の【日の丸の国史上最悪の猟奇殺人事件がきっかけで始まった物語】 作:桃色ぴんく
7月12日午後0時40分
次のニュースは〜♪
どうしてAはゆうさんを食べたのか?!
Aの自宅で見つかった黒いノート、今から大公開〜♪
全部読むと長いから、最初だけ読むね♪
7月7日、今日は33歳の誕生日
僕は、久しぶりに愛車で日の丸百貨店に行こうとしてたんだ。
普段は外商を呼んでいるからね。
メインディッシュは、最高級の和牛にしようか、最高級のロブスターにしようか……と迷っていたら、たまたま目に入ったんだ。
甘くて柔らかそうな『桃』が……ね♪
その食材こそ、個体識別番号1218の桃松ゆうだったんだ♪
ピンクのセーラーワンピと黒髪ツインテール、ニコニコした顔、無邪気な少女のような歌声。
これらが僕の食欲を刺激しちゃったね、お馬鹿なお姫様♪
バースデープレートの材料にして大正解だったよ♪
キャー!マジ怖すぎー!
次のニュースは、ピンクのシュシュポイ捨て問題〜♪
孝行さんはテレビの前で目を覚ました。
午前9時45分の速報で、ゆうちゃんのお母さんの死を知ったショックと、藍斗がAだと知った絶望で気絶していたのだ。
「あれ?もうこんな時間……?あ、テレビつけっぱなしだったな……」
テレビを消した孝行さんは、右手で頭を押さえながらキッチンへと向かった。
熱があるわけではないのだが、ズキズキと謎の頭痛がしたのだ。
一方その頃、おひさまファッションビルの1階にある休憩スペースでは……
オレンジの長いベンチに座っていた智和さんと健二さんは、まだ親友の死を受け入れられなかった。
午前9時45分の速報、いや、正確に言うと、その15分前の残酷なニュースが、2人の心を深く傷つけてしまったのだ。
「健二……。どうして涼介は僕らを置いていっちゃったんだよ……」
「知らねえよ。俺は涼介じゃねえから……。智和も大事な親友だけど、涼介もいねえと意味ねえよ……」
2人は涙を流しながら抱き合った。
「あ……」
たまたま近くを歩いていた涼太さんは、智和さんと健二さんに声をかけようとした。
「その……大丈夫……?じゃないね……」
だが、涙ぐむ2人に何も言えず、そのままその場を立ち去ってしまった。
午後1時
智和さんと健二さんは、少しでも前を向いて生きようと、立ち上がってTwinkle Starに向かおうとしたのだが……
「もしかして涼介……!僕がイチゴ味のかき氷の上に乗せられた桃松さんのファンアート描いたこと……本当は怒ってたのか?だから、同窓会終わった後、一緒に帰ろうとしなかったんじゃ……!」
「それは関係ねえよ!涼介はお前の絵が好きだから!俺なんかSEXY SUNNYで桃松をオカズにしてたし……涼介の上司にも最低なことしちまったよ!それに……。日の丸ラジオにAの歌リクエストしちまったからさ!」
2人とも公共の場であることを忘れて、大声を上げてお互いの胸ぐらをつかみ始めた。
日曜日ゆえに、休憩スペースはたくさんの人で埋め尽くされていた。
だが、涼介さんやゆうちゃんのお母さんよりも、Aの死を悲しむ人の方がずっと多かったのだ。
一方その頃、Twinkle Starでは……
「お待たせしました!星のエビフライランチです!」
「お待たせしました!星のナポリタンランチです!」
夏菜子さんとまちこさんは、汗だくでお客さんに料理を届けていた。
日曜日ということもあり、異常に忙しかったのだ。
死んだ藍斗がAだったこと、かつてのクラスメイトだった涼介さんが亡くなったこと、そしてゆうちゃんのお母さんも亡くなったことを嘆き悲しむ暇がなかったのが、ある意味救いだった。
「まちこ!2番テーブルのお客さんよろしく!」
「分かった!夏菜子も頑張れ!」
2人とも大急ぎで注文を取りに向かった。
「お待たせしました!ってあれ?!土岐さんに楠木さん?」
2番テーブルにいたのは、子供をおひさま託児所に預けた翔子さんと、自分のお母さんに預けたみなみさんだった。
2人ともTwinkle Starという店名のイメージとは思いっきりかけ離れた表情をしていたのだ。
「あ、まちこちゃん……星のハンバーグランチ2つ……」
翔子さんの目は、完全に『光』を失っていた。
「ごめんね。ニュースもそうだけど、SNSのせいでメンタルやられちゃって……」
みなみさんは、ある投稿に心を痛めていた。
「あ……星のハンバーグランチ2つね。分かった……」
注文を取ったまちこさんは、目を潤ませながら、重い足を引きずるようにキッチンへと向かった。