の【日の丸の国史上最悪の猟奇殺人事件がきっかけで始まった物語】 作:桃色ぴんく
7月12日午前10時
青木さんと茶山さんは、今日もおひさまモールの中を歩いていた。
2人の表情は、昨日以上に先月の雨雲そのものだ。
「どうして……!どうして桃松さんが殺されて……!食べられなきゃいけないんですか?!」
青木さんは、質問するべき相手が誰か完全に分からなくなっていた。
その証拠に、茶山さんの腕を何度も真っ赤になるまで叩いていたのだ。
「うう……そんなの私だって知りたいわ……。桃松さんはいつもニコニコしていて、誰にでも優しい子なのに……」
茶山さんは静かに涙を流していた。決して、青木さんに叩かれて痛かったからではない。
午前10時30分
「茶山さん、すみません……私としたことが……。とりあえず行きましょう……」
「大丈夫よ、青木さん……。そうね……桃松さんはもちろん、青山くんの分まで精一杯生きなきゃだわ……」
こうして、青木さんと茶山さんは、ゆうちゃんが大好きだったにこにこランドへと向かった。
一方その頃、サニーランドでは……
金森さんと白谷さんは、1階の休憩スペースにいた。
2人ともここで買い物をするつもりは全くなかったのだが、かといって家にずっといることにも耐えられなかった。
「白谷さん……。こんなに残酷な事件……今まであったかしら?」
金森さんは白谷さんの顔をじっと見つめた。スマホを持った右手と声の震えが全然止まらなかった。
「そんなのないに決まってるわよ……。あ……金森さん。悪いけどしばらくひとりにしないで……。もう辛いの……!」
白谷さんは声と同じくらい震える右手でスマホを見せた。
そこに映っていたSNSの投稿には、
【速報】
根ノ江川で見つかった女性の遺体
青山めぐみさん 45歳と断定
と書かれていた。
「いや……っ!あ、いやああああああああああああ!!!」
何もかもに耐えられなくなった金森さんは、スマホを持ちながら白谷さんに抱きついてしまった。
「だ、大丈夫……なわけないわよね……!そうよね……?」
白谷さんは金森さんの背中を左手で優しく撫でた。
金森さんのスマホに映っていたSNSの投稿には、
【悲報】
A様がお亡くなりに……!
ゆうちゃんはAをハメたクソ女なのか?!
と書かれていたのだ。
「こんなの絶対おかしいわよ……!」
2人とも同じことを思っていた。
一方その頃……
「な……何……これ……?」
日の丸コンビニに向かうはずだった赤竹さんは、うさぎマーケットの自動ドアの近くにいた。
正確に言うと、最悪な光景が勝手に足を止めてしまったからだ。
うさぎマーケットの自動ドア前には、ボロボロになったピンクのセーラーワンピが大量に捨てられていた。
さらに、入口には黒田さんが見たような無数の貼り紙が貼ってあったのだ。
「……っ!」
速まる鼓動を抑えられない赤竹さんは、昨日の午後5時30分以降あえて見ないようにしていた例のSNSを開いた。
そこには、
前言撤回!ゆうちゃんの冥福なんか誰も祈らねえよw
A様……どうか安らかに……
よく見たらゆうちゃんブスじゃね?
ゆうちゃんって28歳だよね?その格好は普通に痛いってwwwwww
Aが犯人?!嘘って言って!絶対ゆうちゃんが洗脳してるって!!
Aはこんなクソ女にも追悼曲を投稿していたんだよ?!犯人なわけない!
などと本当に最低なコメントばかり書かれていた……
「どうして馬鹿しかいないのよ!!!桃松さんはクソ女なんかじゃない!なんの罪もないわ!!!」
赤竹さんは、ついに自分のスマホをうさぎマーケットの自動ドアに投げつけてしまった。
「まずはくだらない紙を外さないと……」
赤竹さんが外そうとしている貼り紙には、
A様をハメたクソ女の職場だよ〜☆
ゆうちゃんが食べられたのってAを怒らせたからじゃないの?
ゆうちゃん?Aを凶悪犯に仕立てて楽しかったー?やばwwwwww
要らなくなったセーラーワンピはここに捨ててね〜♪
など、本当によくわからんことばかり書かれていたのだ……
午前11時
赤竹さんは全ての貼り紙を外し終えた。
「疲れたわ……。これからどんな顔をしたらいいのよ……」
そして、画面にヒビが入ったスマホを拾い、Star Movieを開いた。
その後、右手の人差し指でAの新曲の評価をGOODからBADにサッと変えた。