【ラブライブ μ's物語 Vol.7】 にこ姉ぇの親友に手を出した話 作:スターダイヤモンド
…
「こた、これ、にこたちのところに持って行って…どうせ、あなたは食べないでしょ?」
『母親』から手渡された紙袋の中を覗くと、頂き物であろう洋菓子の詰め合わせが入っていた。
俺はそんなに甘いものが好きじゃない。
それを知っての依頼だった。
「取りに来らせればいいじゃん」
特別、断る理由はなかったが、安請け合いするのも癪に障る。
一応、そんな口応えをしてみた。
「あなたと違って、向こうは向こうで忙しいのよ」
抵抗虚しく、母親は紙袋をぐいっと俺に押し付けた。
まぁ、行ってやってもいいが、誰もいなかったら無駄足だ。
電話を掛けると『運悪く』にこ姉ぇがいるという。
「ちっ!」
俺は心の中で舌打ちをした。
「早く行ってきちゃいなさい」
母親に急かされる。
仕方なく、身支度を整えて家を出た。
家と姉ちゃんたちの住むマンションとは、それほど離れていない。
自転車なら10分ほどで着く。
いわゆるスープの冷めない距離ってやつだ。
だから、用がある時はちょいちょい戻ってくるし、何も今、持っていかなくても、その時でいいと思うのだが…。
そんなことを考えながら、自転車を漕ぐ。
マンションに辿り着いた俺は、愛機を駐輪場に停めた。
初秋の土曜の昼下がり。
少し汗ばんだ身体に、涼やかな風が通り抜けていく。
エントランスで部屋番号を押す。
応答したにこ姉ぇは、訪問者が俺だとわかるとセキュリティを解除し、自動ドアの中へと招き入れた。
エレベータを降り、部屋の前に着く。
インターフォンを鳴らすと、聴き慣れた声で返事があり、ドアがガチャリと開いた。
俺が視線を一段下げると、その先に、にこ姉ぇがいた。
「これ、持ってきた」
電話で内容は伝えているから、それだけで言って帰ろうとしたが、にこ姉ぇに腕を掴まれた。
「ちょうど今からお茶しようと思ってたところなの。アンタも上がっていきなさい」」
振り払おうと思えば出来なくないが、姉ちゃんたちには逆らえない。
特に、にこ姉ぇには…うん、逆らえない。
俺は踵を返し、玄関に入った。
…
『女3人寄れば姦(かしま)しい』という言葉があるように…俺が姉ちゃんたちの中に入れば「やれ学校生活はどうだ」とか「彼女はできたのか」とか、矢継ぎ早に質問される。
最近は着てる服まで、あーだこーだ…とダメ出しされる始末だ。
正直「放っておいてくれ!」と思うのだが、俺は俺で強くは言えない。
こう見えて、小さい頃から学校では割と『クールキャラ』で通してきたのだが、姉ちゃんたちの前だと『借りてきた猫状態』になってしまうのだ。
我ながら…情けないな…と思っている。
…
そんなことを考えながら、靴を脱ぎ、出されたスリッパを履いて、奥にあるリビングへと歩を進めた。
そこには当然の如く、姉ちゃんたち3人がいるものだと思っていた。
だが…
部屋の中にいた人物に目を留めたとたん、俺の心臓は止まりそうになった。
にこ姉ぇも『そんなこと』は一言も言わなかったのだから、そうなるのも当然だ。
「こんにちは、こたろう君。お邪魔してます」
その人はダイニングテーブルのイスに座っていたのだが、わざわざ立ち上がって、俺に向かってお辞儀をした。
「…って…私の事、覚えてるかなぁ?…もう10年近く会ってなかったから…」
髪型こそロングになって…全体的に大人っぽくなっているものの…包容力があるというかなんというか…『暖かな陽だまり』のような雰囲気の彼女は、幼少期に見た記憶の中の…あの人そのままだった。
覚えているかって?
もちろん、忘れるはずがない。
何年もの間、あなたにお世話になってきたのだから。
なんなら…昨晩だって、あなたを辱しめていたのだから…。
その人が突如目の前に!
それは心臓が止まりそうなほど、驚くでしょ!
もちろん、そんな俺の事情など、彼女は知る由もないのだが…。
〜つづく〜
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