異能剣戟ダークファンタジーなエロゲ世界に生まれた者、バッドエンドで妖怪に穢され闇堕ちしたヒロインの生きる希望となり最強の特級剣士として在り続ける 作:三流木青二斎
(封魔刀の蒐集、ついに始まるか……)
渡された〈封魔剣聞録〉の中身を確認する。
五十年前以上も前から現存する文書だが用紙は材質と劣化具合から見て、比較的新しい紙を使用している。
恐らくは、この〈封魔剣聞録〉も原本からの写しなのだろう。
写本の背表紙を確認すれば、ご丁寧に〈贋作〉と印字が施されている。
文字の筆圧と癖から察するに、紀将武虎が記載したものだと、奈流芳一以はそう認識だ。
「さて」
内容を確認しようとした時である。
部署内部へと足を運ぶ女性の姿が見えた。
視線を促すと一発で目に入る彼女の容貌。
彼女の肉体を貪り尽くした時の事を思い出す。
「一以」
慣れた足取りで奈流芳一以の机へと向かう銀嶺白乃。
何度も何度も、奈流芳一以の元へ歩み続けたが故に目を瞑ろうとも部署内部であれば彼の机など容易に辿り着くのだろう。
最短距離を以て奈流芳一以の元へと向かうのだが、奈流芳一以はさ、っと封魔剣聞録を懐に隠した。
(これを見つかるのは不味いな)
封魔剣聞録を所有している所を見られれば、恐らくは銀嶺白乃は奈流芳一以に何らかの任務を与えられた事を察するだろう。
そうすれば、危険な蒐集任務と言う仕事を彼女は同行するに違いない、そう思った。
懐に隠した後に平然とした顔をする奈流芳一以だが、ふと彼女が此方に来るに従い、何かしら違和感、と言うものを覚えた。
(なんだ、なにか……)
彼女の動きは普通だ、制服もなんら変わりない。
だが、手の動きが違う、胸元を抑える様な仕草であり、彼女の動きも股先に何か嫌な感覚を覚えているのか内股になりつつある。
何が可笑しいのか、それを語るよりも前に、銀嶺白乃が奈流芳一以の前に立った。
「ああ、銀嶺」
奈流芳一以は本日初めて出会ったかの様な挨拶を行う。
部署内部では銀嶺白乃が祅霊によって呪いを受けた事は知られている。
だが、その内容は余り流布されておらず、奈流芳一以が付き添いをしている事が多い、と言うのが周囲の見解であった。
故に、奈流芳一以と銀嶺白乃が肉体関係にある事は、薄々と勘付きながらも皆、知らない振りをしている状態であり、奈流芳一以はその事に対してなるべく表沙汰にならない様に徹していたのだが。
「私の下着、何処に収納したの?」
当の本人は、奈流芳一以の知らん振りを知らぬと振り返していた。
流石の奈流芳一以も、彼女の直球に対して言葉を聞き返してしまう。
「は?」
人が少ないが、それでもぽつぽつと人が増えだす時間帯。
彼女の言葉は少なからず、向かい先の机で腰を下ろす中年抜刀官の耳に入っている様子だ。
聞き耳を立てる男性中年の視線を向け、奈流芳一以は小さな声で話を行う。
「待て、此処で話す事か?」
銀嶺白乃の下着の所在を奈流芳一以が知っているとすれば、最早関係性は見え透いた様なものだ。
脂汗を垂らしながらなるべく自重する様に話を切り捨てようとしたのだが。
「いま話すべき話だけど」
続行の宣言を受けて奈流芳一以は項垂れる。
頭部に頭を当てて、何とか周囲に気取られない為に言葉を選ぶ。
「人前で話をするべきではないと言っている」
せめて、人の居ない場所で話をするべきだ。
とそう言うが、銀嶺白乃にとっては悠長にすべき時では無いらしく。
「人前に出られないから言っているんだけど」
言い放つと共に彼女は片腕で胸を押し上げて強調する。
その仕草に、先程の胸の揺れを抑える仕草に、奈流芳一以は察する。
「……待て、お前は今」
まじまじと、彼女の胸部を見据える。
制服を着込んでいるが、何時にも間して胸部が一回り大きいのでは無いのかと。
その視線に対して銀嶺白乃は嫌々ながら疑問に対する回答を示す。
「何も着用してないの、制服だけ」
即ち。
彼女の制服を剥げば即座に全裸になると言う事。
片手で胸を押さえ、もう片方の手で下腹部に手を添えている仕草は言葉にも出来ぬ異様な違和感を抑えているのだろう。
「どうりで揺れているワケか……」
何時もよりも柔らかで、丸みを帯びた胸部。
昨晩に何度も吸い尽くした肉欲を思い浮かべた末に出た知性も品性も無い言葉に流石の銀嶺白乃も看過出来ず。
「は?」
冷酷な視線と共に睨まれる奈流芳一以。
中年男性が机を跨いで熱い視線を此方に向けているので、一先ず咳払いを行い場を濁す。
「いや何でも無い、寄宿舎に戻るぞ」
一先ず優先すべき事は定まった。
先ずは、銀嶺白乃の為に下着を用意する事である。
下着は彼女が数週間前に使用したものを誰にも悟られずに洗濯を行い人が簡単に探られない様に本棚の奥に隠していた筈だ。
その場から離れようとする二名に対して、彼らの行動を遮る声が響き出す。
「奈流芳抜刀官」
紀将武虎の鋭い視線が奈流芳一以に向けられた為、彼はその場で背筋を伸ばした状態で声を荒げる。
「はッ、これより特別任務に銀嶺白乃を同行させます、宜しいでしょうか」
咄嗟に出た言葉に、紀将武虎は脳内で用意していた台詞が消え、その次に別の台詞を構築した末に言葉として口に出した。
「……宜しい、早急な対応を期待しているぞ」
そうして、奈流芳一以は銀嶺白乃を連れて外へ連れ出す。
そのまま寄宿舎へと到着し、奈流芳一以は自室へと戻る。
「ねえ」
奈流芳一以から渡された風呂敷の中から下着を取り出す銀嶺白乃は、今一度衣服を脱ぎ捨てると共に、生まれたままの姿になると、静かに下着を着用していく。
その際に、奈流芳一以に対する疑問を浮かべ、話しかけていた。
「どうした」
奈流芳一以は彼女に対して視線を逸らした状態で話を続ける。
その場から離れなかったのは、離れようとした時に話し掛けられたからだった。
「特別任務ってなに?」
その質問は核心を突いた。
言葉に詰まる奈流芳一以は、口元に手を当てて嘘を吐く。
「……何でも無い」
当然、長い付き合いだ。
銀嶺白乃は奈流芳一以の癖を見抜いていた。
「そうじゃないんでしょう?」
後ろ向きに手を回し、下着の鉤爪を着けながら銀嶺白乃は聞く。
「貴方は私の責任を取る必要がある、全てを教える責務がある、隠し事なんてさせてあげない」
学生時代の頃に起きた事件。
その時から奈流芳一以と銀嶺白乃の人生は変わり、運命共同体と成った。
だからこそ、隠し事は許せないと銀嶺白乃は思っているのだ。
「……俺はお前を巻き込みたくないだけだ」
だが奈流芳一以は違う。
このまま関係を続けば、何れは銀嶺白乃を巻き込んでしまう。
そうなる前に、解決案を探さないとならないのだが、まだ見つからない。
視線を逸らしたままであった為。
「どの口が言うの?もう五年も前から巻き込まれてるのに」
その後ろに、銀嶺白乃が近付いていた事に気が付かなかった。
静かに、彼女の視線を奈流芳一以を見詰めていた。
その瞳に見据えられると、隠し事など出来ずに、結局は漏らしてしまう。
「……はぁ、封魔剣聞録、封魔刀蒐集の任だよ」
封魔剣聞録。
その仕事の内容を銀嶺白乃に告げるのだった。