異能剣戟ダークファンタジーなエロゲ世界に生まれた者、バッドエンドで妖怪に穢され闇堕ちしたヒロインの生きる希望となり最強の特級剣士として在り続ける 作:三流木青二斎
―――本日、三度目の討伐任務が発令した。
『二一〇〇、祅霊の姿を確認、特級抜刀官・奈流芳一以、及び、一級抜刀官・銀嶺白乃、至急祅霊討伐に赴くべし』
車両に備わる受信機から荒い音波の音と共に声が聞こえて来る。
「く、はぁ……」
その音と共に、特級抜刀官……奈流芳一以は嘆息を漏らす。
目的地は廃工場跡地、戦後普及されずに放置された軍需工場である。
「いる、なぁ」
疲労困憊を貯め込んだ奈流芳一以は頭を悩ませる。
如何に抜刀官が不足していると言えども、死に関わる仕事を連戦させる精神的摩耗は計り知れない。
出来る事ならば、他の抜刀官に引継ぎをして欲しい所であるのだが。
「……いくよ、一以」
隣に居る彼女が、任務に対する拒否を拒絶するだろう。
肉体に溜まる疲労を宿しながら、その小さな体を動かし続ける。
背丈は小さく、その顔は童顔、子供と見間違える程だが。
……その肉体に似つかわしくない、豊満な胸が歩く度に揺れる。
「ふぅ……あぁ」
息を吐き弱音を吐き出すと共に、奈流芳一以は彼女の後を追う。
その身体は白く気高く、銀色に輝く美しさが見える。
これが、穢れた存在であるなど、誰も思わないだろう。
「何も無いな」
第二次世界大戦に活躍した軍需工場。
刀剣類の生産が間に合わぬ為に異国を真似て作成された単発式歩兵銃が量産されていたが、現在では銃火器の類は廃止され、全て撤去、及び廃棄処分となった。
今、此処に遺るのは、その銃火器を生産していた名残りのみ、精密機器すら残されていない。
時代と共に風化した建物は、天井を突き抜けて空を見上げる事が出来た。
「……」
その中で、銀嶺白乃は静かに歩き出す。
錆と共に朽ちた塵芥を踏み潰しながら音を鳴らし邁進する。
おくびも恐怖も見せぬ様は斬人としての性質を顕していた。
「いた」
静かに彼女が告げると共に、暗闇の奥へと視線を促す。
其処に蠢く人影に、奈流芳一以は目を凝らしながら集中した。
「――--‐―‐」
蠢く生命体に視線が、動物、あるいは人間であるかを確認しようとした最中。
「す、ぅ……は、ぁ」
大量の酸素を一呼吸で吸い終えると共に、銀嶺白乃は酸素を体内の器官・炎子炉を使い酸素を燃焼、抜刀官が刀を行使するのに必要な力、闘猛火を生成すると共に肉体に循環させる。
電気の如く肉体に迸る蒼白の闘猛火は脳髄から伝達される電気信号を加速させ信号を受信した神経の処理速度を十倍に引き上げる。
単純な肉体強化に加え、反射神経を向上させ、脅威的な身体能力を発揮する銀嶺白乃。
「ふッ」
稲妻の如く祅霊に接近すると共に、携えていた刀を速やかに抜刀する。
刀身に電気質の闘猛火を流し込むと、蒼白の雷が白銀の刃を発光させる。
その状態でいち早く、祅霊に向けて振り下ろし討伐を完了させようとしたのだが。
斬撃。
振るう刃は肉体を斬ったが、……浅い。
「ぎゃ、あぁおッ!!」
一撃を受けた祅霊は傷を受けた事に際して痛みを口から漏らして身体を起こす。
どうやら休眠をしていた様子であり、攻撃を受けた事で祅霊は眠りからの覚醒を果たした。
ばさり、と黒く大きい翼を広げ、白色の骨で出来たペストマスクの様な嘴が開き、鑢の様に鋭いかえしが付いた牙を剥く。
「ぴぃいいいいいッ!!」
甲高い声は建物の内部を震撼させ、奈流芳一以は耳を塞ぐ。
近くに居た銀嶺白乃は歯軋りをしながら、琥珀色の瞳孔を大きく見開いた。
「うるっ、さいッ!!」
耳を劈く音に怒りを覚えながら、深く呼吸を行う。
「銀嶺ッ!!いきなり攻撃は不味いッ!一撃で仕留めないと……」
彼の言葉は、祅霊に対する危惧を示していた。
その祅霊は、ある目撃情報から始まった。
街を歩く市民を、遥か上空から搔っ攫い、巣へと向かい捕食する。
即ち、飛行能力を有している、と言う事である。
到る場所に巣を作っている為、今回、取り逃してしまえば、また一から捜索しなければならない。
「だから、一撃で仕留める気だったのッ」
彼女は自らの斬撃が致命傷にならない事に違和感を覚えていた。
敵は飛行する祅霊である、ならばこそ、飛行時に起こり得る現象に対して耐性を持つ。
祅霊が形どる原型の鳥は、翼の保護の為にワックス状の脂を分泌する。
空を飛ぶ祅霊は時に自然現象である落雷に打たれる事もある、だがその一撃で消滅しないのは、脂による耐電性質にある為だ。
この鴉型の祅霊は銀嶺白乃の雷の性質を持つ斬撃に対しても耐性を持ち、攻撃を受けても致命傷に至らないのは、雷を弾くが故に斬撃の威力が激減している為である。
ある種、銀嶺白乃にとっての天敵とも言えよう。
そして苦々しく憤怒を噛み締める彼女は、現状では自身が祅霊を討伐する前に、先に祅霊が逃走する可能性が高い事を瞬時に理解し、刀を治めると共に奈流芳一以に視線を向ける。
「一以……やって」
身体の疼きを抑えながら銀嶺白乃が祅霊から離れる。
交代宣言を受けた奈流芳一以は了承の代わりに刀を構えた。
闘猛火を生成する為に、長く呼吸を行い酸素を肉体へ流し込む。
そして作り出された闘猛火を刀身へと流し込み、祅霊の元へ一歩ずつ近づいた。
「きぃ、きッ!!ぃいいいい!!」
おぞましい程の鳴き声を放ちながら、大きく翼を広げて周囲を扇ぐ様に羽搏かせる。
廃倉庫から撤退しようとしているのだろう、だが、奈流芳一以は天井へと飛翔し始める祅霊に殺意を迸る視線を向けた。
「斬神」
刀は熱を帯び赤く灯り、刀身に眠る神を呼び起こす。
静かに称える様に神の称号を口にする。
闘猛火を大量に吸収した刀が眩く光り出した。
光が外へ漏れ出すと共に、光の粒子が結合し始めて崇め奉る神の姿を構築する。
抜刀官が使用する刀には神が宿る。
多くの祅霊を討伐し赤黒き血肉を薪にして、闘猛火で烈しく燃え上がらせる事で生まれる刀の神。
願いと共に生まれる人造の神は、超常を超え得る異能を宿した。
そして、その神に命名した銘を、奈流芳一以は告げる。
「―――襲玄」
漆黒の甲冑を身に纏う、分厚い峰を持つ十字型の槍を持つ神とは言い難き悪鬼の姿。
大きく空へと飛翔した祅霊に、奈流芳一以は彼方の切っ先を祅霊に向けると共に神に命ずる。
「墜とせ」
命令と共に斬神・襲玄は十字型の槍を振り下ろすと祅霊は壁に衝突したかの様に肉体を天に衝突させ、そのまま地面に向けて落とされた。
膨大な重力の瀑布が祅霊の肉体を形成する全てを念入りに圧縮すると、地面を陥没し大量の赤黒い血肉へと変化した後に絶命を果たす。
役目を終えた斬神・襲玄は静かに、再び光の粒子と化して周囲に散る。
残された祅霊の粘液と化した残骸を見詰めながら、緊張の糸を切る奈流芳一以。
「……はぁぁ」
重苦しい息を吐くと共に、灰色の煙が排出された。
体内に取り込んだ酸素を炎子炉で燃焼した場合、その排気煙が咥内を通じて外へと出された。
圧倒的力を持つ斬神は、抜刀官のみに贈られる特権だ。
だが、その力は実力が伴わなければ真面に運用する事は至難。
奈流芳一以は疲弊感を帯びた憂いの表情と共に先走った銀嶺白乃に視線を向ける。
「……俺も、仕事が多いと苛立つけどさ、先走りが過ぎる、銀嶺」
先述の通り、本日三度目の緊急要請による仕事である。
三日に一度でも多い方だが、今回は重要な事件が重なり続けた。
早々に終わらせたい気持ちもあるのだろうが、それが仕事に現れては粗が浮き彫りになる。
「ん……ふっ」
だが、奈流芳一以は会話を途中で止めた。
彼女が早急に仕事を終えたかった理由が其処にあった。
下半身は内股となり手で下腹部を抑える。
体中が敏感なのか、少しでも布擦れを抑えようと、片手で体を抱き締める。
顔面は紅潮しており、耳元まで真っ赤に染まっていた。
彼女の表情は明らかに発情をしていた。
「大丈夫か?銀嶺」
心配して銀嶺白乃に近付く奈流芳一以。
彼女の肩に手を添えて介護をしながら外へと移動させる。
「ふぅ……ふっ……ダメ、我慢、してた、けどっ」
歯軋りを行い、目尻に涙を溜めながら、恥を忍びつつ奈流芳一以に視線を向ける。
肉体に蓄積された穢れが肉体を浸蝕し快楽を伴う熱を与える。
「薬、無い、から……」
この興奮を治めるには、快楽を伴う発散を行う他無い。
金を払い抱かれるよりも、少なくとも実力を認めている知人に抱かれる方が遥かにマシだった。
そして、その役目は現在、彼女と学生時代を共にした奈流芳一以が担当している。
「待て、逸るな、今、薬が無いか聞く」
車両に備わる無線を使い職員に連絡を取ろうとする。
職場に取り寄せを頼んだ薬が届いたかどうか聞こうとしたのだが。
「また……私に、恥を掻かせる気……っ?」
熱を帯びた冷たい声に奈流芳一以の動きは止まる。
「一以じゃない、ダメだから……早く、してっ」
銀嶺白乃が腕を伸ばして奈流芳一以の体に密着すると、そのまま髪の毛を掴んで無理矢理引っ張る。
「ん―――ちゅぅ、んぷっ」
隙の出来た唇を、銀嶺白乃は口元を近付けて舌を絡める接吻を行った。
「ちう、ぇあ、れぇあ……」
烈しい舌の打ち付けを行い、唾液を吸い取ると喉奥を鳴らして口元を離す。
息を荒げる銀嶺白乃は必死に我慢しながら奈流芳一以を睨み続ける。
「二度も、言わないから……っ、早く、出してっ」
下半身が疼き、鎮める為に。
高圧的な言葉に奈流芳一以は委縮しながら小さく「わかりました……」と言う他無かった。