異能剣戟ダークファンタジーなエロゲ世界に生まれた者、バッドエンドで妖怪に穢され闇堕ちしたヒロインの生きる希望となり最強の特級剣士として在り続ける 作:三流木青二斎
「辰墜、天雲地」
斬神、辰墜に命令を下し、彼の周囲に漆黒の雲による霧を発生させる。
これにより、奈流芳一以の上空から落下する隕石の群は奈流芳一以に接触する前に、境界線の狭間で隕石が落下し続ける事となる。
そして、銀嶺白乃が封魔刀を鞘に納め綺羅星隕鉄を再封印した後。
綺羅星隕鉄が生み出した隕石の塊も消え失せた。
奈流芳一以は何とか無傷の状態で生き残る事が出来、周囲に散る土煙に対して煙たい表情で渇いた空気を手で払う。
「けほッ……げほッ」
気分が悪そうな表情を浮かべるが、それでも致命傷を受けずに性感出来た事は奇蹟に近しい。
奈流芳一以は大した怪我も無く歩きながら土煙を払う様を、銀嶺白乃は封魔刀を抱いたまま接近した。
「本当に特級の姿も形も無いね、一以」
随分と失礼な物言いだが、奈流芳一以は彼女の言葉を肯定する。
「あ、ぁぁ……本当にそうだ、俺はそこまで強くはない」
強く在ろうとしたが、それでも真の強さまで届かない。
ただ恰好を付ける事で強さを誇示出来るが、今の奈流芳一以にはそれすら無かった。
何とも弱々しい言葉に対して、銀嶺白乃は刀を奈流芳一以に私ながら加えて告げる。
「でも、一つだけ認めてあげる」
奈流芳一以の姿を見据える彼女の瞳を、彼は自らの姿を映し込みながら首を傾げる。
「?なにを、だ?」
何を認めてくれるのか。
奈流芳一以の疑問に対して、銀嶺白乃は戦闘を行う前の会話を思い出していた。
「悪運、確かにそれだけは私以上」
割と酷い目には遭うが、何とか生き永らえる運気。
奈流芳一以からは少なからず、生命力の強い何かを感じ取れたのだろう。
誉め言葉か、それとも皮肉か、どちらか分からなかった奈流芳一以だが。
「……あぁ、そうだろう?こればかりは昔から強いんだ、っと」
せめて、誉め言葉であって欲しいと願いながら、そう言葉を返した。
しかし、今回ばかりは悪運が底を尽き掛けているかも知れないと思った。
「……一応は、私有地、だからなぁ」
星見山。
藤河家の私有地である。
山の中に入る為に許可は経たが、隕石が落とされ続け、地殻変動が起きたかの様な山中の崩落は、どう報告すれば良いのかと頭を悩ませる。
「……銀嶺、一緒に謝ってくれるかい?」
悪運を信じて、銀嶺白乃に共に頭を下げてくれる様に自らの運に賭けたのだが。
「それは、上司である一以の仕事でしょ?」
……部下としての立場を利用され、奈流芳一以のみが責任を被る事となった。
こればかりは、運気などでは避けられない事であり、やはり自分には運が無いのでは無いのかと、奈流芳一以は密かにそう思うのであった。
丁重に封魔刀を布袋で覆い、右手に巻いた包帯で簡易的に封じる。
その上に細長い木製の箱で収め、内部には祅霊の瘴気が発生しない様に強く補強材を使い封じ込んだ。
物理的に封魔刀を納めた後、それを持ちながら奈流芳一以は気怠い足取りで第十三課へと足を運ぶ。
そして、相変わらず事務作業に勤しむ紀将武虎隊長は奈流芳一以の帰還に対して無機質な声色で答える。
「早速の回収、ご苦労だったな」
多少の労いの言葉を受けた事で、奈流芳一以はお咎め無しかと淡い期待を抱いた。
「はい、有難う御座います、此方が例の封魔刀です」
そして、奈流芳一以は封魔刀を入れた禁忌の箱を渡すと、それを受け取った紀将武虎は周囲を見回す。
その視線に勘付いた他の抜刀官が窓に帳を下し、扉の施錠を行う。
外から瘴気が漏れぬ様に徹底した後に、紀将武虎は改めて中身を開封した。
再度現れる封魔刀、静かに刀を掴み、鞘の上から刀身をなぞる。
「うむ……
そう口にすると、硬く鎖されていた鞘が緩まり、簡単に抜刀出来る。
だが、祅霊の完全顕現とは言い難く、ただ白銀に輝く抜き身が顕れたに過ぎない。
刀身に視線を向けながら、あらゆる角度で刀を見据えた末に、納得と共に封魔刀を納刀する。
「確かに、刀身に祅霊、もとい、天魔が宿っているのが判るな」
天魔。
封魔刀に封じられた祅霊の正式な名称であった。
式神や斬神とも違う名称、それは完全に人の手に堕ちたワケでは無い事を指す。
油断すればすぐにでも寝首を掻く……その邪気香る危うさが、天魔と言う名を授かるに至る。
「銘は?」
この封魔刀に封じられた天魔の銘を聞く紀将武虎に対して、奈流芳一以は封魔剣聞録を開きながら告げる。
「綺羅星隕鉄と言います」
銘を告げた後に、紀将武虎は封魔剣聞録の内容を見ずに、詳細を語り出す。
「そうか、能力が隕石操作、だったか」
道理で、と。
紀将武虎は納得した末に、改めて奈流芳一以に対して鋭い視線を浮かべる。
先程、電報が届いたと、その詳細を簡潔に述べた。
「藤河家の親族から早速の電報があった、星見山が非道い有様だったと」
今回はお咎め無し、そう思っていた奈流芳一以の内心にヒヤリとする感覚が流れ出す。
「も、申し訳、ありません……あの、それで?」
今回の罰は何であるか。
そう奈流芳一以は恐る恐る聞いたが、暫くしかめっ面を浮かべる紀将武虎は深い溜息と共に眉間のシワを解す様に揉みながら沙汰を告げる。
「今回は目を瞑る、被害費用は第十三課が何とかしてやろう、……だが、なるべく騒ぎを起こさぬ様に徹底しろ、良いな?」
その言葉に奈流芳一以はきちんと起立を行った状態で深々と頭を下げる。
「り、諒解致しました、紀将隊長」
今回限り、許された事で、何とか凌いだと、奈流芳一以は安堵の息を漏らすのだった。
「一以、結局、どうだったの?」
銀嶺白乃は奈流芳一以が紀将武虎にどの様な裁決を齎されたか伺った。
この天才児は自分が叱られる可能性があると逃げ出す様な一面がある。
人によっては嫌な性格、性分と思われるだろうが、奈流芳一以は別段気にしなかった。
「何とか、お咎めは無かったよ、それでも怒られたのは、怒られたけどね」
はは、と軽く笑う奈流芳一以に、銀嶺白乃は俯いていた。
体調が悪いのだろうか、そう思う奈流芳一以は彼女の身を案じた。
「大丈夫か?何処か体の調子が……呪いか?」
奈流芳一以の言葉に、銀嶺白乃は首を左右に振る。
身体の体調が悪いワケでは無く、内面、精神に関連しての事だった。
「流石に、一人で行かせるのは、嫌だったと思った、だけ」
ぽつりと口に出される彼女の優しい言葉。
奈流芳一以は其処で彼女が優しさに目覚めたのだと、思わず柔和な笑みを浮かべてしまう。
「俺の事を気遣ってくれるのか」
嬉しさの余りに感極まる奈流芳一以。
そんな彼の大袈裟な反応に銀嶺白乃は気恥ずかしさを覚えてそっぽを向く。
「別に、そういう訳じゃない」
彼女は否定する、銀の髪を揺らし顔を覆い隠す。
今までにない反応に奈流芳一以は彼女が心を開かせたのだと思った時。
「……」
背後に立つ者の気配を奈流芳一以は感じ取る。
視線を後方へ向けると共に、其処に立ち尽くすのは赤と白の極光の布を顔に被る白色の狩衣を着込んだ男性の姿が其処にある。
「奈流芳一以」
巫女に使える伝達や補助を優先して行う、『代わり火』の者達だった。
こんな時に話し掛けるなど、間が悪いと、奈流芳一以は気分を害する。
「あ、はい、俺ですけど……」
そう言うと、代わり火は傲慢さを覆い隠す事無く踏ん反り返りながら、彼に命じた。
「火之弥呼様が貴様を呼んでいる、早々に来い」
火之弥呼。
神に仕える巫女の一族。
この国で信仰される神……
抜刀官が所持する『炎命炉刃金』を鋼を鍛錬する為に必要な『
「……どちらの火之弥呼様、ですか?」
嫌な予感を抱く奈流芳一以は、誰から呼ばれているか聞く。
当然、奈流芳一以の心には該当する人物の顔が思い浮かぶ。
「ふん……
途方も無い名前の長さ、それを聞いた時、奈流芳一以はうんざりとした表情を浮かべる。
「……あぁ、はい、分かりました」
奈流芳一以が苦手とする人物。
その彼女からの呼び出しに嫌気を覚える。
だが、目上である以上、拒否は出来なかった。
「悪い、白乃、少しだけ待っててくれ」
一言告げて、火之弥呼の下へと向かおうとした時。
銀嶺白乃は、奈流芳一以の袖を掴んだ。
「……っ」
彼女が奈流芳一以の袖を掴んだ。
ゆっくりと彼は紅葉色の髪を揺らして振り向いた。
凄んでいる彼女の表情に少し驚いた。
「ど、どうした?、袖なんか掴んで」
奈流芳一以は彼女の顔を見つめる。
気迫すら感じる彼女の表情には、嫉妬が溢れていた。
「……私が行くなと言ったら、一以は行かないでくれる?」
銀嶺白乃の言葉に、奈流芳一以は、え、と言葉を漏らす。
如何に、気を許した関係である彼女であろうとも……。
火之弥呼・妃代吏を無視する事など出来はしない。
「……いや、火之弥呼様の呼び出しだ、先にそちらを優先するよ」
奈流芳一以は優先順位を間違える事無く言った。
すると、より一層、銀嶺白乃は恨めしそうな表情で顔に陰を作る。
「あんな、女なんか……」
奥歯を噛み締めている銀嶺白乃。
その表情に、奈流芳一以は恐る恐ると聞く。
「どうした?白乃」
聞くが、彼女は袖を離す。
それと同時に、彼の顔を見る事無く足を速めた。
「……もういい」
銀嶺白乃は、真っ白な髪を揺らして歩き出す。
奈流芳一以は、銀嶺白乃に向けて手を伸ばした。
「な、おい、十三課で待っててくれ、銀嶺ッ」
しかし、彼女は奈流芳一以に触れられぬ様に動く。
そして、極めて冷めた目つきを彼に向けた。
「
彼女は、奈流芳一以が、火之弥呼とある行為を行っている事を知っている。
火之弥呼を優先すると言う事は、自分はそれより下であると言う証明でしかない。
だから、銀嶺白乃は静かに嫉妬の炎を燃やしているのだった。