※この作品はR-18です。

の【日の丸の国史上最悪の猟奇殺人事件がきっかけで始まった物語】   作:桃色ぴんく

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第118話

7月12日午後5時

 

ピンポーン

 

亜李さんは、右手の人差し指でみうさんの家の玄関チャイムを押した。

 

だが、誰も返事をしなかったのだ。

 

「あれ?トイレ行ってるのかな?」

 

また勘違いをした亜李さんは、もう1回同じ指で玄関チャイムを押そうとした。

 

その時だった。

 

「亜李にゃん!やっぱりここにいたんだ!」

 

雄馬さんが、亜李さんにいきなりバックハグをしてきた。

 

「わっ!雄馬にゃん?!びっくりした!」

 

亜李さんは目をパチクリさせていた。

 

「ごめん。亜李にゃんなら、絶対ここに来ると……思ってたから。あ……でも……!」

 

雄馬さんは、亜李さんの肩を少しずつ濡らしてしまった。

 

唇も声も、何もかも震えていたのだ。

 

「何……?あ……!」

 

ゆっくりと後ろを振り返った亜李さんは、メガサイズのポテトチップスが入った袋を左手から落としてしまった。

 

みうさんの家の駐車場には車が1台も停まっていなかったのだ。

 

「誠人くんから電話で聞いたんだ……。ゆうちゃんと同じゼミだった美由利ちゃんが、アイスクリームワールドの冷凍庫で自殺したって……!孝行くん、すごく泣いてたって……」

 

雄馬さんは亜李さんの肩をさらに濡らした。

 

「待って……そういうこと……?」

 

亜李さんは、アイスクリームワールドの貼り紙の意図に気づいてしまった。

 

「誠人くんらしいよね。亜李にゃんと俺の連絡先……間違えるなんて……」

 

雄馬さんが話した誠人さんの笑い話も、この時だけは何も笑えない話でしかなかった。

 

「ああああああああああああああ!!!」

 

亜李さんは、雄馬さんの鎖骨をぐっしょりと濡らしてしまった。

 

「……っ、行こう。亜李にゃん」

 

年上らしく振る舞おうとした雄馬さんは、亜李さんをゆうちゃんがかつて演じていたシンデレラのように大事に抱え、助手席に乗せた。

 

ドア前にはメガサイズのポテトチップスが入った袋が置いてけぼりにされていたが、2人ともそんなことには目もくれず……

 

一方その頃、アイスクリームワールドでは……

 

みうさんは、アイスクリームワールドの入口付近で5分前からずっと泣きじゃくっていた。

 

「うう……美由利ちゃんまで……!ああ……私、本当に最低なことしちゃった……。ごめんね……」

 

大輝さんはもちろん、百乃さんも裕香さんもみうさんを優しく撫でることしかできなかったのだ。

 

3人の手の温もりも、みうさんの完全に凍った心の前では、なんの役にも立たなかった。

 

1人目の下田さんは、アイスクリームワールドの防犯カメラをチェックしていた。

 

「あれ?この男、子守唄歌う前にアイス作っているぞ?こいつ、何がしたいんだ……?とりあえずゆっくり慎重に見よう……」

 

午後5時15分

 

2人目の下田さんは、孝行さんの目をじっと見つめながら、いつものように聞き取り調査をしていた。

 

だが、孝行さんは嘆き悲しむだけで質問に全く答えてくれなかった。

 

「孝行さんでしたよね。では、頷くか首を振るかだけで構いません。美由利さんはあなたの奥様でしょうか?」

 

孝行さんは、大粒の涙を流しながら大きく頷いた。

 

「美由利さんのことを、アリスと何度か呼んでいましたよね。美由利さんは、アリスのお話が好きだったからですか?」

 

孝行さんはまた大きく頷いた。

 

その時、2人目の下田さんの顔色が変わった。

 

「……あの、美由利さんが自殺したとお友達に電話していましたよね?失礼ですが、自殺するのを止められなかった……ということでしょうか?」

 

孝行さんは首を横に振った。

 

「となると、話が変わる!どうして自殺と言い切れるんだ?!」

 

2人目の下田さんは、手錠を取り出すと、1人目の下田さんの方を振り返った。

 

「兄さん!こいつ……」

 

だが、1人目の下田さんの怒号に止められてしまった。

 

「落ち着け!まだ証拠不十分だ!」

 

2人目の下田さんの声は、あっという間に温もりを失っていた。

 

「本当は美由利さんの死を悲しむフリをして笑っていたんだよな?!だから通報してくれた2人の女性に向かって遺体を見せつけたんだよな?!」

 

孝行さんは、両手で顔を隠しながら首を大きく横に振った。

 

「しらばっくれるな!美由利さんに恨みでもあったのか?!それとも、アリスと呼んだり冷凍庫に入れたりしたのは、愛ゆえの執着なのか?!」

 

孝行さんは何度も首を大きく横に振ったが、孝行さんとは違う意味で取り乱してしまった2人目の下田さんには真実が伝わらなかったのだ。

 

午後5時30分

 

2人目の下田さんは、孝行さんに手錠をかけようとしたが、1人目の下田さんに大声で止められてしまった。

 

「おい馬鹿!この人は美由利さんを冷凍庫に入れて殺した犯人じゃなかった!美由利さんは午後1時30分に自分から冷凍庫に入っていったのを確認した!」

 

その時、2人目の下田さんの手錠と1粒の涙が床に落ちてしまった。

 

「ああ……申し訳ございません……」

 

それと同時に、亜李さんと雄馬さんがアイスクリームワールドに着いた。

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