オンゲのフレンドがリアルのセフレになりまして ~フレンドなんだからリアルでもボクと一緒に楽しいことしよ!~ 作:真喜屋五木路
この感情の正体
それからしばらく経った土曜日の朝。カーテンを貫いて部屋を照らす夏の朝日に目を細めながら、起き抜けの徹は違和感に首をひねった。
「んっ……歩……? トイレでも行ったのか……って、そういえば今日はいないんだったか……」
軽く伸びをしながら昨日の歩とのやり取りを思い出す。
歩がギャル友へのゲーム布教に成功してから早くも二週間。いよいよ今日はゲーセンへ皆で遊びに行くことになったらしく。
『――それなら、流石に今週はウチに泊まりに来ない方がいいんじゃないのか?』
『え、なんで?』
『いやそりゃ、学校の友達と遊びに行くならしっかりメイクもしないといけないだろうし、服もちゃんとその日の天気とかに合わせた方が良くないか?』
『あ、そっか』
『それに俺とは最近ずっと週末一緒なんだからさ、たまには思い切り学校の友達と遊んで来いよ――』
と、そんなわけで最近にしては珍しく歩が金曜の夜に泊まりに来なかったのだが、寝起き早々これである。
「……我ながら、一日ぐらいで流石に大げさすぎだろ」
自分から提案したことなのに、目覚めて慣れ親しんだ温かさがいないことに、こんな寂しさを覚えるなんてと思わず苦笑が漏れる。
もはや徹にとって、週末に歩がいないということの方が非日常になってしまっていた。今だって、なんとなくまだ夢の中にいるのではないかと、現実感がぼやけているぐらいには。
とはいえ、せっかく歩が好きなことの話を学校でもできるようになって、更には遊びに行けるまでになったのだ。応援したいという気持ちも本物で。
「それに、どうせ今日の夕方には家に来るんだしな」
だからそれまでの辛抱だと、徹は以前までの過ごし方を思い出しながらベッドから起き上がり――
「――やっぱり暇だ」
本日数十回目となる時間の確認をし、ようやく十五時を回った頃。徹は限界とばかりにベッドへと倒れ込んだ。
学校の宿題や復習は済ませたし、日課のエイム練習もしたし、ゲームの新着情報やアップデートがないことも確認した。
挙句編集に参加しているウィキも更新の必要がないことまで確かめ、家全体の掃除まで済ませて。
「何も……何もやることがない……!」
いや、正確にはやろうと思えば適当なゲームを引っ張り出して遊べばいいのだ。
歩とリアルで会う前だって、ゲームさえあれば週末なんていつもあっという間で、毎回月曜が来るのを嘆いていたというのに。
だが今は何度かゲームを起動してみるものの、メーカーロゴが流れてゲームタイトル画面にたどり着いたところで、なんとなく虚しくなって消してしまうのだ。
原因など考えるまでもない。隣から歩の楽しそうな声が聞こえてこないからだ。
かつては自由時間のすべてだったゲームですら、歩とプレイしているから楽しいと感じてしまっていることに、口元へ呆れたような笑みが浮かぶ。
「ああくそッ……すっかり歩に染められてるんじゃないかこれ……」
口にすると、その実感がじわじわと内側から染み出してくる。
寂しい、早く会いたい、触れたい、声が聞きたい、抱きしめたい……。
止めどなく湧き上がってくる感情の中には、友達に向けるものとしてはあまりに重すぎるものも混じっていて。
「……やっぱり俺、歩のことが好きなんだよな……」
友達としてではなく、一人の女の子として。
一人でいるからこそ、改めてそのことを実感してしまった。しかもその想いは現在進行形で雪玉が転がるようにどんどん膨れ上がっていくようで。
以前歩に告白しようとしたときは、どちらかと言えば中途半端な関係で体を重ねることに対する申し訳なさという側面が強かった。
けど今はそういう外面とか都合のためというより、ただ純粋に歩と一緒にいたいと思ってしまっている。
なんならセックスなんてしなくても、歩と一緒に遊べれば――いや、なんならそばにいてくれるだけでもいい。
想像しただけで、朝からどこか穴が開いたようだった胸の辺りがじわりと温かく埋まっていく。
「っ、完全にガチ惚れだよな、コレ……」
なんとなく気付いてはいたが、改めて自覚するともう目を逸らすことはできなかった。
歩と友達よりももっと深い関係になりたい。
歩にとって唯一の存在でありたい。
考えただけで胸が高鳴るようのな抑えきれない感情に、けれど徹はため息をつく。
「……けどまあ、歩の意思を無視するわけにはいかないしな」
歩が中学の時のトラウマから恋人という関係に苦手意識を持っている以上、無理強いするのは憚られる。
……けれど、それでもいつかは。
歩が男女関係を前向きに捉えられるようになったその時には、今度こそちゃんと告白したい。
そして将来的には――
「――って、流石にそれは気が早すぎるだろ。まだ俺たち高校生なんだし」
あまりに未来まで一足飛びに想像してしまい、徹は苦笑しながら身悶えする。
そう、逆に言えばもうしばらくは今の曖昧な関係でも構わないのだ。その間にゆっくり歩との距離を縮めていけばいい。そうすれば苦手意識も薄れていくんじゃないだろうか。
さしあたっては、もうすぐ始まる夏休みも歩はウチに入り浸る気満々だし、その間に色々出かけてみてもいいかもしれない。
「……うん、というかむしろ積極的に出かけよう。そうじゃないとすっごいアンモラルな夏休みになりそうだし」
けれどそれはそれで……と、思わずよろしくない期待に血が下半身に集まりかけ、徹は頭を振ってベッドから起き上がる。
長々と考え込んでいたつもりだったが、やはりというかあまり時間は経っていなかった。
「……夜には歩が来るんだし、今日は遠くの方のスーパーまで買い出しに行くか」
このまま悶々と考え込んでいたら、また変な方へ思考が迷宮入りしそうだ。それよりは外に出た方が時間が経つのも早いだろう。
徹は鼻歌交じりに部屋着を脱いで、適当な外出着に袖を通す。
まさか歩とあんな形で出くわすとも知らずに。
二つご報告を。
一つ目は、タグづけしている通りこの物語はちゃんとハッピーエンドで終わります。そこは信じていただけると。
二つ目は、とはいえ少し重いシーンがあるので、それを平日に引っ張るのもなぁということで、週末に集中投稿することにします。
ミスらなければ土曜日曜の、
8時、12時、16時、20時に更新予定ですので、
よろしくお願いします。
良ければ最後までお付き合いいただければ幸いです。