【ラブライブ μ's物語 Vol.7】 にこ姉ぇの親友に手を出した話 作:スターダイヤモンド
洗面所で入念に手を洗い『密室で起きた事件』の痕跡を消す。
念の為、傍にあった消臭剤のスプレーを服の上から吹き付けた。
これで偽装工作は完璧だ。
俺がリビングに戻ると、既に二人は母親からもらってきた洋菓子でお茶を始めていた。
「こたは何飲む?母乳?」
にこ姉ぇがボケると、花陽さんがくすっ…と笑った。
「なんでだよ!そもそも出ないだろ!」
「出たら飲むの?花陽、出してあげて」
「ええっ?」
俺と彼女と、同時に声をあげた。
「花陽さんて、赤ちゃんいるんですか?」
「えっと…まだ独身なんだ…」
と苦笑する花陽さん。
「冗談よ、冗談!」
にこ姉ぇは、俺の背中をどん!と叩いた。
「なんだよ!そんな冗談、誰得なんだよ!コーヒーでいいよ、コーヒーで」
「ふ〜ん…砂糖とミルクは?」
「いらない」
いつまでも子供扱いされるのがイヤで、嘘をついた。
ブラックなんか飲んだことない。
でも…
花陽さんに、バカにされたくはなかった…。
それからの二人は、終始、昔話に花を咲かせた。
当然、メインテーマは『幼い頃の俺』だ。
やれ『ピコピコハンマーが無いと泣く』だの『お気に入りのタオルケットじゃないと眠れない』だの…にこ姉ぇは敢えて花陽さんに話さなくてもいいようなことを、ひたすら暴露した。
「乳離れが一番遅かったのも、アンタだったわよ」
「う、うるせ〜よ…」
「替わりにアタシがおっぱいあげたことがあるんだからぁ」
「えぇ!?にこちゃんが?」
「出なかったけどね」
「当たり前だろ!」
「それでね…また泣くの」
「騙されたと思っちゃったのかな?」
「それがおかしくてね」
「笑っちゃ可愛そうだよぉ…にこちゃんも意地が悪いなぁ」
「断乳よ、断乳!」
俺にとっては耳タコの話である。
だが、なにもそれを花陽さんの前で話さなくても…。
公開処刑とは、こういうことを言うのだろう。
「そういえば…私もこたろう君から『おっぱい』って言われたことがあったかも」
「えっ?」
「その時は『う〜ん…お姉ちゃんはおっぱい出ないんだ』なんて言って、ごめんなさいしちゃったんだけど…」
「はぁ?…こた、アンタ、ドサクサに紛れて何言ってるのよ。もう、その時は、卒業してるハズでしょ」
「待って!それは誤解だ!それは記憶にない!いくらなんでも…花陽さん、それネタですよね?」
「う〜ん…どうだったかなぁ…」
「いや、いや、それはいくらなんでも…」
「私ね、小さい頃、保母さんになりたかったの。だから、その時、男の子っていくつになっても、こういうことを言うんだな…って、勉強になったんだ」
「はぁ、そうですか…お役に立てたなら、何よりです…」
俺は恐縮することしか出来ない。
ブラックのコーヒーが、死ぬほど苦く感じた。
「まぁ、確かに…子供は無邪気な顔して、セクハラしまくるからね」
「そういう意味では、希ちゃんにだいぶ鍛えられましたけど…」
「本当、アイツに何度、胸を揉まれたことか」
姉ちゃんは、揉まれるほど無いじゃん…と思ったが口にはしなかった。
ん?
じゃあ、花陽さんもされたってことか?
希さんて、あの希さんか…。
羨ましすぎる…。
「アンタ、花陽には、さんざん面倒見てもらったんだから、感謝しなさいよぉ」
希さんが花陽さんの胸を揉んでいる姿…をイメージしようとしたとたん、不意ににこ姉ぇが、そんな言葉を俺に放った。
いや、それはもう…
ずっと世話になりっぱなしで…
そういう意味では感謝してもしきれない。
逆にどうお礼をしたらよいか…なんて考えている次第で…。
「でもね、にこちゃん。私には姉妹兄弟(きょうだい)がいないから、あの時はちょっとお姉さんの真似事ができて嬉しかったよ」
「そう言ってくれると、アタシも楽になるのよねぇ…。なんだかんだ言って、アンタのその性格に甘える部分があったから」
「そんなぁ…全然気にしてないよ」
と花陽さんは、二度三度と顔の前で小さく手を振った。
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