※この作品はR-18です。

オンゲのフレンドがリアルのセフレになりまして ~フレンドなんだからリアルでもボクと一緒に楽しいことしよ!~   作:真喜屋五木路

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フレンドから友達へ

「はー……今日は楽しかったね」

 

 ゲーセンからの帰り道、夕日を浴びて満面の笑みをきらめかせる隣のポーンに、徹の口元にも自然と弧が浮かぶ。

 

「だな」

 

 万感を込めた二文字だった。

 ポーンと一緒に遊んでいるというだけで、一人でプレイするより何倍も楽しかった。

 対戦すれば、勝ち誇った笑顔を見せてきたり、悔しそうに「もう一回!」と負けず嫌いを発揮して。

 一人用ゲームも、上手く決まれば二人で喜んで、失敗すればどうすればいいかあれこれ話し合う。

 

(ああそうだ……友達と遊ぶのって、リアルでもこんなに楽しかったんだな……)

 

 小学生以来の経験はあまりにも楽しく、あまりにも時間が経つのが早すぎた。

 昼食も取らずにゲーセンへ浸っていたというのに、まだ遊び足りないと思ってしまうぐらいには。

 

「……その、トール。来週から学校でも話しかけていい?」

 

 だからポーンが甘えるような目でそう言ってきた時、徹は嬉しさに胸が締め付けられる思いがした。

 

「学校の友達は、ゲームの話とか全然できないからさ。トールと話せたら楽しいだろうなって」

 

 ……ああ、それは間違いない。学校で友達と好きなものの話ができる。

 そうなればもう、休憩時間や昼休みに少し物寂しい気分に襲われることもないだろう。

 徹は浮かれ気分で口を開きかけ、けれど嘆息して首を横に振った。

 

「気持ちはわかるけど、それはやめておいた方がいいと思うぞ」

「え?」

 

 露骨にショックを受けたポーンの顔を見ていると申し訳ない気持ちになるが、徹は冷静に理由を説明する。

 

「いや、ポーンはクラスでも目立つっていうか、その……モテるじゃん」

 

 大学生の彼氏という抑止力があるからこそ誰も行動には起こさないが、彼女が学内でアイドルのような存在なのは間違いない。

 ポーンはお説教を聞く子供みたいに唇を尖らせる。

 

「……まあ、そうみたいだね」

「そんな中で俺みたいにパッとしないやつといきなり仲良くしだしたら、自分もいけるんじゃないかって勘違いするやつが出てくると思うんだよ」

「えー、そんなの思い込みじゃん! 面倒くさいなー……トールが特別なのに」

 

 特別という言葉に勘違いしそうな心臓の鼓動を抑えて、徹は続ける。

 

「でも、周りはそう見てくれないんだよ。俺とポーンが前から友達だったってのも知らないし」

「……それは、そうかもだけど……」

「それに説明したところで、勝手に『俺なんかがいけるなら自分もいけるはず』って思い込みを押し付けてくるやつもいると思うんだ。ネットでもいたようにさ」

「まあ、確かに……」

「あとこれは俺の我儘なんだが……ポーンと仲良く話したりしたら、多分男子の嫉妬がすごいことになるから勘弁してくれ」

 

 徹の冗談めかした言葉で、ようやくポーンも納得してくれたらしい。

 

「……そういう言い方されたら無理強いはできないじゃん」

 

 少し拗ねたように頭の後ろで手を組みながらも、それ以上は言ってこなくなるポーン。

 だがその顔には物足りなさそうにも寂しげにも見える表情が浮かんでいて。それは徹も同じだった。

 

(もうすぐ解散の時間だもんな)

 

 ……あくまで今日はイベントや例外みたいなものだ。

 確かにポーンが我妻さんだとわかるまでは、徹も学校で話せる友達になればいいと思っていた。

 

 けれど、あまりに自分なんかと彼女では釣り合わなさすぎる。

 それに、我妻さんには大学生の彼氏がいたはずだ。変に仲良くして、誤解の原因になりたくはない。

 だからこそ、今日が終わればまたネット上だけの関係に戻るべきだと徹は考えていた。

 それでもやはり、祭りが終わる時のような寂寥感は否定できなくて――

 

「ならさ!」

 

 ――急に顔を近付けてきたポーンに思わず徹はのけ反った。

 背丈が同じぐらいなので、文字通り目の前へ整った顔が近づいてくるのは中々に迫力がある。

 

「きゅ、急にどうしたんだよポーン」

「学校がダメでも、週末またこうやって一緒に遊びにいくのはいいよね!」

 

 目をきらきらと輝かせたポーンは、徹が引いた分だけ近づいてくる。

 

「いや、それも……」

「む、なんでダメなのさ。週末ならクラスメイトは関係ないじゃん。……もしかして、トールはボクと遊ぶの楽しくなかった?」

「いや、そんなことはないけど……! でも、男と二人で遊ぶのは彼氏さんに悪いというか……誤解されそうで怖いというか……」

 

 ポーンはなにを言っているか分からないというように目をぱちくりとさせて、

 

「ああ、それ! 大学生の彼氏がいるってやつ、実は嘘なんだよね」

 

 あははと気まずそうに小首を傾げる。

 

「え、嘘って……どういうことだよ」

「いやー、なんか皆の話に合わせてたらいつの間にかそういう設定が生えて来ちゃって……でもそっちの方が変に告白とかされなくていいかなって放置してるんだよね。だから変な遠慮はしなくていいよ、男の友達はトールだけだからさ」

 

 思い出したように「あ、このことは秘密ね♪」とウインクするポーンに、徹は顔が熱くなるのを感じる。

 

(俺だけって……いや落ち着け! ポーンはそんなつもりで言ったわけじゃないだろ……!)

 

 平静を装おうと自分に言い聞かせるが、またポーンとこうして遊べると考えると口元がにやけてしまうのは止められず。

 

「と言うわけで、どうかなトール? ……ってもしかして聞くまでもない感じぃ?」

「うっせ。ポーンだってめっちゃ楽しみだって表情してるからな」

 

 徹が肩にかけられた手を振り払うと、ポーンは前に回り込んで、喜びを全身で現わすように両手を大きく広げてみせる。

 

「当たり前じゃん! ずーっとリアルでもトールと一緒に遊べたらいいのにって思ってきたんだから! というわけでこれからは、リアルでも友達としてよろしくね、トール♪」

 

 徹はズボンで手をふいて、差し出されたポーンの手を握る。

 

「ああ、こっちこそよろしくな、ポーン」

 

 だが、ポーンはちょっと不満そうに頬を膨らませた。

 

「ポーン?」

「……ボクだけポーンって呼ばれるの、なんかアンフェアじゃない?」

「いや、ポーンも俺のことハンドルネーム呼びじゃんか」

「だってトールは徹なんでしょ? 似たようなものじゃん。ボクのことも名前で呼んで欲しい」

「いや、それは……」

 

 ポーンは握手した手をがっしりと握りしめてくる。まるでちゃんと呼んでくれるまで逃がさないというように。

 

「……あー、我妻、さん?」

「そっちじゃなーい! それに『さん』もいらない!」

 

 ずいっと歩が一歩近づく。いつの間にか徹は壁際へと追い込まれていて、逆壁ドンのような状況になってしまっていた。

 気恥ずかしさに視線を反らそうとしても、ポーンは頬を膨らませて先回りしてくる。

 

「ああもう分かった、降参だって……! ……その、これからよろしくな……あ、あゆむ……」

「うむ、よろしい。……えへへ、ボクこそよろしくね、トール♪」

 

 満面の笑みをきらめかせ、嬉しくてたまらないというように手をにぎにぎとしてくる歩。

 心から嬉しそうな友達の姿に、徹は気恥ずかしくも、胸の中がいっぱいになるのだった。

 

――――――

 

 週が明けての月曜日、教室の前に立ったところで徹は違和感を覚える。

 何かがいつもと違う気がする。けれどその正体がつかめないままドアを開けると、そこにはいつものように歩が席を占領していた。

 けれどいつもと違い、徹が近づくと、歩は声をかけられる前に気付いて机から下りる。

 

「あ、吉永君。席借りてた、ありがとね」

「ああ、いや別に……」

 

 そっけない表情と言葉ではあったが、そこに前までの冷たさは感じられない。

 いつもと違う歩の行動に、他のギャルが興味深そうな声をあげる。

 

「えー、あゆにしては殊勝じゃーん、なにかあった?」

「いやー? でもふと、いつも席勝手に使ってて悪いなーって思ってさ。だから今更だけど、迷惑だったら言ってね? 座らないようにするからさ」

 

 ちょっと申し訳なさそうに眉を垂らす歩の顔に、それが自分のことを気遣って、そして先週のお詫びも込めてるんだなというのに徹は気付く。

 

(ああ、そっか)

 

 同時に、朝感じていた違和感の正体が分かった。

 

「いやいいよ、俺が使ってない間に座るぐらい。というかそもそもは学校の備品なんだしさ」

 

 今まで朝は歩に声をかけなければと気が重かったのだが、今日はそうじゃない。

 むしろ、友達が近くにいるという安心感のようなものが心を晴れ渡らせていたのだと。

 理解して照れくさくなり、頬を掻く徹にギャルの一人が絡んでくる。

 

「なんだヨッシー、歩のこと狙ってんのかー?」

「ああいや、別にそういうわけじゃ――」

「こら、さっちゃんそれはやりすぎ。せっかく吉永君が好意で言ってくれてるのに、茶化すのは酷いって!」

「あー……確かに。すまん、ヨッシー。先週のことも含めてちょっとイジリすぎたわ」

「あ、ああいや、別に気にしてないから大丈夫だって」

 

 両手を合わせて頭を下げるギャルの後ろで、歩が徹にだけ見えるよう、ニッと笑って見せる。

 

 

 ――こうして俺にも久しぶりにリア友ができた。秘密の、だけど相性ばっちりな最高の友達が。

 色褪せていた教室の景色が鮮やかに見えるのは、きっと彼女がいてくれるからで。

 俺はポケットに入れていたワイヤレスイヤホンを、そっとカバンへと仕舞いなおした。




なんかちょっと終わりそうな雰囲気ですが、これはR-18。
言うまでもないですがここからが本番です。
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