の【日の丸の国史上最悪の猟奇殺人事件がきっかけで始まった物語】 作:桃色ぴんく
自傷行為を肯定・助長する意図はありませんのでご安心ください。
7月9日午後5時
男は、真っ白な芸術作品を思わせるほど綺麗な指でゆうちゃんのピンクのリボン付きバッグに触れた。
そっと撫でるだけでは物足りないのか、リボンの匂いを嗅いだり、アーチを描くように持ち手を舐め回したりしていた。
「桃松ゆう……。まだあの時のフライの味が残っている。まさか保険証でパスコードを平気でバラしてしまうほどお馬鹿だったとは。そのスマホは昨日僕が壊してやったけどね。あっはは!」
男にとってゆうちゃんのスマホのロックを解除することは想像以上に容易だった。なぜなら、ゆうちゃんは自分の誕生日をそのままパスコードにしていたからだ。
男は自分のスマホではなく、ゆうちゃんのスマホで投稿していた。その時、新たに作られたゆうちゃんの別アカでゆうちゃんの親友のフリをしていたのだ。
もちろん、ゆうちゃんのスマホを捨てる直前にしたあの投稿。それは、男が追加で作ったもう1つのゆうちゃんの別アカで赤の他人のフリをして引用したものだ。
「さて、個体識別番号1218の最高の食べ物のバッグの中身は?ふふ」
男はゆうちゃんの全ての持ち物を知ろうとしていた。笑みを浮かべながら1個ずつゆっくりと中身を出していった。
男はオレンジの手帳に挟まれたゆうちゃんのSUNカードを見つめた。このカードはバスや電車に乗る時などに使う交通系ICカードだ。
「ふふ、やっぱりね。大きな赤い太陽のマークに加えて、お姫様にふさわしい右上の小さな赤い太陽のマークも輝いている。まるでシンデレラの可愛い足のようだ……」
自分の目に狂いは無かったと喜んだ男は、寝室のベッドにある高濃度グリセリンに漬けられた甘い『桃』にそっとキスをした。
「桃松ゆう……。あのニコニコした顔と無邪気な高い声で奏でられた歌……。ふふ。白馬の王子様?あの時は彦星様か。そんなお馬鹿な夢を見ていたお姫様だったなあ。名前を聞いたら、自分の名前だけ言って僕の名前聞いてこなかったからねえ……。あっははは!」
一方その頃、青山さんの自宅では……
「お姫様!今助けます!あんな恐ろしい魔王の生贄になんてさせない……!あっ……」
黒いカーテンに包丁を振り回し続けた青山さんは、 テーブルに足をぶつけて転んでしまった。
「お姫様……ごめんなさい……。僕は魔王を倒せませんでした……」
涙を流した青山さんは、真っ赤なバツだらけの腕を見つめた。そして、包丁の刃先でさらに大きなバツを描こうとした。
「ごめんなさいお姫様……。僕はお姫様を守る白馬の王子様にはなれませんでした……。ああ……。僕は見た目も心も汚くて最低なゴミだ……」
青山さんが描く大きなバツは腕だけでなく、足にも複数描かれていた。
台所の床の色は茶色から赤に変わってしまった。それどころか白い食器棚も真っ赤な汚れがこびりついていた。
「真っ赤なバツ。うまく書けたかな……?」
ガチャ
「ただいま。おひさまモールに守の好きそうなものがたくさんあったから買って……!きゃあああああああああああああ!!!!」