の【日の丸の国史上最悪の猟奇殺人事件がきっかけで始まった物語】 作:桃色ぴんく
7月12日午後4時
黒田さん、赤竹さん、茶山さん、金森さん、白谷さん、青木さん、緑ヶ丘さん、赤森さん、茜ちゃんを抱いた黄ノ山さん、そしてチョコを抱いた藍谷さんは、うさぎマーケットの休憩室にいた。
黒田さんは、金森さん、白谷さん、黄ノ山さんを、赤竹さんは、赤森さん、藍谷さんをそれぞれ電話で呼び出したのだ。
黒田さんは改まった様子でゆっくりと口を開いた。
「みんな、日曜日の暑い中ここに来てくれてありがとう」
休憩室は、まるで上映前のプラネタリウムのような静寂に包まれていた。
「何人かにはもう伝えたけど……。今日で閉店することにした……」
赤竹さんたち9人の大人が、その場に崩れ落ちた黒田さんの元に駆け寄った。
1人の赤ちゃんと1匹の犬でさえ、何かを察したのか、黒田さんの潤んだ目をじっと見つめていたのだ。
黒田さんの部下たちは、目に涙を浮かべながら、言葉にならない声を上げ続けていた。
「本当にごめん……。何のお詫びにもならないかもだけど、今から日の丸百貨店にみんなを連れて行きたいんだ。お金は僕のカードで払うから……」
黒田さんは涙目でそう言った。
うさぎマーケットの閉店のお知らせは、藍谷さんのおでこと頭の傷に気づく余裕を奪ってしまったのだ。
午後4時10分
みうさんは、2時間前に見てしまったSNSのトレンド通知に深く傷つけられていた。
それは、
【悲報】
桃松ゆうちゃんの家で大人気歌い手のA様がお亡くなりに!
ゆうちゃんのお母さんとその部下も死んでたってさw
そんなバナナwww
というあまりにも悍ましい『凶器』でしかなかったのだ。
だが、大輝さんの愛情に助けられ、ほんの少しだけ微笑むことができるようになった。
「大輝、ずっとそばにいてくれてありがとう。私、今からでもゆうちゃんにお花を届けに行きたいな」
みうさんは大輝さんの手をそっと握った。
透明の箱に入ったピンクのうさぎのアニマルフラワーが、ゆうちゃんの生まれ変わりのように見えていたのだ。
「そっか。もしかしたら、亜李ちゃんか誰かがみうのこと心配して電話してくれてるんじゃないかな」
大輝さんはみうさんの頭をそっと撫でた。
「本当?……あ!百乃ちゃん、いつの間に電話してくれてたんだ……」
みうさんは早速スマホを手に取り、百乃さんに折り返し電話をかけた。
プルルルルルルルル
「みうちゃん!仕事は?あと、メンタル大丈夫?」
「今日は休みだよ。大輝がいてくれたからなんとか生きていけてるよ」
「そっか、よかった……。あ、でも……」
「……どうしたの?」
「あ……そ、その……!本当にごめんだけど……!うっ、ううう……!」
「え、何?何があったの?!」
「み……美由利ちゃん……あ……!」
「……え?」
「電話……繋がらないの……。だから……裕香……警察に……あああ……」
「嘘……でしょ……」
その時、みうさんのスマホが右手から落ちてしまった。
ただ何気なく時刻を確認しようとしていたあの時のトラウマが蘇ってきたのだ。
午後4時30分
裕香さんからの通報を受け、下田さんたちがアイスクリームワールドに着いた。
「何度ノックしても反応がないんです!」
裕香さんは、大声を上げて1人目の下田さんに近づいた。
「美由利ちゃん、電話しても出ないんです……」
百乃さんは、身体を震わせながら2人目の下田さんを見つめていた。
「分かりました!」
下田さんたちは、アイスクリームワールドの店内に緊急で立ち入ることにした。
百乃さんと裕香さんは、不安と戦いながらこっそり下田さんたちの後ろについて行った。
午後4時35分
4人とも何も言えずにその場に固まってしまった。
目に入ったのは、美由利さんの遺体を冷凍庫からそっと取り出す孝行さんだった。
心にも身体にも痛みを感じなくなった孝行さんは、美由利さんの遺体をお姫様抱っこした。
そして、笑みを浮かべながら即興で作った子守唄を歌いだしたのだ。
「おやすみ僕の♪愛しいアリス♪可愛い寝顔が宝物♪」