の【日の丸の国史上最悪の猟奇殺人事件がきっかけで始まった物語】 作:桃色ぴんく
自傷行為を連想するシーンが含まれていますが、あくまでゆうちゃんを失った悲しみゆえの行動です。
自傷行為を肯定、助長する意図はありませんのでご安心ください。
7月9日午後3時50分
茶山さん、金森さん、白谷さん、青木さん、黄ノ山さんは1階のイートインスペースにいた。
金森さんは、赤竹さん用の席を確保するために大量の焼菓子が入った紙袋を椅子の上に置いた。
「副店長なかなか帰ってこないわね〜。どこに行ったのかしら?」
茶山さんは心配そうに言った。
「電話が鳴ったとき、トイレ行ってくるって言っていましたよ。」
金森さんは茶山さんに返した。
「そうなの?トイレにしてはちょっと長すぎるわね……」
白谷さんは違和感を覚えた。
プルルルル
「もしかして副店長?!って、あれ?!私じゃないなら誰よ!」
青木さんは自分のスマホを手に取ったが、それは無駄なことだった。
「すみません、私です……。はい、黄ノ山明里です。え?!もうそんな時間ですか?!本当にすみません!すぐ行きます!あああっ!ごめんね茜ちゃん!!」
黄ノ山さんは忘れっぽい性格を嘆きながら、『特急案件』と言わんばかりの足取りで、それ以上は何も言わずにエレベーターへと走り去っていった。
「え、もしかして黄ノ山さん……!」
「やめてよ!そんなわけないでしょ……。私たちが無理やりおしゃべりに付き合わせたからよ……」
金森さんと白谷さんは申し訳なさで体を震わせながら、青木さんに事情を説明した。
「あらやだ、そうだったわ。そういえば赤森くんたちも帰ってこないわね……」
茶山さんは他の3人が忘れていたことを口にした。
午後4時
「……っ!私のバカ……」
赤竹さんは5階のアミューズメントパークのフロアにあるおひさまランドにいた。そこは、メリーゴーランドなどの遊具があるミニ遊園地つきのゲームセンターで、本来は老若男女ずっとここにいたいと思ってしまうほど楽しい場所だ。
30分前にかかってきた電話に出た時、青山さんは最後にたった1文字の平仮名で『メロディー』を奏でていた。その『音色』は、赤竹さんがトイレに行くと他の5人にわざと言ったことさえ忘れさせた。そうして、気づいた時にはここまで来ていたのだ。
静かに涙を流していた彼女と違って、おひさまランドのBGMはとても賑やかだ。
なりきり桃松ゆうちゃん、スプーン再現チャレンジ、わたしのおいしい食べ方、俺流桃松ゆうちゃんの調理法……
これらのトレンドについて語る人々の声はBGMにかき消されていた。
一方その頃、青山さんの自宅では……
「お姫様を返すんだ!魔王!さらって食べるなんて僕が許さない!!」
復讐の炎を宿した青山さんは、台所の黒いカーテンに向かって何度も包丁を振り回していた。
テーブルには、水を飲んだあとの空のコップと、空になった咳止めの瓶が1つずつ置いてあった。