※この作品はR-18です。

異能剣戟ダークファンタジーなエロゲ世界に生まれた者、バッドエンドで妖怪に穢され闇堕ちしたヒロインの生きる希望となり最強の特級剣士として在り続ける   作:三流木青二斎

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第七話

天を裂き落下する膨大な質量の塊。

周囲一帯を陥没し得る地球外からの暴力に対し、奈流芳一以は静かに斬神に希う。

 

「辰墜・天雲地」

彼の願いに対し斬神は祈りを叶える様に空へ発つ。

黒き鱗の隙間から瘴気に近しい漆黒の霧を噴出させると、瞬時に雲が展開される。

黒雲が隕石に接触すると共に、隕石はその場から動く事無く留まり続ける。

相変わらず落下速度は変わらぬと言うのに、物理法則の矛盾。

 

「さて」

奈流芳一以は刀を構えたまま、祅霊の群れに視線を向ける。

内心、平然としている様は特級抜刀官としての貫禄を引き出しているのだが。

 

(不味いな……辰墜で隕石を止めるので精一杯だ、襲玄だったら跳ね返せたんだが)

重力操作を要とする能力を持つ斬神・襲玄であれば、膨大な質量と重量を持つ隕石など簡単に対処出来ただろうが、奈流芳一以は辰墜を使役した。

これは決して選択を誤ったと言う訳ではなく……現状、辰墜しか使役出来なかったのだ。

 

(単なる回収と言う役割、強力な襲玄は使用しなかったのが裏目に出たな……)

神を使役する炎命炉刃金は使用するのに条件が必要となる。

それは斬神を顕現させるのに必要な燃料と熾火の二つ。

熾火は斬人の体内に流れる闘猛火であり、火種となるのが祅霊と言った負の力である。

早い話が、刀で斬り、吸収した祅霊の魂を燃料に斬神が発動する。

強力な襲玄を使役するには、膨大な負の魂が必要。

 

(だが、辰墜ですら長時間維持は出来ない……短期決戦が必要となる)

奈流芳一以は闘猛火を生成しながら、祅霊の群れに視線を向ける。

 

「銀嶺、封魔刀の回収、及び、使役する祅霊の討伐を頼む、俺は隕石を止める為に雑魚の群れを討伐して辰墜の肥しにする」

速やかな部下に対する命令を行うと共に、銀嶺白乃は頷いた。

役割分担を終えた後、銀嶺白乃は呼吸を行い身体能力強化による雷光刹火を使用。

肉体に流れる電気の波が全身を駆け巡り身体能力を底上げすると共に地面を駆け出して疾走。

 

「うぎゃぁおうッ!!」

それが合図となり、祅霊の群れも銀嶺白乃、奈流芳一以に向けて蠢き始めた。

早々と奈流芳一以の前に飛び出る祅霊の蟲達が奈流芳一以を喰らい付こうとした瞬間。

 

「試刀流斬術戦法"壱式"〈斬威〉」

膨大な闘猛火を刀身から発生させながら祅霊との間に向けて刀を振るう。

刀身から発生する闘猛火は斬撃と化し射出され、即座に祅霊の蟲を一匹斬り殺す。

討伐した祅霊から発生する瘴気は周囲の瘴気と混ざり合い、大気に散布される負の力は刀身が吸収。

斬神の強化に繋がる瘴気に余裕が生まれた事で、奈流芳一以は辰墜に更なる命令を下す。

 

「辰墜、天門地」

命令と共に空を翔る辰墜は銀嶺白乃の眼前に向けて雲の塊を放つ。

もう片方は、封魔刀を使役する祅霊の目前に向けて放つと、雲の塊は門を構築した。

銀嶺白乃は迷う事無く雲の中に足を踏み入れた直後、目前には猿の祅霊が居る。

 

これが辰墜の能力である。

天と地の境界を操る異能、これ即ち距離を操作する能力である。

隕石との間に雲を敷く事で落下する隕石は雲の境を永遠に落ち続けているが故にその場に留まるかの様な錯覚を起こし、雲による門の間を距離を縮める事で瞬時に相手の元へ向かう事が出来る。

 

「ふッ」

刀を振るう銀嶺白乃、その斬撃を受け止める猿の祅霊。

実力はやや、銀嶺白乃が上回るが……猿の祅霊には、異質な刀の恩恵を得る。

 

(封魔刀に封じられた祅霊の姿が無い)

銀嶺白乃は猿の祅霊と鍔迫り合いを行いながら視線のみで周囲を見回す。

濃い瘴気は相変わらず封魔刀から放たれ、祅霊の気配を探る事が出来なかった。

 

(居ないのなら良い、出された所で支障は無い)

銀嶺白乃は猿の祅霊に力で圧し込める。

筋力による押し合いに猿の祅霊は刀を弾き圧迫感から逃れる。

その瞬間に、銀嶺白乃は呼吸を行い雷の闘猛火を刀身に流し込む。

 

雷迅流(らいじんりゅう)斬術戦法(ざんじゅつせんぽう)"裂靂"ヶ一式(れつれきがいち)(ちどり)〉」

ち、ちちッーーー。

刀身の刃から峰へ向かい流れ出す稲妻型の闘猛火が刀の周りを旋回する。

試刀流斬術戦法の肆式〈流刃〉と同じ原理である斬術戦法ではあるが、雷迅流の方が荒々しく、肉を斬るでは無く肉を削る様な斬撃を振るう事が出来る。

 

(私の式神は、まだ出せない、出しても意味が無い、肉体の限界まで貯めないと)

肉体で次第に蠢き出す祅霊の種子。

闘猛火に反応し、内側からじんわりと瘴気が流れ出て来る。

 

「雷光刹火」

身体能力の増強。

銀嶺家が誇る体術は斬術戦法から外れた枠組み。

基礎中の基礎とされる体術を駆使し、猿の祅霊へ接近。

刀を振るい攻撃を行う、猿の祅霊は動きを目で追った後に刀で防御。

 

「うぎゃッ」

声を荒げる猿の祅霊。

強制的に発生する闘猛火の火花が周囲に散布する様に溢れる。

ぎ、ぎ、ぎぎぎッ、と甲高い電動鋸の様な轟音を響かせる。

火花が皮膚に触れる度に祅霊は苦痛の声を漏らし、再度刀を弾いた。

距離が空いた際に、銀嶺白乃は刀を構えで息を整える。

酸素を燃焼して発生される雷の闘猛火を刀身へ供給。

 

雷迅流(らいじんりゅう)斬術戦法(ざんじゅつせんぽう)"裂靂"ヶ三式(れつれきがさん)角雷凱(かくらいがい)〉」

刀を振り抜くと共に発生する稲妻の斬撃。

猿の祅霊に向けて稲妻型に変則的な軌道を作りながら接近。

その攻撃に対し……猿は脱力した。

全身の筋肉を低下させる程に緩み、斬撃が接触する寸前に全身を力ませ回避。

斬撃は猿の祅霊から遠ざかり背後の祠を破壊する。

 

「うき、き」

猿の祅霊は楽しそうに笑みを浮かべた。

挑発ともとれる表情に、銀嶺白乃は平然とした様子で、攻撃を放ち終える。

 

「一振り、避けた程度で嬉しいの?悪いけど……」

ひり、と。

猿の祅霊が鎖骨辺りに違和感を覚える。

何か灼ける様な嫌な感触を抱きつつある猿の祅霊。

 

雷迅流(らいじんりゅう)斬術戦法(ざんじゅつせんぽう)"穿霹"ヶ四式(せんびゃくがよん)直導雷鳴(ちょくどうらいめい)〉」

最速の刺突技の行使。

雷の闘猛火を紫電の糸で軌道を作り、その流れに沿う様に刺突の雷撃を放つ。

予測の線が刻まれる以上、回避するのは容易いが、皮膚に感じ入る灼ける様な痛みを覚えれば、最早それは手遅れに近い。

 

「雷迅流は雷の如く怒濤に攻め入る、相手が回避前提で、技を出しているの」

発される刺突の雷撃が音を置き去りにし、猿の祅霊の上半身の半分を穿つ。

爆裂する猿の祅霊は、自分が何をされたのかすら分からないだろう。

 

「猿如きに、勿体無いかな」

銀嶺白乃は呼吸を整えながら、猿の祅霊に近付いた。

尚も、刀を握り締める猿の祅霊は、渾身の限りを尽くし、封魔刀に力を与える。

 

(なんだ?隕石が浮上して、……は?)

奈流芳一以は大きく空を見上げた。

先ほどまで自由落下していた隕石が次第に上空へと登っていくのが、目に見えて分かったからだ。

だからこそ、奈流芳一以が一番驚いたのはその隕石が単なる物質ではないことに関してだった。

 

「ぬわ、ぁ、ぼおおおううう」

高らかに間抜けな声を響かせながらゆっくりと浮上する岩石と鋼鉄でできた肉体。

その時点で、奈流芳一以は何故その場に祅霊がいないのか察するべきだった。

 

「ま、さかっ」

からの予想は見事に的中する。

隕鉄で出来た肉体が自転していき、小さなカタツムリの様な頭が此方を向いた。

隕石の端には小さな手足が左右に揺れ、さながら風に舞う風船の様な柔らかさを連想させる。

 

(この隕石、そのものが天魔だったのか?!)

驚きながら、奈流芳一以は深く呼吸を行い酸素を燃焼させる。

これ程巨大で、尚且つ、強固な肉体を持つ祅霊を、襲玄を使わずして討伐するなど無理な話である。

 

「ぶぅぅ、ほぉぉ、すてぃいいらあぁああ」

再度、間抜けな声が轟いた。

その声は自らの力を扱う為の掛け声であり、肉体から発生する黒い煙が次第に物質化していく様を視認。

 

「瘴気から隕石を……成程、大量の隕石を振り落とすつもりかッ」

無数の隕石を振り落とし、周囲一帯を破壊し尽くすのだろう。

現状では倒せない、ならば、出来る選択肢は必然的に狭まる。

奈流芳一以は猿の祅霊に致命傷を与えた銀嶺白乃に向けて高らかに声を荒げた。

 

「銀嶺、封魔刀を鞘に収めるんだ!!そうすれば再度、祅霊を封じる事が出来る!!」

彼の言葉を受け取ると、銀嶺白乃は微かに唇を動かし静かに呼吸を行う。

口元から排出される灰色の煙と共に、銀嶺白乃は雷光刹火を使役。

 

「うき、ぃ、いい!!」

片腕を無くした猿の祅霊は、その場から逃走する選択肢を選ぶ。

抜き身の刀を強く握り締めて、周囲の祅霊に向けて合図を送る。

意思疎通が取れているのか、周囲の祅霊は銀嶺白乃に向けて行動を阻害しようとしたが。

 

「雷迅流斬術戦法"穿霹"ヶ三式〈千鳥啼〉」

刀身を真上に向けて振るう。

紫電の残光が空中に留まると、無数に光が分かたれ、高く飛翔し、祅霊の群に向けて刺突の雨を繰り出す。

肉体を貫通された祅霊は一撃で絶命し、あっという間に彼女を遮る肉壁が途絶える。

 

「悪いけど、奪い合う真似なんてしない」

地面を蹴り上げると共に、雷光刹火で強化した肉体を振り絞り、即座に猿の祅霊との距離を縮めると、もう片方の腕を一撃で切り捨てる。

 

「猿の手ごと、貰うから」

吹き飛んだ腕から溢れる封魔刀を掴み、銀嶺白乃は予め回収した鞘に封魔刀を納刀。

その瞬間、遥か上空から無数の隕石が撃ち落とされる。

さながら、超新星の流星群、と言った所だった。

 

 

 

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