は上手くいったみたいだな)
徹が歩に提案したのは、共通の話題から辿ってゲームに誘導するという方法である。
一見シンプルかつ王道だが、それ故になかなか時間がかかってしまった。
まずは歩から仲間内で流行っているものを聞き出し、実際に調べたり見てみたりするのに数日。
その中からオシャレ系SNSのショート動画で使われている音楽が、徹のプレイしていたリズムゲームにも収録されている曲だということに気付き、そこから切り出してみてはと提案したのだ。
(……まあ、逆に言うとあれだけ見栄切っておいて、俺にできたのはその程度だけどな)
正直、徹ができたことは橋渡しで言うなら、橋を渡しやすい立地を探したことだけ。
リアルのコミュ力に関しては歩の方が絶対に上なので、具体的な会話内容は完全に丸投げである。
そもそも、好きなものを勧めるというのは存外に難しい。
普通に「面白いよ」と言っただけでは「へー、そうなんだ」で流されたり、興味を持ってくれたとしても、「面白そうだね」で終わってしまうことなどざらである。少なくとも徹の経験では。
にも関わらず、こうやって真剣にプレイさせて盛り上がるところまで持っていけているのは、偏に歩の力だ。
それはコミュ力などもあるのだろうが、きっと一番は歩が今まで積み上げてきた信頼によるもので。
「いやー、歩が自分からなにか勧めてくるのって初めてだけど、流石のセンスだわ」
「楽しんでくれてるみたいでよかったよー。もし軽く流されちゃったらどうしようって、ちょっと心配だったんだよね」
「なに言ってんの、歩は何でも真剣に聞いてくれるから語り甲斐があるし、そんな歩がオススメしてくれたんだから、適当に流すとかないから」
「……そっか、そう言ってくれると勧めたボクとしても嬉しい――あ」
ゲームの話をしていたからか思わず素の一人称になってしまった歩は口を押さえて、気まずそうな表情を浮かべる。
けれど、ギャルたちは誰もそれを茶化すようなことはしなかった。
「えー、もしかして歩、そっちが素? 今まで無理して私って言ってたん?」
「や、無理はしてないけど……流石にボクは変じゃん?」
「そんなことないってあゆちー! あゆちーはカッコいい系なんだし、王子様系っぽくって似合ってるって!」
「や、流石に王子様は……でも、それなら今度からはボクも使っていこうかな?」
「いいじゃんいいじゃん! っつーか歩、この際私の彼氏にならね?」
「あはは、さすがにそれは……」
楽しそうに盛り上がるギャルたちに隠れて、振りむいた歩に徹はウインクをしてみせる。
歩は一瞬目を丸くし、けれどすぐに徹とゲームをするような満面の笑みを浮かべて。
「ねえあゆちー、なんかいまいちうまく合わせられないんだけど、コツみたいなのってない?」
「あ、それはね――」
ワイワイとゲームの話題で盛り上がる歩たちの声を聞きながら、徹もそっと件のゲームを起動する。
いつものゲームがなんだかいつもよりワクワクするのは、きっと気のせいではないのだろう。
お読みいただきありがとうございます。
前話の真ん中あたりでぶった切ることも考えましたが、それだと微妙になったので結局三話連続投稿というゴリ押しに……_(:3」∠)_
楽しんでもらえていれば幸いです。