の【日の丸の国史上最悪の猟奇殺人事件がきっかけで始まった物語】 作:桃色ぴんく
7月12日午後7時
日曜日のこの時間は、本来、日の丸イントロクイズの放送開始時刻だ。
だが、おひさまファッションビルの電光掲示板に映っていたのは、ゆうちゃんの事件の特番だったのだ。
皆さん、こんばんは。
突然ですが、7月7日は何の日でしょう?
七夕……それもそうですが、桃松ゆうさんがAに殺されて食べられた日。
つまり、日の丸の国史上最悪の猟奇殺人事件が起こった日でもあります。
今日は、どうしてAが桃松ゆうさんを狙ったのか、どうしてAが史上最悪の猟奇殺人鬼に変わってしまったのか……その真実を余すことなくお伝えします。
一部、刺激の強い表現が含まれますので、苦手な方はご注意ください。
桃松ゆうさんのご冥福をお祈りします……
「あれ?もう7時だよね?」
夏菜子さんは、困惑しながらまちこさんの方を見た。
「そうだね。あ、もしかして……」
まちこさんは、サニーTVのリアルタイム配信を見ようとした。
夏菜子さんが画面を覗き込もうとしたその時!
「夏菜子ちゃんにまちこちゃん。お疲れ」
翔子さんが後ろからいきなり声をかけてきた。
「わ!びっくりした!」
夏菜子さんは思わず後ずさりした。
「えっ?!……なんだ、土岐さんか。あ、日の丸イントロクイズ、今日はやらないみたいだね……」
まちこさんは暗い顔で俯いた。
「残念だね。でも、仕方ないか……」
翔子さんは、サンサンベーカリーで買ったパンが入った袋を涙目で見つめていた。
「土岐さん大丈夫?」
夏菜子さんは翔子さんを心配そうに見つめた。
「正直しんどい……。昨日の夜中にくだらないスプーン作りを楽しんでた自分が嫌い。ゆうちゃん、絶対天国で怒ってるよね……!うっ……ううう!」
両手で顔を隠した翔子さんは、とうとうその場に崩れ落ちてしまった。
「え!怒られるのは私だよ!一昨日の夜、沙也加と電話したんだけど、ゆうちゃんは正直顔普通だし垢抜けないとか、ボロ服を着たシンデレラとか言ったから!」
翔子さんを励まそうとしたまちこさんも、自分の発言を思い出して苦しくなってしまったのだ。
「あ……あたしの方が酷いよ。なんであの時、食べられ隊なんて変なグループ作っちゃったのかな?ガチで黒歴史だよ……」
今日の午前1時過ぎに、藍斗様に食べられ隊を解散した夏菜子さんは、まちこさんと翔子さんを力強く抱き締めた。
3人とも、ゆうちゃんの事件の特番をじっくり見る余裕がなかったのだ。
「翔子!探したよ……ってあれ?夏菜子ちゃんにまちこちゃん?」
みなみさんが3人の元に駆け寄った。
みなみさんも、サンサンベーカリーで買ったパンが入った袋を大事そうに持っていた。
「ごめん、みなみ。なんとなく外出たら偶然会ってさ……」
一方その頃……
午後1時10分ごろに気絶した夏美さんは、まだ自宅のベッドから出られずにいた。
体調自体は回復していたが、心の傷が夏美さんをベッドに縛りつけていた。
真由美さんと沙也加さんが看病しに来てくれていても……
「大丈夫?」
真由美さんは、夏美さんの頭をそっと撫でた。
「今日は日曜日だし、忙しかったもんね……」
沙也加さんは、両手で夏美さんの右手を優しく包み込んだ。
真由美さんも沙也加さんも、夏美さんをとても心配そうに見つめていたのは言うまでもない。
「ねえ……。ゆうちゃんと伊東くんは今頃天国で何して遊んでると思う?」
夏美さんは涙目で尋ねた。
「ゆうちゃんなら、今頃お姫様ごっこしてるんじゃない?伊東くんは……同窓会のカラオケの続きかな?沙也加はどう思う?」
真由美さんは少しだけ微笑んで答えた。
「私も真由美と同じこと考えてた」
沙也加さんも、真由美さんと同じように微笑んでいた。
真由美さんと沙也加さんの微笑みに少し安心したのか、夏美さんはベッドからゆっくり起き上がった。
「心配かけてごめん。少し楽になったよ。あ、もしよかったら、みんなでおひさまファッションビルに行きたいな……。夏菜子とまちこも誘って、ゆうちゃんと伊東くんのために何か買いたくて……」
真由美さんと沙也加さんは、微笑みながら静かに頷いた。