の【日の丸の国史上最悪の猟奇殺人事件がきっかけで始まった物語】 作:桃色ぴんく
7月12日午後3時
黒田さん、赤竹さん、茶山さん、青木さん、そして緑ヶ丘さんは、うさぎマーケットの休憩室にいた。
テーブルの近くには、ボロボロのピンクのセーラーワンピが入ったゴミ袋が10個も置かれていたのだ。
当然、今朝の最悪な速報のせいで誰もテレビをつけなかったのは、もはや説明するまでもない。
「みんなありがとう。疲れたよね……」
疲れきった表情の黒田さんは、うさぎマーケットの店内から持ってきた緑茶をテーブルに5本置いた。
「疲れましたよ……あ、お茶ありがとうございます」
赤竹さんは、赤いハイビスカス柄のハンカチで汗を拭いた。
「こんなに可愛いお洋服をボロボロにするなんて……信じられませんよね……」
茶山さんは両手で顔を覆った。
「桃松さんをいじめるのを楽しんでいるようにしか見えませんよね!」
青木さんは、思わずテーブルを両拳で殴ってしまった。
「全く。人間ってこんなにも残酷になれるんですね……」
緑ヶ丘さんは呆れていた。
「あ、緊急朝礼……じゃないね。緊急昼礼。本当は、金森さん、白谷さん、黄ノ山さん、赤森くん、藍谷さんもいる時に話すべきことなのかもしれないけど……」
黒田さんは、組んだ両手の上に顎を乗せたまま俯いた。
「え……何ですか?」
赤竹さんたち4人の声はかなり震えていた。
「……っ!うっ、うう……ごめん……」
黒田さんは、大粒の涙を流しながらゆっくりと土下座し始めたのだ。
「ちょっと店長!いきなり土下座しないでください!困ります!」
ガン!
動揺した赤竹さんは、立ち上がった途端、両膝をテーブルにぶつけてしまった。
「あら……大丈夫ですか……?」
茶山さんは心配そうに赤竹さんを見つめた。
「あの、保冷剤いりますか……?」
青木さんは、休憩室にある小さな冷蔵庫を見つめていた。
「副店長、それ……絶対大丈夫じゃないやつですよね……?あ、店長。一体どうしましたか……?」
緑ヶ丘さんは赤竹さんのケガに戸惑いつつも、黒田さんの土下座の理由が気になって仕方がなかった。
黒田さんは、ゆっくり起き上がると、テーブルにあったスマホをそっと手に取ってこう言った。
「……うさぎマーケットは今日をもって閉店にする。この状況で再開しても、桃松さんに対する野次馬のせいでお客様に迷惑かけるから……」
スマホを持つ黒田さんの両手が小刻みに震えていた。
「何より、桃松さんも青山くんも失った今、僕はもう耐えられないんだ!ごめん!」
黒田さんは、とうとうスマホを床に叩きつけ始めたのだ。
赤竹さんたち4人は、取り乱した黒田さんを前に何も言えず、休憩室のゴミ箱のようにカチコチに固まっていた。
「本当にごめん……許して……。金森さん、白谷さん、黄ノ山さん、赤森くん、藍谷さんにも後で伝えるから……」
一方その頃……
亜李さんの金色の小型車が、アイスクリームワールドの目の前に停まった。
「美由利のアイスなら、2人とも喜ぶはず。あ、ウチの分も久しぶりに買おうかな……。えっ……?」
だが、茶色のドアには、本来この時間にはあるはずのない
本日の営業は終了しました
と書かれた貼り紙がどこか悲しげに貼られていた。
「マジか……日曜日だしめちゃくちゃ暑かったから午前中に売り切れたのかな?ショック……」
亜李さんは、その場を立ち去って車に戻った。
ハンドルを握る手は、汗でぐっしょりと濡れていたのだ。
「そういえば、みうと大輝に電話したっけ……?」
午後3時10分
アイスクリームワールドの裏口の合鍵を持った孝行さんが、ゆっくりとドアの鍵を開けた。
だが、美由利さんの姿はなく、冷凍庫のすぐ近くの床には、美由利さんのスマホがひとりぼっちでポツンと置かれていたのだ。
「あれ?なんでこんなところに……?ていうか、閉店するならまず僕に言ってよ……。ストック分を誠人たちに分けたりできるのに……」
スマホを拾った孝行さんは、心のモヤモヤを抱えながら冷凍庫をゆっくりと開けた。
ガチャ
「……っ!!!」
冷凍庫の中に入っていたのは、これから使う予定だったアイスのストックだけではなかった。
「美由利!どうしてここにいるの?!ねえ!」
身体を丸めた美由利さんは、安らかな笑みを浮かべ、ドライアイスのように冷たくなっていたのだ。
孝行さんが呼びかけても、もう何も返事をしなかったのは言うまでもない。
「あ……あ……!!!」