※この作品はR-18です。

の【日の丸の国史上最悪の猟奇殺人事件がきっかけで始まった物語】   作:桃色ぴんく

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中盤に、流血表現ありの過激な自傷をするシーン(刃物は使っていません)が含まれています。

自傷行為を肯定・助長する意図はありませんのでご安心ください。


第111話

7月12日午後2時30分

 

金森さんと白谷さんはくまさんのおうちにいた。

 

店内が、3日前よりずっと多くのお客さんで埋め尽くされていたのは言うまでもない。

 

「白谷さん。そういえば日曜日だったわね……」

 

「やだ、金森さんったら。曜日感覚なくなっちゃったの……?」

 

金森さんと白谷さんは死んだ目で行列を見つめていた。

 

Aにそっくりな格好の男性たちはたくさんいたのだが、なりきり桃松ゆうちゃんは1人もいなかったのだ。

 

「あれ?金森さんに白谷さん……偶然ですね……」

 

そこに、茜ちゃんをベビーカーに乗せた黄ノ山さんがやって来た。

 

「そうね。やっぱりここに来ちゃうわよね……」

 

金森さんと白谷さんは、2人同時にそう言った。

 

「ですね……。ここの焼き菓子、大好きなので……」

 

黄ノ山さんは、ベビーカーの持ち手を大粒の涙で濡らしてしまった。

 

「茜ちゃん……ママ、もうしんどいな……」

 

黄ノ山さんは、茜ちゃんの目を見ながら力のない声で呟いた。

 

「バブバブ、アーウー♪」

 

それに対し、茜ちゃんは相変わらずニコニコしながらおしゃべりしていたのだ。

 

3人の大人たちは、もう3日前と同じように笑うことはできなかった。

 

一方その頃、藍谷さんの自宅では……

 

「酷いよ……!こんなのあんまりだよ……!」

 

藍谷さんはベッドの上で枕を濡らしていた。

 

今朝見てしまった遺体もそうだが、気晴らしに聞いていた音楽までも『凶器』になってしまったのだ。

 

「クーン……」

 

チョコは呆然とした様子で藍谷さんを見つめていた。今朝と違って、しっぽがだらりと垂れ下がっていたのだ。

 

「ああどうして……あたし……は……桃松……さん……を……守れ……っ。ああ……ああああ……!」

 

昨日までゆうちゃんもAも大好きだった藍谷さんは、藍色の目覚まし時計を手に取った。

 

「いやあああああああああ!!!」

 

そして、目覚まし時計を何度もおでこに強く叩きつけ始めた。

 

「ワン!ワンワン!」

 

チョコの必死の叫びも虚しく、藍谷さんの行動はさらにエスカレートした。

 

「あああああああああ!!!」

 

藍谷さんはスマホを床に投げつけ、とうとう頭を壁に強く叩きつけた。

 

真っ白な壁は、少しずつ真っ赤に染まってしまったのだ。

 

一方その頃、おひさまモールの1階では……

 

「ごちそうさま……」

 

30分前からイートインスペースにいた赤森さんは、やっと昆布おにぎりと梅おにぎりを食べ終えた。

 

おにぎりだけに集中するつもりが、どうしても右手が勝手にスマホへ伸びてしまっていたのだ。

 

「俺……また彩音の前で泣いてしまったな……」

 

赤森さんはもう見たくないはずの例のSNSを開いた。

 

そこには、

 

 

ゆうちゃんは日の丸の国史上最悪の女!Aを奪ったクソ女!

 

ゆうちゃんの歌声は悪魔の声か?!一体何をした?!

 

ゆうちゃんをバースデープレートにしたいなんてAが本気で言うわけない!

 

唯一無二の美声かつ国宝級イケメンのA様が……こんなの許せない!

 

 

などといった本当によくわからんコメントばかり書かれていたのだ。

 

「違うのに……違うのに……!」

 

涙目の赤森さんは、小刻みに震える人差し指で画面をスクロールし続けた。

 

だが、どれだけスクロールしてもゆうちゃんを凶悪犯罪者だと言わんばかりのコメントしかなかったのだ。

 

「ああどうして……人間は……神聖な天使を傷つけるの……」

 

赤森さんはAを憎みたくても憎むことができなかった。

 

Aは5オクターブもの音域の持ち主だったうえに、性別こそ違えどセイレーンのような美声だったからだ。

 

さらに、オリジナル曲の作詞作曲のセンスも誰よりも素晴らしいと大絶賛されていたのだ。

 

「桃松さん……ごめん……」

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