【ラブライブ μ's物語 Vol.7】 にこ姉ぇの親友に手を出した話 作:スターダイヤモンド
その28『お泊り』
「間に合ってよかったですね」
と俺。
「うん…危なく、一生こたろう君とは顔を合わせられなくなるとことだったよ」
花陽さんは、緊張から解放されたのか、その表情は穏やかだった。
「花陽さん、さっきのことは…」
「もちろん、言わないよ。だから、こたろう君も、忘れてね」
「はい」
そう返事はしたが、記憶から消し去るなんて、絶対にできない。
むしろ、今日の日のことは、一生忘れないだろう。
「にこちゃんたちは?」
こあ姉ぇに花陽さんが訊く。
「爆睡中です」
「じゃあ、この停電による騒動は…」
「気付いてないと思いますよ」
「そっか…それはそれは」
と苦笑する花陽さん。
「人の苦労も知らないで、いい気なもんだなぁ」
「そういうことは、言わないの」
ムッとした俺を花陽さんが窘(たしな)めた。
「あっ、何か温かいものでも飲みます?」
俺たちが帰ってきて、少し目が冴えたようだ。
こあ姉ぇの声に生気が戻ってきた。
眠気と戦いながら、それでも心配して起きててくれたらしい。
「ありがとう、飲み物は大丈夫だよ」
今、出したばかりですもんね!…と俺は心の中で呟いた。
「花陽さん、泊まっていきますよねぇ?」
こあ姉ぇが続けざまに訊く。
「う〜ん…どうしようかなぁ…」
「電気は復旧したけど、まだ街は大混乱みたいですよ。帰宅困難者で多数いて、タクシーが捕まらない…って」
そう言って、スマホの画面を見せた。
「あ、そう言えば、さっき呼んだタクシー…」
花陽さんは慌てて運転手に電話をしたが…既にここを離れ、お客を乗せて移動中だとわかった。
「諦めた方がいいんじゃないですか?」
「…う〜ん…」
この躊躇いは、俺を警戒している。
その「う〜ん」だ。
「ベッドは…にこ姉ぇと一緒で良ければ…狭いですけど、寝れないことはないですよ」
エレベータ内の出来事など知らないこあ姉ぇが、花陽さんに提案する。
「にこちゃんと一緒かぁ…じゃあ、お言葉に甘えようかな…」
「いえいえ、全然、気になさらずに…」
「ありがとう」
花陽さんはこあ姉ぇに、手を合わせてお辞儀した。
「こたも…バルコニーで良ければ寝るとこあるけど」
「おい!」
相変わらず、俺に対する扱い雑だ。
「うそ、うそ…これで良ければ貸してあげるよ…熟睡は出来ないだろうけど」
こあ姉ぇが今座ってるイスを指さす。
「さすがにそれは疲れるなぁ…だったら廊下の床で寝るよ」
「え〜それはトイレとか行くのに邪魔になるじゃん!…あ、ならさ…そっちのウォークインクローゼットの中は?」
「空いてるの?」
「まぁ、なんとかなるくらいのスペースは」
「おぉ…だったら、そこでいいよ」
「うん、じゃあ、そこ使って」
「サンキュー!そうさせてもらうわ。いや、帰ろうと思えば返れるんだけどさ…精神的に疲れちゃって…動きたくない」
半分本音。
もう、深夜の1時を回っている。
未成年が屋外を出歩いちゃいけない時間だ。
警察に職質なんてされても面倒臭い。
このまま寝られるなら、これほど楽なことはない。
いや、寝られるかなぁ…。
残りの本音半分は、まぁ、そういうことだ。
まだ、チャンスがあるかも知れない…なんて思ってたりして。
「じゃあ、すみません。私の部屋はこっちなので…」
「うん、気を使ってくれてありがとう。おやすみない」
こあ姉ぇが、ころ姉ぇの眠る部屋へと消えた。
「わかってると思うけど…もう、あんなことしちゃダメだからね?」と花陽さんが俺に釘を刺す。
「さすがに、にこ姉ぇと一緒にいるところを襲うなんて、無理ですよ」
「どうかなぁ…」
「どうですかねぇ」
こら!からかわないの!…じゃあ、私は寝るからね?おやすみなさい」
「あ、はい…おやすみなさい…」
こうして花陽さんも、にこ姉ぇの眠る部屋へと姿を消した。
俺は指定された場所に行った。
そして入って呟く。
「確かに…」
ギリ、身体を横向きに曲げて、なんとか寝られるスペースはある。
そのままではさすがに痛そうなので、ハンガーに掛かっている洋服の中から、トレーナーっぽいものを数枚見繕い、下に敷いた。
〜つづく〜
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