の【日の丸の国史上最悪の猟奇殺人事件がきっかけで始まった物語】 作:桃色ぴんく
7月9日午後5時15分
「守どうしたの?!血だらけじゃない……!痛かったでしょ……」
「あ、母さんおかえり」
青山さんのお母さんは、買い物袋を両腕に引っ掛けたまま駆け寄った。その時の青山さんの目は完全に『光』を失っていた。
「おかえりじゃない!なんで……包丁持ってる……の……」
青山さんのお母さんは今までで1番大きな声で叱ろうとした。だが、最愛の息子に描かれた大量の真っ赤なバツを見て、脳裏にあの絵が浮かんだ。
「あ、これ?ゴミに真っ赤なバツを書くために使ったんだ。どう?綺麗に書けてる?」
青山さんは刃先に血が付いた『王子様の剣』の持ち手をまだ右手でしっかりと握っていた。
「何言ってるの……?守はゴミじゃないでしょ?誰よりも優しくて素敵な王子様よ。ねえ……」
「母さん、ゴミはゴミ箱に捨てなさいって昔言ってたよね。どうして捨てないの?僕は可愛いお姫様を恐ろしい魔王の生贄にしちゃったんだよ……。僕は世界一弱くて情けない。最低最悪な汚いゴミ……だ……よ……」
青山さんは台所の『魔王』との戦いに敗れ、無情にも眠るように倒れてしまった。
「守……!守!!!いやああああああああ!目を覚まして!」
一方その頃、おひさまモールの4階では……
「まさか副店長!青山くんからの電話に出てそのままどっか行っちゃったんじゃ……!」
真実に気づいた青木さんは、にこにこランドというおもちゃ屋さんの着せ替え人形コーナーにいた。
藍谷さんが午前10時30分にめるへん♡らんどに吸い込まれたように、赤竹さんもゆうちゃんの好きそうな場所に吸い込まれたのかもしれないと思ったのだ。
ゆうちゃんは小さい頃から着せ替え人形で遊ぶのが大好きだった。ゆうちゃんは夢見るゆめこちゃんな性格だったから、女の子の人形にはお姫様のドレス、男の子の人形には王子様のタキシードばかり着せていたのだ。
「あ……ローズちゃん……。桃松さんこの子が1番お気に入りって言っていたわ……」
青木さんは、ピンクの縦ロールツインで青い目の女の子の人形を静かに涙を流して見つめていた。
「……っ!泣いてる場合じゃないわ。副店長を見つけないと……」
青木さんはローズちゃんをそっと売り場に戻し、着せ替え人形コーナーを出た。
俯いたままぬいぐるみコーナーに向かって歩いていると、あるものが目に入った。
「え、何これ……?」
それは、文字入れストラップのパーツだった。
作り方は簡単で、好きな色の土台を選んだ後に、平仮名、カタカナ、アルファベットの文字パーツを土台にはめて、あとは小さな穴にボールチェーンを通すだけだ。
青木さんは、ボールチェーンが外れてしまった猫型の赤いストラップを手に取った。そこには、白い平仮名で、7文字のパーツがはめられている。
「あ、か、た、け、さ、と、こ……?あ!赤竹聡子?!副店長もしかして!!」
そして、ぬいぐるみコーナーそっちのけで5階へと続く階段を急ぎ足で駆け上がった。