の【日の丸の国史上最悪の猟奇殺人事件がきっかけで始まった物語】 作:桃色ぴんく
7月12日午後3時50分
百乃さんと裕香さんがアイスクリームワールドに着いた。
ドンドンドン!
「美由利ちゃん!いる?!いるならドア開けて!お願い!」
2人とも大声で叫びながらドアをノックした。それも、1回2回どころではない。
午後4時
当然、美由利さんがドアを開けて出てくることはなかった。
百乃さんと裕香さんの手は、ストロベリーアイスに添えられたイチゴの果肉のように赤くなっていたのだ。
「ねえ……これだけノックしても気づかないのはおかしいよ。私、もう1回電話してみる」
百乃さんは、右手でスマホを取りだし、もう美由利さんには繋がらない電話をかけた。
「そうだね。もし繋がらなかったら、あたしが警察に通報しとく」
裕香さんは、百乃さんに優しく声をかけながら、百乃さんの左手をそっと握った。
プルルルルルルルル
一方その頃、遥さんの自宅では……
「遥、このままでいさせて……」
涙目の誠人さんは、ベッドの上で1時間近く前から遥さんを力強く抱き締めていた。
「私のこと嫌いになったの?ねえ。そうじゃないなら早く返して……」
遥さんはまだ腕を振り払おうとしていたが、できるわけがなかった。
午後3時に、誠人さんは、遥さんのハサミとカッターナイフを遥さんの手の届かない場所へと移していたのだ。
「まだ言ってるの?好きだから返さないんだよ。遥を殺す道具なんか捨てるに決まってるよ……!」
誠人さんは、遥さんを抱き締める力をさらに強めた。
「だったら私のスマホ取らせて……。亜李と話したい……」
遥さんの潤んだ目と震えた声が、誠人さんの腕を緩めた。
「それならいいよ。その代わり、僕の膝の上でやって」
誠人さんは静かな声で応じた。
スマホを手に取った遥さんは、早速亜李さんに
ごめんね、亜李。
ゆうちゃんを食べたの……Aだった。それに、ゆうちゃんのお母さんと伊東さんも死んじゃって悲しい。
とメッセージを送った。
さらに、
私のこと、嫌いになったよね。ゆうちゃんとみうさんに意地悪なことしちゃったから……。
と追加で送った。
次に会う時、私はお星様
まで、小刻みに震える人差し指で打った瞬間、誠人さんにいきなりスマホを取り上げられた。
「そういうのは書かないで!亜李ちゃんのこと考えてよ!」
誠人さんは、思わず声を荒らげて、遥さんの右のほっぺを勢いよく叩いてしまった。
「なんで……!酷いよ……!痛いよ……!」
遥さんは、右手でほっぺを押さえて泣き崩れた。
あえて何も聞こえないフリをした誠人さんは、黙って遥さんのスマホを操作した。
プルルルルルルルル
「遥!今度こそ遥だよね?!」
亜李さんの声を聞いた誠人さんは、遥さんにそっとスマホを返した。
「あ、亜李!あ……ああああ……!」
「は、遥……!メッセージさっき見たよ。ウチが遥のこと本気で嫌いになったと思ってたの?だからあんなに……」
「うん……。Aの曲……神とか言ったから……」
「アンタ馬鹿なの?!ウチが嫌いになったのはAに決まってんじゃん!それに、誠人がどんな思いで指輪買ったか分かってんの?!ねえ!」
その時、遥さんは左手の薬指をじっと見つめた。
気づけば、小さな透明の雫が真っ白な真珠の上に落ちてしまったのだ。
「あ……あああああっ……!ゆうちゃんの分まで生きるから……ずっと親友でいて……」
「当たり前じゃん……。遥に嫌われるくらいならAに食べられた方がずっといいよ……。誠人だって絶対そう思ってるよ。あ、続きは後でゆっくり話そう」
亜李さんは優しい声で電話を切った。
「ね?亜李ちゃんも同じこと考えてたでしょ」
誠人さんは、優しい眼差しで遥さんを見つめ、そっと遥さんを抱き締めた。