の【日の丸の国史上最悪の猟奇殺人事件がきっかけで始まった物語】 作:桃色ぴんく
7月12日午後5時45分
孝行さん、みうさん、大輝さん、百乃さん、裕香さん、亜李さん、そして雄馬さんは、まだ言葉にならない声で泣き続けていた。
ちょうどその時、誠人さんと遥さんもアイスクリームワールドの店内に入った。
「孝行……。ごめん、遅くなって……。あれ?どうして蒼森さんたちもいるの?」
誠人さんは、1人の親友と6人の仲間たちを潤んだ目で見つめていた。
「あ……亜李!!」
遥さんは、ふらつきながら亜李さんの元に駆け寄った。
「あ……あああああああ!!!」
亜李さんは、走ってきた1人の親友を力強く抱き締めた。
みうさん、大輝さん、百乃さん、裕香さん、そして雄馬さんは、両手で顔を隠しながら床に突っ伏していた。
孝行さんに至っては、最愛の奥さんの死だけを嘆き悲しんでいられるような状態ではなかったのだ。
「あああああああああああああ!!!」
何もかもに耐えられなくなった孝行さんは、スプーンを冷凍庫に投げつけた。
さらに、バニラアイスとストロベリーアイスが入っていた紙カップを自分の顔に強く叩きつけた。
2種類のアイスは、いつの間にかドロドロになるほど溶けてしまっていたのだ。
下田さんたちは、9人の嘆きにあえて耳を傾けることなく、美由利さんの遺体をそっと抱えてその場を去った。
一方その頃、Hinomaru Dreamでは……
超高級スイーツのおいしさにほんの少しだけ救われたのか、全員のお皿には何も残っていなかった。
「店長、今までお世話になりました……。本当にありがとうございました」
赤竹さんは、ゆっくり立ち上がって黒田さんにお辞儀をした。
「ありがとうございました」
その他8人の大人たちも赤竹さんに続いてお辞儀をした。
茜ちゃんとチョコは、幸せそうに目をキラキラさせながら、お互いを見つめ合っていた。
「こちらこそ、今まで本当にありがとう。少しでも心の支えになったなら安心だよ。茜ちゃんとチョコちゃんも幸せそうでよかった」
黒田さんは、右手の人差し指で涙を拭いながら微笑んだ。
「会計してくるから、みんなは先に帰って。あ、忘れ物はないよね?心も身体も疲れていると思うから、ゆっくり休んでね……」
午後5時50分
会計を済ませた黒田さんは、Hinomaru Dreamの入口にみんなの姿がないことを確認した。
「あ、すみません。予約していたケーキも受け取っていきます」
そして、桃のホールケーキが入った箱を受け取った。
「……さて。店長として最後の仕事をしないとな。その前に包丁を家から持ってこないと。お皿とフォークは売り場にあったはず……」
黒田さんは、ダイヤモンドのように美しいシャンデリアをじっと見つめていた。
午後6時30分
ゆうちゃんと美由利さんを心から大事に思っていた9人には、もう泣き叫ぶ気力が残っていなかった。
「……孝行?顔ベタベタだよ……」
死んだ目をした誠人さんは、お気に入りの白いハンカチで孝行さんの涙を拭こうとした。
そのハンカチは、3年前に遥さんに貰った無地のハンカチだ。
だが、孝行さんはただ黙って俯くだけだったのだ。
「亜李……」
「遥……」
遥さんと亜李さんは、親友の名前を呼ぶことしかできなかった。
「遥ちゃん、亜李にゃんをよろしくね……」
雄馬さんは明るさを失った声で呟いた。
「ゆうちゃん、よかったね。美由利ちゃんとずっとお話できるよ……」
百乃さんは必死に心の痛みを打ち消そうとした。
「ゆうちゃん、美由利ちゃんのアイスいっぱい食べてね……」
裕香さんも百乃さんと同じことを考えていた。
「ごめんね、ゆうちゃん……。私のせいで美由利ちゃんを傷つけて……」
みうさんは、何も知らなかったあの時の電話を思い出してしまった。
「みうは悪くない、悪いのは全部Aだから。俺……これからどうしようか……」
大輝さんは、透明の箱に入ったピンクのうさぎのアニマルフラワーを思い出しながらみうさんを優しく抱き寄せた。
午後6時40分
プルルルルルルル
誠人さんのスマホの着信音が鳴った。
「あれ?智和くん……?なんで……?」