※この作品はR-18です。

の【日の丸の国史上最悪の猟奇殺人事件がきっかけで始まった物語】   作:桃色ぴんく

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第137話

7月13日午前1時

 

赤竹さん、茶山さん、金森さん、白谷さん、青木さん、緑ヶ丘さん、赤森さん、藍谷さんは、ほんの少しだけ心が楽になったが、うさぎマーケットの店内からまだ出られずにいた。

 

藍谷さんに至っては、チョコを無理矢理起こすわけにいかないから尚更だ。

 

藍谷さんの左隣にいたのは、30分前にうさぎマーケットに着いた黄ノ山さんだった。茜ちゃんは、またスヤスヤ眠っていたのだ。

 

「あ、お菓子ありがとう……」

 

赤竹さんは潤んだ目で茶山さんを見つめた。

 

「いえ……」

 

茶山さんはゴミ袋で顔を隠しながら俯いた。そこには、空っぽの玉ねぎチップスの袋が2つ入っていた。

 

「あ、すみません。飲み物お供えしてきます」

 

「緑ヶ丘さん、僕も行きます」

 

緑ヶ丘さんと赤森さんは、藍谷さんが飲み物を入れた段ボールを取りに行った。2人とも、自動ドアの近くをありったけの飲み物で埋め尽くそうと考えていたのだ。

 

「私も行きたいです」

 

腰の痛みが和らいだ藍谷さんは、緑ヶ丘さんと赤森さんについて行った。

 

3人は、飲み物が入った段ボールをいくつか品出し用の2段台車に置いて外に出た。

 

緑ヶ丘さんは、2Lの緑茶のペットボトルを白いうさぎのアニマルフラワーの左に置いた。

 

藍谷さんは、2Lの麦茶のペットボトルを緑ヶ丘さんと同じ数だけ置いた。だが、置かれたのは反対側だったのだ。

 

24本のペットボトルの存在感は、なかなかのものだった。

 

「これなら桃松たちも熱中症にならねえな……」

 

「桃松さんたち……あっという間に飲み干しちゃいますかね?」

 

緑ヶ丘さんと藍谷さんの目線は、お互いの顔ではなく、それぞれが置いたお茶のペットボトルに向いていた。

 

「やっぱり綺麗だな……。って、俺も飲み物置かないと」

 

赤森さんは、2Lの緑茶のペットボトルの前に2Lのコーン茶のペットボトルを6本置いた。その後、2Lの麦茶のペットボトルの前に2Lの水のペットボトルも同じ数だけ置いた。

 

「え、もう1時過ぎてる……」

 

スマホで時間を確認した赤森さんは、彩音さんに

 

 

ごめん、まだ帰れない……。サニーランドかどこかで待ってて。

 

 

とメッセージを送った。

 

午前1時10分

 

「あ、あのですね……」

 

何かを思い出した金森さんが、恐る恐る口を開いた。

 

「……どうしたの?」

 

赤竹さんは首を傾げた。

 

「冷蔵庫に……5等分の桃のケーキが……!あああ……」

 

金森さんは、声と身体を震わせながら白谷さんにしがみついてしまった。

 

「その件ですが……。てっきり、店長が桃松さんと青山くんに……買ったのかと……思いました……。ですが、数がおかしくて……」

 

金森さんをフォローしようとした白谷さんも、身体の震えが止まらず思うように話せなかった。

 

「……そうなの?最初から……5等分だったの?」

 

赤竹さんは冷静な女性を演じようとした。

 

「はい……」

 

金森さんと白谷さんは、蚊の鳴くような声で同時に答えた。

 

「おかしいわね……。桃松さんと青山くんが2つずつ食べると仮定して、残り1つは誰のよ……2人で半分こ?え……?」

 

赤竹さんは、茶山さん、青木さん、黄ノ山さんに目線で助けを求めた。

 

「あら?確かによく分かりませんね……」

 

茶山さんは首を傾げた。

 

「桃松さんと青山くんは確定として、残り3つ……」

 

青木さんはなぜかスマホのメモを使おうとした。

 

「店長の分を入れたとして、残り2つ……あ、冷蔵庫にあったらおかしいですよね……」

 

黄ノ山さんは言いたいことがうまくまとまらなかった。

 

茜ちゃんとチョコが家と同じようにスヤスヤ眠る中、6人の大人たちは黒田さんの謎について真剣に考えていた。

 

気づけば、青木さん以外の5人の大人たちもスマホに手を伸ばしていたのだ。

 

午前1時20分

 

「あくまで私の考えですが……」

 

青木さんはスマホのメモを見せた。

 

そこには、

 

 

説1

 

桃松さん1つ、青山くん1つ、桃松さんのお母さん1つ、青山くんのお母さん1つ、残り1つは桃松さんと青山くんで半分こ

 

説2(副店長と同じ)

 

桃松さん2つ、青山くん2つ、残り1つは桃松さんと青山くんで半分こ

 

説3

 

桃松さん3つ、青山くん2つ

 

 

と書かれていた。

 

「やだ……2人のお母さんは盲点だったわ……」

 

金森さんはスマホで顔を隠した。

 

「店長……めぐみちゃんたちにもお供えしていたのね……」

 

金森さんの行動が白谷さんにも移っていた。

 

「あ……私も説2だと思いました……」

 

黄ノ山さんは、青木さんのスマホの中心を指差した。

 

「そうなの?でもなんか2個半は多すぎる気がするのよ。だからやっぱり説1かしら?」

 

赤竹さんは考えを変えた。

 

「一旦落ち着いて考えましょう。桃松さんの後を追った人は、店長より前に何人いたかしら?ニュースを見る限りたくさんいたわよね……」

 

ここで、茶山さんが新たな考えを思いついた。

 

「えっと……青山くん、めぐみちゃん、桃松さんのお母さん……A。って、Aはカウントしちゃダメだわ」

 

金森さんは指を折って数を数えていた。

 

「そういえば、桃松さんのお母さんの部下も亡くなったわね……あ……!あの人はもしかして桃松さんのお友達かしら?だから最後の1つは……!」

 

白谷さんは、ようやく1つの答えにたどり着いた。

 

「店長……!あの後みんなのために……!ああああああああああああああ!!!」

 

6人の大人たちは一斉に泣き叫んでしまった。

 

その時、1人の赤ちゃんと1匹の犬がゆっくりと目を覚ましたのだ。

 

ちょうどその頃、お供えを終えた緑ヶ丘さん、赤森さん、藍谷さんが白いうさぎのアニマルフラワーの前に座っていた。

 

「ちょっと休憩するか」

 

「そうですね……」

 

緑ヶ丘さんと赤森さんは、日の丸コンビニで買った緑茶を飲んだ。

 

「あ……あの時は余計なことしてすみませんでした……」

 

3日前の午後0時のことを思い出した藍谷さんは、俯きながら謝った。

 

「藍谷のせいじゃねえから……」

 

「悪いのはAだよ……」

 

2人とも藍谷さんを責めなかった。

 

「ありがとうございます……。今思えば、Aのあの歌詞……桃松さんのことまるで考えていませんでした……。どうして今まで気づけなかったんですかね、私……」

 

藍谷さんは

 

桃色の天使 歌詞

 

とスマホで検索した。

 

そこには、桃色の天使の歌詞がフルで載せられていたのだ。

 

 

ひとりぼっちの僕の

 

目の前に現れたのは

 

無邪気に笑う可愛い天使

 

可愛い声で歌っていた

 

だけど桃色の天使は

 

真っ黒な悪魔にさらわれてしまった

 

弱虫でクズな僕は

 

勇気も出せずに泣いていた

 

甘い罠に囚われてしまった

 

純粋無垢な桃色の天使

 

深い森にある闇の館で

 

大事なものを全て奪われてしまった……

 

ああどうして 罪のない

 

無垢な天使は殺されてしまうの?

 

ああどうして 罪深い

 

残酷な悪魔は笑ってるの?

 

ああどうして 人間は

 

神聖な天使を傷つけるの?

 

ああどうして この僕は

 

可愛い天使を守れなかったのだろう……

 

真っ黒な悪魔は 妖しい魔法で

 

桃色の天使の純潔を奪って

 

そして牛刀でいたぶり続けて

 

最高の晩餐に変えてしまった

 

ホワイトシチューにフライにスープ

 

デザートには究極のパフェ

 

ああなんて可哀想な桃色の天使……

 

ああどうして 罪のない

 

無垢な天使は殺されてしまうの?

 

ああどうして 罪深い

 

残酷な悪魔は笑ってるの?

 

ああどうして 人間は

 

神聖な天使を傷つけるの?

 

ああどうして この僕は

 

可愛い天使を守れなかったのだろう……

 

 

そして、藍谷さんは緑ヶ丘さんと赤森さんに桃色の天使の歌詞を見せた。

 

「改めて見るとやべえな……。なんで一昨日こんな曲に元気づけられていたんだ?」

 

緑ヶ丘さんは、追悼曲の皮を被った犯行声明に恐怖を覚えた。夏の暑さとは違う汗が頬にだらだらと流れていたのだ。

 

「ありがとう……。やっとAのこと嫌いになれたよ……!う、ううう……!」

 

赤森さんは藍谷さんの胸に顔を埋めた。元々汗で濡れていた藍谷さんの服がさらに濡れてしまったのだ。

 

「怖えけど、桃松たちのためにも現実から目をそらさないようにしねえとな……」

 

緑ヶ丘さんは、サニーTVでゆうちゃんの事件の特番の見逃し配信を見た。

 

「あ、お前ら大丈夫か?辛いかもしれねえけど、最初だけでも見た方がいいと俺は思う……」

 

そして、涙目で抱き合う赤森さんと藍谷さんに優しく声をかけた。

 

 

「……っ!はい……」

 

赤森さんと藍谷さんは同時に頷いた。

 

 

ゆうちゃんを殺して食べた日の丸の国史上最悪の男。その名は日ノ松藍斗。

 

藍斗があの大人気歌い手Aだったなんて……!

 

メディア出演を断っていたのは犯行を隠すため……そう考えると恐ろしいですね。

 

ところで、最初に藍斗の正体に気づいたのは、根ノ江川で亡くなった青山めぐみさんですが……

 

そうですね。Aが住んでいた洋館の壁は、しっかり防音加工がされていたそうです。部屋には、オーディオインターフェースやコンデンサーマイクなどが多数揃っていました。

 

歌い手が使う機材があるだけでAと断定するのは早くないですか?

 

いえ!多数のブレス記号が書かれた桃色の天使の歌詞メモが決定的な証拠です!

 

メモの下には、7月11日午後10時にStar Movieに公開、予約投稿済みと書かれていました!

 

え……?めぐみさんは、桃色の天使が投稿される前にそれを見つけましたよね?

 

そうです!まだ投稿されていない段階で、歌詞も投稿時間も知っているのはAしかいませんよね?Aは無所属でしたので。

 

あと、めぐみさんはAの身分証明書を見つけました!

 

うわ!その2つで気づいたんですね!

 

 

「マジかよ……桃松はもちろん、青山もさらに傷ついているだろうな……」

 

「青山さんのお母さん……そりゃ耐えられませんよ……」

 

「あ……もうそろそろ帰りましょう……」

 

緑ヶ丘さん、赤森さん、藍谷さんは涙目で店内へ戻った。

 

午前1時30分

 

赤竹さん、茶山さん、金森さん、白谷さん、青木さん、緑ヶ丘さん、赤森さん、藍谷さん、黄ノ山さんは帰る準備をした。

 

藍谷さんはチョコ、黄ノ山さんは茜ちゃんを優しく抱き締めていた。

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