の【日の丸の国史上最悪の猟奇殺人事件がきっかけで始まった物語】 作:桃色ぴんく
教訓は、第1話のあとがきに書きました。
7月7日午後0時
これは松島県根ノ江市で実際に起こった出来事。
ピンクのセーラーワンピを着た28歳の女の子が、ニコニコしながら歩いていた。名前は桃松ゆう。
「ランチ♪ランチ〜♪彦星様に♪会えるかなっ♪」
ゆうちゃんは、ピンクのシュシュで耳の真ん中あたりを結んだ黒髪ツインテールを揺らし、お気に入りのピンクのリボン付きバッグを振り回しながら歌っていた。
「ん?あれは何だ?こんなに甘くて柔らかそうな『桃』は見たことがない!おいしそうだ……」
信号待ちをしていたゆうちゃんの横に漆黒のSUVが止まった。
窓が開くと、そこには見たことないようなイケメンの33歳の男がいた。少しワックスをかけた短めのミディアムヘアがよく似合う。
「こんにちは。根ノ江駅に行くの?もしそうなら車で送るよ。僕もこれからランチなんだ。可愛い織姫様の名前を教えて」
その声は情熱のオレンジと妖しい魅力の紫の黄金比。明るい色気と包み込むような甘さが混ざった低い声だった。
「はい!ありがとうございます!あたしは桃松ゆうです!」
ゆうちゃんは男を彦星様だと思い、無邪気な桃色の高い声で答えた。
「ゆう、彦星様のお迎えだよ。さあおいで」
ゆうちゃんは七夕の魔法に抗えず助手席に座った。
車内は冷房が効き、男の声は密室に響き渡っていた。
「ゆう、本当に可愛い織姫様だ。ちょっと失礼」
信号待ち中、男はゆうちゃんの首筋に鼻を寄せ、その香りを深く吸い込んだ。
「たまらないね、この匂い。ゆう、僕と素敵な七夕を楽しまないか? 」
「うん……」
ゆうちゃんは漆黒のSUVが根ノ江駅から遠ざかっているのに気づかず、身も心も溶かされていた。
午後1時30分
2人は深い森に隠されたゴシック調の洋館に入った。
寝室で男はゆうちゃんを優しく抱き寄せ、耳元で愛を囁き続けていた。
「ゆう、愛してるよ。全て僕のものにしたい」
男はゆうちゃんの唇、耳、指先などに甘いキスをしながら、気づかぬうちに身につけていたものを全て剥ぎ取った。
そして、ゆうちゃんの両手首をシルクの紐で固定した。
「え、これ何?」
ゆうちゃんの目はトロンとしていた。
「ん?最高の織姫様にするための準備だよ。」
男はニヤリと笑って答え、程よく肉付いたゆうちゃんの身体を隅々までゆっくりと舌を這わせた。
「んやっ……ひゃうぅ……あうっ!」
ゆうちゃんは今までにない感覚に襲われ、砂糖よりもずっと甘い声で『鳴き』続けていた。
ランチのことなどすっかり忘れたゆうちゃんは、為す術もなく乙女の純潔を奪われてしまった。
気づけば午後5時
ゆうちゃんのお母さんから、
今どこ?
とゆうちゃんのスマホにメッセージが届いた。
男はゆうちゃんの喉元に優しく口づけをし、低くて優しい声で囁いた。
「ごちそうさま。愛してるよ、ゆう」
「彦星様、あたしも愛してる」
ゆうちゃんは高くて甘い声で返したが……
「ああ。ゆうは最高の織姫様だ。ジュル……。さあ!僕のバースデープレートになるんだ!」
最高級の牛刀を手に取った男は残忍な魔王の顔になり、その声は黒く染まった重低音に変わってしまった!
「イヤ!痛い、痛い!あああああああ!!きゃああああああああああああ!!!」
ゆうちゃんの悲鳴は豪華な洋館の壁に吸い込まれた。
午後5時30分頃だろうか。
「ふふ……あっはははは!」
午後9時30分
天の川が美しく輝いていた。
男のテーブルには『最高級』のバースデープレートが美しく盛り付けられていた。
ホワイトシチューには胸、お腹、太ももの肉、フライには両手の指、スープには小腸、パフェには左目と血液が使われていた。
「いただきます。ジュル。ああ!桃松ゆうは最高の食べ物だ!こんなにおいしいお姫様を食べられて幸せだ!」
男はスープを一口飲んで今までにないくらい喜んでいた。
その頃、仕事を終えてとっくに家に着いたゆうちゃんのお母さんはまだ帰ってこない娘を心配しながら待ち続けていた。
ゆうちゃんが偽物の彦星様を信じた世界一可哀想な織姫様になってしまったことを知らずに……
知らない人の車に乗ったらダメだよ。
でも、乗ってしまった被害者を責めるのもダメ!
悪いのは全部乗せようとした加害者だから!
これが伝えたかった教訓です。
元々1話完結にする予定でしたが、知らない人の車は怖い乗り物だって分かりやすくするために、第2話以降でゆうちゃんの死を悲しんだりする人や、SNSによる生々しい二次加害の恐怖、男のさらなる凶行、そして!変わり果てていく日の丸の国なども書くことにしました。
ゆうちゃんは第2話以降は一切登場しません(名前のみの登場です)が、あくまで、主人公はゆうちゃんのままです。
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