【三章までの登場人物】
───────────────
▼主人公とその親族
■静間虎徹(28)
本作の主人公。特異環境探査士、通称「探査員」。
資格試験に下限年齢の18歳で合格するも、外界探査認可を持つ各企業から雇用されることは無かった。
防衛省より嘱託という形で単独探査を十年間進めている。
大企業による所属チームの宣伝とは無縁の為、一般どころか回収員の間でもほぼ無名。
逆に実務として外界に関わる者たちの間での知名度は高い──良くも悪くも。
世界有数の探査技能保持者と認められつつも、単独で外界に潜り続ける奇人と評されている。
この国で外界に赴く者の中でも、周囲からある種の畏怖と共に敬遠されている双璧のひとり。
主要武装は自ら考案した「錐」。マルエージング鋼で造られた全長47㎝の氷錐。
生活能力は皆無ではないが、必要最低限で済ませる癖がある。
資産管理は遠田から紹介された税理士に丸投げしており、詳細を把握していない。
愛車は型落ちのフェアレディZ。
■静間龍一(故人:享年34)
虎徹の実兄。マリアの亡夫。
温厚かつ誠実な人柄で周囲の信頼を自然に集める人物だった。
20歳で個人貿易商を始める。22歳の時、取引相手の娘であったマリアと結婚。リリカとアリスの二子を設ける。
傾いた経営状況を立て直すために多額の借り入れを行い、ようやく解決の目途がついた矢先に交通事故で死亡。
亡くなる前の数年間、互いの多忙により連絡は途絶え気味ではあったが、虎徹との兄弟仲は最後まで良好だった。
■秋月狼那(24)(身長168/B93/W60/H91)
虎徹の実妹。既婚者。
さっぱりとした性格で男女問わず慕われる長身の麗人。
短大を卒業後、外界関連企業に就職。頼りない後輩だった慎司に押し切られるようにして結婚。
小学生で両親が死んだ時も泣かなかったが、のちに虎徹が外界探査員になると告げた時は大泣きした。
その事に触れると怒り出す為、龍一と虎徹は揃って口を噤んでいた。
■静間マリア(31)(身長163/B96/W62/H94)
ロシア出身。龍一の妻で虎徹の義姉にあたる。
旧姓はマリア・アレクセーエヴナ・ヴォルコヴァ。
片田舎の小物職人の娘として生まれ、16歳の時に買い付けに訪れた龍一と出会う。
二年の交際を経て結婚し来日。以後は日本で生活している。
豊満な身体と儚い美貌を併せ持った薄幸の未亡人。龍一の死後、周りの男たちに言い寄られることが度々あった。
虎徹と暮らし始め、家族と過ごす平穏な日々を何より大切にしている。外出を控えている為か体重が気になっている模様。
■静間
龍一とマリアの長女。虎徹の姪。
母譲りの端正な容姿と年齢離れした体つきを兼ね備えた中学一年生。
生来の合理主義者だが、限られた者に対しては妙に世話を焼きたがる一面がある。中学に入学した初日に男子からの告白数レコードを塗り替え、現在も記録更新中。
基本的に何でもできるが、その都度必要な事だけを選んですればいいと考えている。
おそらく作中で一番愛が重い。
■静間
龍一とマリアの次女。虎徹の姪。
無邪気で純真な小学三年生。虎徹にとても懐いており、龍一の死で失った父性への憧れと混ざった淡い恋心を抱く。マリアと虎徹が結婚したらパパになるので、自分がお嫁さんになれないというのが最近の悩み。
嫌いなものは注射とママをベトベトした目で見る大人。
姉の事は大好きだが、それはそれとしておじさまは渡さないと気炎を上げる静間一家の末っ子。
■秋月慎司(24)
狼那の夫。妻と同い年だが入社は1年遅い。
中肉中背の平凡な青年。内気な性格で少々優柔不断気味。
先輩として面倒を見てくれた狼那に惚れ、一世一代の熱烈なアタックの末に根負けさせた。
義理の兄とは仲良くしたいと思ってはいるものの、雰囲気に気圧されて及び腰気味。
ある悩みを抱えている。
──────────────────
▼拠点施設関係者
■遠田(56)
特異環境総合管理施設長。防衛省所属。
常に不機嫌そうな顔をしている初老の男。虎徹の事実上の上司にして雇用主。
探査員資格制度の発案・制定メンバーのひとり。
規律性を重んじるが形式主義者ではない。
経産省が推し進めている外界プロパガンダ戦略に、内心では苦々しい思いを抱いている。
下戸のためアルコールは嗜まない。
■堂島(37)
慶雲カンパニー所属の探査員。虎徹を友人と呼べる数少ない人物のひとり。
180㎝を超える身長に太い筋肉を搭載した屈強な大男。
元陸上自衛隊・第一空挺団・第一普通科大隊所属。
救助活動とヤクザ狩りに飽き、『実戦』を求めて探査員へ転身。
高校時代の後輩二人とチームを組み、5年以上死者を出さずに探査活動を続けるベテラン。
リスク排除を念頭に置いた立ち回りは国内探査チームのひとつの完成型と称される。
見た目通りの磊落な性格で、身内と認めた相手には面倒見の良い親分肌。
■安原(36)
慶雲カンパニー所属の探査員。堂島のチームメンバー。
元警視庁・第二機動隊所属。
掴みどころのない性格だが、受けた恩義には義理を果たすのが信条。
■角田(35)
慶雲カンパニー所属の探査員。堂島のチームメンバー。
元陸上自衛隊普通科所属のレンジャー資格取得者。
作中では先に兄に出番を取られた可哀そうな人。
■角田(兄)
角田の一つ上の兄。陸上自衛隊所属で拠点の駐屯地警衛隊員。階級は2等陸尉。
外界へ向かう虎徹に対して即興で融通を効かせる。
後日、訓戒処分を受けたと笑いながら弟に報告した。
■森國(46)(※加筆した1章2話で登場)
拠点の防衛技官。
唯一の嘱託探査員である虎徹の装備メンテナンスを担当している。虎徹から聞いた『錐』のコンセプトを元に実物を製造した人物。
多分に漏れず職人気質。中学生の娘が一人いるが少々お調子者である事を心配している。
■月城(25)
回収員。アルテミスの依頼を受け、美桜と凪を連れて未探査区域に向かうが、獣と遭遇して我先に逃亡する。
常に自分を『正しい位置』に置いていないと不安になる性格。
あの後、自分のしでかした事が広まっていないか数日間SNSをチェックし続けていた。
────────────
▼外界企業関係者
■篠塚こより(23)(身長153/B79/W54/H82)
セルリアングループの製薬会社に勤める女性営業職。
すぐに切羽詰まってしまうポンコツOL。
新卒として入社直後に、営業部エース網川のお付きとして虎徹への資源取引営業に赴く。
全く持って営業向きでない性格を逆に気に入った虎徹から取引の了承を得、その後は企業窓口として親交を続ける。
虎徹への恋心を自覚し、大学時代から付き合っていた彼氏に別れを告げた。
小柄だが整った容姿と不器用ながらもひたむきな人柄から、社内に隠れファンが多い。
フリーになったかもしれないという情報に色めき立つ者たちもいたが、当の本人が目もくれなかった為次第に沈静化した。
────────────
▼芸能事務所アルテミス関係者
■綾瀬美桜(16)(身長157/B92/W59/H89)
アルテミス所属のアイドル候補生⇒
可憐な容姿とグラマラスな身体が目を惹く高校一年生。
家族や友人を大切に想う心優しい少女。父親の仕事を見ながら育ち、幼いころからアイドルを志す。
本来のデビューが潰れて悲観し、捨て鉢のように発した話題作りの提案が採用されてしまう。
命と夢と親友と父親を同時に救ってくれた虎徹に恋慕を抱く。
現在はアイドル活動に専念し、日ごとにその人気は高まりつつある。
■鳴海凪(16)(身長158/B81/W56/H85)
アルテミス所属のアイドル候補生⇒
中性的な美貌で同性からも人気を集める高校一年生。
常に不愛想だが、美桜の前だけでは素直な笑顔を見せる。
幼少期に義父に暴行されかけ、立ち直らせてくれた美桜の夢を潰したのも性的な欲望だった為、男性に対して強い嫌悪を示す。
自らの命と、それより大切な美桜を守ってくれた虎徹に思いを寄せる。
美桜と話し合い二人で気持ちを伝えた後、ともにアイドル活動に励んでいる。
虎徹以外の男性とは未だに話す気にもならないらしい。
■綾瀬(父)(44)
綾瀬美桜の父親。
アルテミス経営企画部長⇒馘首になり回収員志願⇒アルテミス代表取締役、というジェットコースターのような経歴を経験する。
身の振り方は不器用だが経営者としては有能で、虎徹が投資した買収額の返済も順調に進行中。
虎徹と娘の関係はなんとなく感づいているものの、美桜が自分で選択したことなら口を挟まないと決めている。
出番はなかったが、美桜の母親は健在。
■寺垣(41)
アルテミス経営企画部長。
綾瀬が事務所を追われた後、後任として部長に昇格した。
経営状況の悪化した事務所を守ろうと思い詰めた結果、美桜の提案を採用してしまう。
月城が無責任な善意をひけらかす人物に対し、彼女は責任感が善意を歪めてしまった人間。
現在は綾瀬の下で、誰に恥じるところもない企画営業を務めている。
───────────────
【用語・組織】
───────────────
■探査員
正式名称は特異環境探査士。外界における探査、資源回収、生物調査その他の任務に従事する国家資格保有者の総称。
資格は防衛省が管轄しており、試験に合格することで取得できる。
資格試験の設計には防衛省が保有する特殊部隊等の選抜課程に関する知見が取り入れられており、求められる水準は非常に高い。
日本国内では、原則として有資格者以外が未調査エリアへ立ち入ることは禁止されている。
探査員は国家より認可を受けた企業に所属し、調査依頼、資源の回収、研究者の護衛任務などによって報酬を得る。
所属企業から装備や補給などの支援を受けられる一方、回収資源の権利は所属企業に帰属する。
国家嘱託探査員は探査計画の自由度が高い反面、装備調達や危険負担をすべて自己で負うことになる。
安全上の理由から探査活動は三名以上によるチーム編成が基本とされているが、法令上の義務ではない。
外界生物との接敵を前提とする危険性の高い職業であり、死亡率は著しく高い。特に第一線で活動する探査員は、世界で最も危険な職業の一つとされている。
諸外国でも外界探査を行う人員は存在するが、制度や運用は国家により異なる。
国際的な総称は「
■回収員
探査員によって発見・安全確認された資源採取地点において、継続的な資源回収を担う作業員。
探査員とは異なり国家資格は不要であり、認可企業に雇用され経済産業省の管理下で業務に従事する。外界で働く人員の大半を占める。
探査員同様三人一組を原則として回収活動にあたる。
活動範囲は既知の探査済みエリアに限定されるため、「比較的安全な仕事」とされているが、外界生物との遭遇や遭難事故は後を絶たず、年間死亡率は五%を超える。一般社会では「手っ取り早く稼ぐなら回収員」と勧められることも多いが、その危険性は一般的な危険職種を大きく上回る。
業務内容は資源の採掘・伐採・運搬・保管設備の維持管理など多岐にわたり、長期間にわたって同一地点で作業を続けることも珍しくない。探査員が新たな資源を発見しても、回収員がいなければ外界資源は産業として成立しない。
企業や国家にとっては外界開発を支える基幹労働力である一方、企業や経産省が華々しく宣伝する探査員ほど世間の注目を集めることは少なく、待遇や知名度にも大きな差がある。そのため、「経産の探査員、3Kの回収員」と揶揄されることもある。
探査員と回収員の間に明確な上下関係は存在しない。
しかし、大抵の探査員は回収員を道具と看做している。──国家と企業が影で彼ら自身をそう看做しているように。
■認可企業(外界企業)
経済産業省から認可を受け、外界における探査事業への参入を認められた民間企業。旧財閥系、コングロマリットなどの巨大企業が中心。
外界資源は極めて高い市場価値を持つ一方、探査員・回収員の雇用や研究施設の維持など莫大な運営費を必要とする。また、外界事業による利益には国家財政および外界政策の財源確保を目的とした重税が課されており、高収益事業として知られる一方で経営破綻する企業も存在する。
収益の大半は回収資源そのものの販売よりも、それらを利用した医薬品、新素材、建材など高付加価値製品の開発・製造によって生み出されている。そのため研究・製造部門を併せ持つ大企業ほど利益率は高い。
一方、探査事業は極めて危険性が高く人員の損耗も避けられないことから、多くの企業では探査員や回収員を継続的に補充している。特に優秀な探査員は企業の競争力を左右する存在であり、所属チームのプロモーションや、高額な契約金や各種優遇措置による獲得競争が行われている。
外界事業は日本経済を支える基幹産業となっているが、その莫大な利権を背景に、企業買収、情報工作、政界への働きかけなども後を絶たない。
■防衛省
『扉』および特異環境総合管理施設の警備・管理、外界への立入りに関する安全基準の策定、特異環境探査士の資格制度を所管する。
扉出現直後、政府は外界を国家安全保障上の重大事案と位置付け、自衛隊を中心とした初期調査を実施した。しかし、未知の環境と外界生物によって多数の人的損失を被ったことから、自衛隊による継続的な有人探査は断念された。
その後、外界内での活動に必要な身体能力、判断力および生存技能を認定する国家資格として特異環境探査士制度が導入される。実際の探査業務は資格保有者と民間企業へ段階的に移行したが、外界への立入りそのものは現在も国家の管理下に置かれている。
現在の防衛省は、拠点施設の運営・警備および対外防諜、探査員資格試験、外界生物への対処方針の策定などを担当する。一方、探査区域の産業利用や回収資源の流通については経済産業省が主導しており、外界政策全体に対する政治的な発言力は低下している。
通常、資格を取得した探査員は経済産業省の認可を受けた企業と専属契約を結ぶ。これに対し、企業が危険性や採算性を理由に担当を避けた区域については、国家が個人探査員へ直接任務を委託する場合がある。
企業所属の探査員は自然と経産省寄りの立場となる為、防衛省から任務を受けている静間虎徹に対する自衛隊員の好感度は、なんとなく高い。
■経済産業省
探査事業者(外界企業)の認可、探査区域の割当て、外界資源の回収・流通管理、産業利用および関連企業の育成を所管する。
外界資源の有用性が明らかになると、政府の政策は安全保障を中心とした初期調査から継続的な資源開発と産業振興へ重点を移した。これに伴い、実際の探査事業および回収資源の運用については経済産業省が主導権を握ることとなった。
経済産業省は認可企業へ探査区域を割り当てるシーズン制を整備し、企業所属探査チームによる資源探索を定着させた。発見済みの採取地点についても多数の回収員を配置し、継続的に資源を回収する体制を構築している。
外界資源による新素材、医療、建築その他の産業発展は「第五次産業革命」とも称され、日本に長期的な好景気をもたらした。世界に先駆けて資源回収制度を確立した功績から、経済産業省は外界政策において極めて大きな政治的影響力を有する。
一方、探査認可や区域配分を受ける大企業群との関係は深く、関係政治家への政治献金、官僚の天下り、人事交流を通じた利益誘導を指摘する批判も根強い。
探査員および回収員の不足は恒常的な問題となっており、企業による人材の青田買いに加え、政府主導の広報活動も行われている。探査員を英雄として描く映像作品や報道もその一環であり、外界開発を支える人員を継続的に確保する狙いがある。
防衛省とは、探査員の安全をどこまで優先するか、危険区域をいつ民間へ開放するか、外界を安全保障上の脅威とみなすか経済資源とみなすかといった基本方針を巡り、たびたび対立している。
▼経済産業省「回収管理部」
経済産業省の外界資源管理部門に属する部署。探査済みエリアにおける資源回収事業の運営を担当する。
認可企業が雇用した回収員を管理し、原則三人一組の回収班を編成する。回収地点への配置、作業期間、交代時期などのスケジュールを一元的に管理している。回収対象となる資源の種類、危険度、予定回収量などを考慮し、各企業間の調整を行う。
また、回収地点の危険度評価、作業中止や再開の判断、死亡・負傷事故の集計、回収効率の分析なども所掌しており、外界資源の安定供給を支える実務部門として機能している。
経済産業省が探査員を中心とした広報を展開する一方、同部にとっては回収員の確保こそが切実な課題となっている。
▼経済産業省「特異環境生物対策室」
経済産業省の直轄部署。
防衛省による特異環境探査士制度の創設から間を置かず、外界資源の安定確保を目的として設立された対外界生物専門部隊。
設立当初「資源開発の最大の障害は外界生物であり、これを計画的に排除できれば探査効率は飛躍的に向上する」との構想が提唱された。また、探査員制度と資格試験を所管する防衛省に対抗し、経済産業省独自の実力組織を保有したいという政治的思惑も存在していたと推察される。
現役の探査員、特殊部隊員、傭兵経験者、武術家など国内から約八十名を選抜、六名一組の部隊を編成し、獣討伐作戦を開始した。
実際には獣の脅威は当時の想定を遥かに上回っていた。討伐部隊は一年も経たないうちに壊滅状態となり、多数の戦死者・行方不明者を出して計画は事実上失敗に終わる。
現在も部署自体は廃止されておらず、所属隊員は一名のみ。その唯一の生存者が現在も継続して獣討伐の成果を挙げ続けているため、経済産業省は部署として機能しているとの建前を維持し、正式な解体を見送っている。
外界関係者の間では「大本営発表」「世界最悪のワンオペ」などと揶揄される一方、組織ではなく一人の怪物によって存続している部署だとも称されている。
■外界生物(獣)について
────────────────────
特異環境生物分類基準(第8版)
────────────────────
・序文
本資料は、現時点で得られている特異環境生物(※以下、外界生物と記載)に関する知見を基に、探査活動における個体識別、危険度評価および情報共有の統一を目的として編纂したものである。
外界生物は、その形態、生態ともに未解明な点が多く、現在も新たな知見が継続的に報告されている。本分類基準は、これまでに蓄積された観察記録、解剖資料および交戦実績を基礎として策定したものであり、今後の研究成果に応じて随時改訂される。
・外界生物分類基準(暫定)
外界生物は形態、生態ともに多様性が著しく、既知生物との系統学的関連性も確認されていない。このため、防衛省特異環境生物研究部会では、生物学的分類とは別に、探査現場における個体識別および危険度評価を目的とした暫定分類基準を採用している。
現在までに回収または観察された全個体には、例外なく左右対称に配置された単眼状感覚器官が認められる。解剖の結果、当該器官は中枢神経系と直接接続していることが確認されており、主要な感覚器官であると推定されている。
また、同一形態群では成長段階や個体差による単眼数の変化は認められておらず、単眼対数は種ごとに一定であることが判明している。現時点では、外部から判別可能かつ再現性の高い形態指標は単眼対数のみであることから、本分類はこれを基準としている。
十五年間にわたり蓄積された交戦記録および解剖資料の解析では、単眼対数の減少に伴い個体脅威度が増大する傾向が確認されている。
具体的には、単眼対数が少ない個体ほど、身体強度、運動性能、感知能力および戦闘継続能力の各項目において高い値を示す傾向が認められる。
この相関が生じる生理学的要因は現在も解明されていない。感覚器官の統合による情報処理能力の向上を要因とする仮説も提唱されているが、現時点でこれを支持する十分な知見は得られていない。
以上を踏まえ、外界生物は単眼対数に基づき以下の五段階に区分される。
・第五種
単眼五対(計十眼)以上を有する個体群。
確認されている外界生物の中では比較的脅威度が低い。十分な装備および経験を有する探査員であれば単独での交戦が可能とされる。
・第四種
単眼四対(計八眼)を有する個体群。
標準的な三名編成の探査チームが、人的被害を前提として駆除可能と評価される。
・第三種
単眼三対(計六眼)を有する個体群。
標準探査チームによる安定した駆除は困難であり、遭遇時は任務を中断し、撤退を最優先とすることが推奨される。討伐事例は存在するものの、その多くが複数名の死傷を伴っている。
・第二種
単眼二対(計四眼)を有する個体群。
国内における確認例は極めて少なく、ほぼ全てが広範囲を移動する徘徊型である。通常の探査部隊による対処能力を著しく超えるものと評価されており、遭遇時は即時離脱を原則とする。
これまでに国内で駆除が確認された第二種個体は一体のみであり、当該事例は特殊条件下で達成されたものとして、一般的な戦術事例には含まれていない。
・第一種
単眼一対(計二眼)を有する個体群。
現在まで存在を裏付ける遺骸、組織標本その他の物的証拠は確認されていない。極少数の目撃証言は存在するものの、いずれも客観的検証には至っておらず、分類上は仮説的区分として維持されている。
※注釈
本分類は、生物学的系統を示す分類体系ではなく、外部形態および交戦実績を基礎として危険度を段階的に区分した行政上・運用上の分類である。
各種別は個体の戦闘能力を一律に保証するものではなく、形態群、成長段階、活動環境その他の要因により脅威度は大きく変動する。現場においては、本分類を危険度判断の指標の一つとして用い、個別の状況に応じた対応を行うものとする。