の【日の丸の国史上最悪の猟奇殺人事件がきっかけで始まった物語】 作:桃色ぴんく
7月9日午後4時10分
黄ノ山さんはおひさま託児所に着いた。
「茜ちゃん!ごめんね……お腹空いたでしょ……」
最愛の娘を抱き締める黄ノ山さんの腕は小刻みに震えていた。0歳6ヶ月の茜ちゃんはまだ泣き続けていた。
「オギャー!オギャー!」
「本当にごめんね!今ミルクあげるから……」
黄ノ山さんは大急ぎで授乳室へと駆け込み、黄色のバッグに入っていたミルクを茜ちゃんに飲ませた。
一方その頃、イートインスペースでは……
「そういえばお昼ご飯何も食べてなかったわね……」
茶山さんは蚊の鳴くような声で呟いた。
「そうですね……。桃松さんを失ったショックで完全に忘れていました……」
青木さんの表情は曇っていた。
「あ、よかったら……くまさんマドレーヌ食べる?」
「あ、くまさんクッキー買いすぎたから食べちゃって」
金森さんはくまさんマドレーヌ、白谷さんはくまさんクッキーを2人に手渡した。
「ありがとう、助かったわ」
「ありがとうございます……」
茶山さんと青木さんはお礼を言ったが、ゆうちゃんを失った悲しみはどう足掻いても消えなかった。
午後4時20分
茶山さんがココナッツ味のくまさんクッキーを手に取ったその時だった。
青木さんはチョコ味のくまさんマドレーヌを右手に持ったまま、何も言わずに1番近くのエレベーターに向かって走っていった。
「え!どこ行くの?!」
金森さんは大声で叫んだが、その声はもう届かなかった。
「あ…、もしかして、副店長に呼ばれた気がしたからじゃないかしら?それか赤森くんたちに……」
茶山さんは金森さんと白谷さんを見つめてそう言った。
「あ!そうですよ!副店長も赤森くんたちも今ここにいないじゃないですか!」
「あ!本当ですよ!一体あの4人に何があったんでしょう!」
金森さんと白谷さんはさっきより大声で叫んでしまった。
「とりあえず私は赤森くんたちを探すから、金森さんと白谷さんは青木さんと副店長を探してくれないかしら」
茶山さんは落ち着いたトーンで2人に指示を出した。
「はい、分かりました」
金森さんと白谷さんは2人同時に答えた。
こうして、茶山さんはめるへん♡らんど、金森さんと白谷さんはイートインスペースから1番近いエレベーターへと向かった。
午後4時30分
「あれ?いないわね……。藍谷さん、緑ヶ丘くん、赤森くんの順番でここに向かっているはずなのに……。……っ。ここはとても可愛い世界のはずなのに、桃松さんの無邪気な笑顔を思い出してしまうわ……」
茶山さんはめるへん♡らんどの店内で涙を流していた。