異能剣戟ダークファンタジーなエロゲ世界に生まれた者、バッドエンドで妖怪に穢され闇堕ちしたヒロインの生きる希望となり最強の特級剣士として在り続ける 作:三流木青二斎
「試刀流斬術戦法"肆式"〈流刃〉」
排気瓦斯を口から吐き出すと共に刀身に闘猛火を流し込む。
闘猛火に極めて薄い膜を刃と峰に循環する様に噴出。
熱の刃が高速で刃を巡る事で斬撃の威力を向上させる。
馬骨鬼が黒き刀を振るい攻撃を行った瞬間、鍔迫り合いを行う。
鋼が撃ち合う音が自然に木霊し、深く息を吸い込む奈流芳一以。
「ふ、うッ!!」
炉心躰火による身体能力の強化。
呼吸を行い酸素を炎子炉へ流し込み生成される闘猛火が筋力を増強させる。
表皮から大量の煙を発生させながら、均衡を崩す為に技を重ねる。
「試刀流斬術戦法"漆式"、〈撃剣〉ッ」
膨大な闘猛火を用量を守らず一気に刀身へ流し込む。
強制的に流し込まれた熱により、瞬時に温度が上昇した刀身は膨大な熱を排出。
その熱は暴風と化して爆心力を生み、鍔迫り合いを行う対象を弾く威力を発する。
対象との距離が一瞬生まれた隙に、奈流芳一以は呼吸を整え、刀身を地面に突き刺す。
「試刀流斬術戦法・弐式」
腕部で刀身を抑え込み、闘猛火を刀身の切先に向け流し込む。
切先は地面に深く突き刺さり密閉状態となり熱が超過保温状態に至る。
「ぐしゃおぉ!!」
その状態を理解せずに接近する馬骨鬼。
奈流芳一以に向けて黒い刃を振るおうとする寸前。
「〈断閃〉」
奈流芳一以は切先を地面から離す。
切先に溜まり続けた闘猛火が放熱し刃が加速。
下から上へと昇る様な斬撃が馬骨鬼を武器毎破壊した。
「はッ、ぁ」
呼吸を整える奈流芳一以。
背後に迫る馬骨鬼を感知しながら刀を振るおうとした最中。
「雷迅流斬術戦法"裂靂"ヶ参式」
遠くから唱えられる斬術の名に、奈流芳一以は背後の敵を無視する。
遠方に刀を構える銀嶺白乃が放電する肉体から刀へと流し込み、雷の闘猛火を奈流芳一以へ向けて振るう。
激しい雷鳴と共に射出される斬撃。
その軌道は直線では無く稲妻の様に直角と直線を繰り返しながら奈流芳一以へ接近し……彼を避けながら背後に迫る馬骨鬼に直撃する。
(相変わらず、恐ろしいな、雷迅流は)
雷迅流斬術戦法。
銀嶺家が誇る雷の如き怒濤の攻めを特筆とした斬術戦法。
五大斬術の一角を誇る最強の斬術は銀嶺家を含める血族にしか許されない技であった。
「一以、これくらいで……疲れているの?」
疲弊を募らせる奈流芳一以に対して厳しい言葉を与える。
その言葉に感化するかの様に、奈流芳一以は額に流れる汗を拭うと共に息を吐く。
「まさか、まだ、出来るさ」
戦闘に対する苦手意識を宿しながらも、奈流芳一以は彼女の前である為か平然とした素振りを見せつけると、緩まる刀を再び握り締めて、馬骨鬼に向かい出した。
「ふぅ……銀嶺、大丈夫か?」
多くの祅霊を討伐した事で、奈流芳一以は流した汗を手の甲で拭いながら、銀嶺白乃に体調がどうであるか聞いた。
銀嶺白乃の昨日に起きた衝動に対する反応に対しての質問である。
彼女の肉体は、多く闘猛火を放出し続けると、肉体に寄生する祅霊の核が暴走し、肉体に異常を発生させるのだ。
故に、彼女の体調を気にする事は、奈流芳一以にとっては彼女の危険をいち早く察知する為の質問に過ぎないのだが。
「別に、人の心配してる暇、あるの?」
奈流芳一以とは違い、顔色一つ変えず、呼吸の乱れなど一切無い銀嶺白乃は余裕の表情を浮かべながら刀に付着した祅霊の黒い血を払った。
彼女の変わらぬ壮健と健闘ぶりに、学生時代から変わらない技術と天性の才能に思わず感嘆しそうになるが、彼女の言葉から奈流芳一以は少し気恥ずかしそうに、己の実力を恥じる様に頭を掻いた。
「はは……俺は何時も通りだよ」
刀を構えたまま、奈流芳一以はそう言った。
基本的な技術、斬術に関して言えば、奈流芳一以よりも銀嶺白乃の方が上である。
故に、単純な戦闘力で言えば、銀嶺白乃の方が階級が上であると誤認され易いのだが。
「それで良く特級に該当されたね」
呆れた様に、銀嶺白乃は告げる。
その言葉に反感を覚える事無く、ありのままの事実として奈流芳一以は頷いた。
「悪運だけが強いからな……まあ」
そう言いながら、奈流芳一以は自らが握り締める刀を自らの額にまで近づける。
刀身は鋼で出来た白銀の刃が煌き、その奥深くに眠る斬神が此方を一瞥するかの様に錯覚した。
奈流芳一以は、小さく笑みを浮かべながら、全ては斬神のお陰であると言いたげに答える。
「特級の条件に何とか食い込んだってだけさ」
特級抜刀官と言う枠組み。
それは特定の条件下を達成する事で、特級として繰り上げる事が可能。
より多くの仕事を熟して来た事、あるいは、抜刀官として斬神を三体異以上発現させた事。
奈流芳一以の所有する三振りの刀には、その三振りとも、異能の力を宿している。
故に。
「俺自身は、其処まで強いワケじゃない」
客観的事実、ありのままを受け入れる奈流芳一以。
それを謙遜とも思わず、銀嶺白乃も同様に彼の言葉に同調する。
(……そう、貴方は強く無い)
それを口にする寸前に、彼女は止める。
奈流芳一以は、彼女の声に気が付かずに、刀を鞘に納刀する。
「良し、そろそろ行くか」
奈流芳一以はこの先にある筈である封魔刀を回収する為に歩き出す。
後に遅れて、銀嶺白乃も刀を納刀した後に、彼の後を追い出した。
(遂行してきた仕事の量が人よりも異常に多いだけ……だからこその、異常)
奈流芳一以は、年間で発生する一流の抜刀官が行う量の仕事の三倍を熟して来た。
実力は無いが、それでも、奈流芳一以は多くの祅霊を斬り続けて来た斬人であった。
「ん」
奈流芳一以は隣に居る銀嶺白乃に視線を向ける。
此処に来て初めて銀嶺白乃の表情が曇っているのが良く分かる。
瘴気はより一層濃くなっている、即ちは封魔刀が其処に封じられているのが分かった。
「どうやら……封魔刀がある、見たいだな」
奈流芳一以は冷や汗を掻きながら刀に手を添える。
彼の前に見えるのは、複数の祅霊が木製の祠に群がっている様子だった。
「銀嶺、苦しいのなら離れた方が良い」
彼女の体調を案じて聞く奈流芳一以に、彼女は額に浮かぶ脂汗を拭いながら首を左右に振る。
「舐めないで……これくらい、どうって事、ない」
明らかな痩せ我慢だったが、奈流芳一以はそれ以上は言わない。
彼女の負担になる事は理解している為だ。
「じゃあ、終わらそう、早く斃して回収をする」
腰元から炎命炉刃金を引き抜くと共に、奈流芳一以は祅霊に視線を促した時。
祅霊の一体が、祠の中に手を伸ばして一振りの刀を握り締めている様を見据えた。
「っ」
奈流芳一以は闘猛火を循環させると共に全身を使い炉心躰火を使役。
同時に銀嶺白乃も深呼吸を行い、電気質の闘猛火を発生させた後に雷光刹火を発動。
封魔刀を握り締める祅霊は、手先が器用な猿の見た目をした祅霊である。
細身の肉体を使い、刀を強く握り締めた後に溢れんばかりの瘴気を一身に受ける。
祅霊が欲する負の力を受ける事で祅霊は一時的な進化を遂げる。
刀を振るうに似付かわしい肉体、一般男性と同等の背丈と筋肉量を獲得した後に柄を強く握り締めて喉奥から声を漏らす。
「超新星流星群」
封魔刀は基本的に封印と言う処置が施されている。
それを解除するには特定の文言を封印の内部と外部から同時に答えなければならない。
緩まる封印から漏れる瘴気と共に封緘されていた祅霊から封印解除の銘と文言を伝えられたのだろう。
「クソッ」
奈流芳一以は舌打ちをしながら炎命炉刃金に手を添える。
近くに居た銀嶺白乃の身体を腕で抱え込む様にしながら刀身を抜刀。
「拔劔―――〈綺羅星隕鉄〉」
猿の祅霊が告げると共に封魔刀が抜き放たれる。
同時、奈流芳一以も刀身を引き抜き、その神の名を口に漏らす。
「斬神ッ」
銀嶺白乃と奈流芳一以の周囲を旋回する様に出現する黒い影。
それはカタチを成し、形成していくと共に姿を顕現する。
周囲に漆黒の雲を発しながら、蜷局を巻くそれは天を支配する龍そのもの。
奈流芳一以は神の銘を告げる。
「―――辰墜ッ」
封魔刀による式神化した祅霊の暴走。
炎命炉刃金による斬神の顕現は同時であった。
「っ!?」
次の瞬間に奈流芳一以は度肝を抜いた。
天から落下する巨大な隕石を、その目に捉えた為だった。