の【日の丸の国史上最悪の猟奇殺人事件がきっかけで始まった物語】 作:桃色ぴんく
7月9日午後1時
ゆうちゃんのお母さんと黒田さんは、双子の私服警官の下田さんたちから何時間にも及ぶ聞き取り調査をされていた。
1人目の下田さんと2人目の下田さんは交互に質問していった。
「男は娘さんの交際相手でしたか?」
「お2人の間で何かトラブルはありませんでしたか?」
「男の顔に見覚えありますか?」
「最後に娘さんと連絡が取れたのはいつですか?」
とか……
ゆうちゃんのお母さんは口を開けば涙がいっぱい零れてしまうから、スマホのメモに文字を打って答えていた。
悪魔です!
トラブルはなかったと思います。
ないです。
7月6日の夕方です。
とか、唇とともに震えた指で……
そして、あの日の
今どこ?
という当たり前のように既読マークがついていないメッセージ画面も見せた。
ゆうちゃんのお母さんは唇を噛みながら目を潤ませていた。
「悪魔ですか……」
1人目の下田さんはそれしか言えなかった。
「あれを人間と思うのは無理ですよね……」
2人目の下田さんも全く同じことを考えていた。
「桃松ゆうさんですよね。7日はお仕事されていましたか?」
「いえ、休みでした」
「お客様の中に男と似た人はいませんでしたか?」
「はい。僕の記憶が間違っていなければ……」
「従業員はこの男と面識ありますか?」
「ないと思います……。あんな見た目だったら仕事にならなくなる人が出てきますから。特に、白馬の王子様との出会いを信じている桃松さんなら……!」
「あなたか誰かにこの男に会ってくるってお話していましたか?」
「いえ。その日は根ノ江駅で……っ。おいしいランチを食べに行きますって言っていました……」
黒田さんも涙を流しながら質問に答えていた。
気づけば午後1時30分
バックヤードは冷房をつけていても暑いくらいだ。
「すみません。そろそろお昼ご飯を食べに行ってもいいですか?」
黒田さんはそう言った。
「もちろんです」
1人目の下田さんははっきりと答えた。
「すみません。お腹空いていますよね」
2人目の下田さんは優しく微笑んだ。
「ありがとうございます」
なんとか涙を堪えた黒田さんはうさぎマーケットの店内に向かった。
ゆうちゃんのお母さんはぐったりしかけながら涙を流し続けていた。
「すみません、お待たせしました。本当はダメなんですけど、皆さんお疲れでしょうからよかったら飲んでください」
黒田さんは売り場にあったキンキンに冷えた麦茶を8本持ってバックヤードに戻ってきた。
「ありがとうございます!他の4人にも渡しておきますね!」
2人の下田さんは大きな声でお礼を言った。
「ああっ……!あり……がとうっ……ございますっ……!ううっ!」
ゆうちゃんのお母さんは号泣しながらもなんとかお礼を返した。
「熱中症になったらいけませんから、少しだけでも飲みましょう。もしよかったらおひさまモールに行きませんか?ここにいるよりはマシかと思います。車、用意しますので……」
黒田さんの泣きそうだけど優しい声を聞き、ゆうちゃんのお母さんは少し安心したのかゆっくりと立ち上がった。