の【日の丸の国史上最悪の猟奇殺人事件がきっかけで始まった物語】 作:桃色ぴんく
後半には肉体的グロはありませんが、心の準備をお願いします。
ただし、これらの行為を肯定・助長する意図はありませんのでご安心ください。
7月12日午前2時10分
「嘘だ……」
ゆうちゃんの部屋に入った藤田さん、浅川さん、そして下田さんたちは、無情にもその場に崩れ落ちてしまった。
全身傷だらけで内臓が飛び出した無様な33歳の男の死体と、心臓に包丁が突き刺さった世界一可哀想な58歳の女性の遺体が、ゆうちゃんのベッドの上でクロスしていた。
ゆうちゃんのおもちゃ箱の上に置かれた『桃』と『宝石』が、4人をさらに絶望の淵へと叩き落としたのだ。
「あいつ……!ゆうさんのお母さんを殺して自殺したのか……?!」
怒り狂った1人目の下田さんは、残酷な真実にまだ気づいていないようだ。
「きっとそうだ……。ゆうさんのお母さんに1円も渡さないために……!」
藍斗の最低な目的だけに気づいた2人目の下田さんは、右の拳で何度も床に叩きつけた。
「あ……あああああああああ……!ああああああああああ!!!」
藤田さんに至っては、真っ赤な床に突っ伏して泣き叫ぶことしかできなかった。
「大丈夫か……?あ……とりあえず報告しないと……」
浅川さんは、拝郷さんと風雅さんに電話をかけることにした。
プルルルルル
「……ん?もしもし……?」
「は、拝郷さん……。あいつ……ゆうさんの家で死んでいました……。ゆうさんのお母さんに……全財産を奪われないために……!」
「え?!ちょっと待って!ゆうさんのお母さんは無事なの?!」
「いえ……亡くなっていました……」
「そんな……!」
「あ、もしもし?風雅だけど……。今の話……全部本当なのか?」
「はい……」
「そうか……分かった。今行くからもう少し待ってて」
「ありがとうございます……!」
浅川さんは電話を切った。
「ゆうさん……」
1人目の下田さんは、藍斗の左手首に巻き付けられていた本来のピンク色を『失った』ゆうちゃんの真っ赤なリボンを解き、ゆうちゃんの真っ赤なシュシュを1つずつゆっくりと外した。
「悪魔にボロボロにされて、可哀想に……」
2人目の下田さんは、ピンクを『失った』ゆうちゃんのセーラーワンピを藍斗とベッドの間から引き抜いた。
「すみません……。ちょっとトイレ行ってきます……」
藤田さんは、あまりの惨状に耐え切れず、とうとうゆうちゃんの部屋を抜け出してしまった。
「おや……?」
浅川さんは、真っ赤なローファーと真っ赤なリボン付きフリフリ靴下が、ベッドから落ちていたことに気づいた。
2つとも、ゆうちゃんがあの日履いていたもので、本来のピンクを『失って』いた。
リボン付きフリフリ靴下に至っては、リボン以外の部分の白も『失った』のだ。
午前2時20分
涼介さんが、白の軽自動車をゆうちゃんの家の前に停めた。
「ここが桃松さんの家か。あれ?副店長、まだ起きているのかな?ダメ元で謝りに行こうかな……え?なんでパトカーがあるの……?それに、あれはもしかして純白のSUV……?まさか……!」
カサブランカの花束を抱えた涼介さんは、『特急案件』と言いたげな足取りで軽自動車を降りた。
ピンポーン
涼介さんは、無意識に右手の人差し指で、ゆうちゃんの家の玄関チャイムを押していた。
「はーい……あれ?あなたは、もしかして……ゆうさんの彼氏さん……ですか……?」
完全に勘違いした藤田さんは、インターホン越しに涼介さんに話しかけた。
「違います!桃松さんのお母さんの部下です!どうしても伝えたいことがありまして……!もしかして、警察の方ですか?」
涼介さんは、やや取り乱しながらそう返した。
カサブランカの花束もゆらゆらと揺れていたのだ。
「はい、根ノ江警察署の藤田と申します……。ですが……あの……ゆうさんのお母さんは……もう……」
藤田さんの声を聞いた涼介さんは、カサブランカの花束をその場に落として崩れ落ちてしまった。
「あああああああああああああ!!!」
カサブランカの花弁だけでなく、ゆうちゃんの家の玄関前のコンクリートまで濡れてしまったのは言うまでもない。
ガチャ
藤田さんは、ゆっくりとドアを開けた。
「あ……お辛いですよね……。お話だけでも聞きましょうか……?」
藤田さんの声はかなり震えていた。
涼介さんは、身体を小刻みに震わせながらカサブランカの花束を拾った。
「お願いです……僕を逮捕してください……」
涼介さんの心の叫びを聞いた藤田さんは、即座に首を左右に振った。
「それはできません。あなたは、その花束を持って、ゆうさんのお母さんに何か伝えたかっただけですよね?」
きっぱり断る藤田さんの声は、決して冷たいものではなかった。
だが、それがかえって涼介さんの心の傷をさらに抉ってしまうのだ。
「だったらその拳銃で撃ってください!それが無理なら、最後に副店長に会わせてください!」
完全に精神崩壊した涼介さんは、両手の拳を玄関前のコンクリートに何度も叩きつけた。
そこに、藤田さんを心配した浅川さんが駆けつけてきた。
「藤田くん、大丈夫か?!……って、どうした?!」
浅川さんは、完全に取り乱した涼介さんとカチコチに固まった藤田さんを見て、思わず後ずさりしてしまった。
「ああああああああああ!神様、僕を地獄へと突き落としてくれ!僕は副店長と桃松さんだけじゃなく、蒼森さんも傷つけた!本当に醜い怪物なんだ!」