の【日の丸の国史上最悪の猟奇殺人事件がきっかけで始まった物語】 作:桃色ぴんく
7月9日午後5時20分
茜ちゃんを抱いた黄ノ山さんは、おひさまモールの1階をひたすらうろうろしていた。正確に言うと、茜ちゃんを迎えに行ってからはずっと抱っこ紐を使っていたのだが。
「4人がいなくなったって副店長に言おうと思ったのに、なんで電話繋がらないの……」
真夏の太陽のように明るくキャッキャと笑っている茜ちゃんと違って、黄ノ山さんの表情は先月の梅雨の曇り空のようだった。
そこに、茶山さんが探していた3人が合流した。
「黄ノ山?!なんでお前しかいねえんだ?!」
緑ヶ丘さんはうっかり大声を出してしまった。
「副店長トイレ行くって言ってそのまま帰ってこないんです。それに、娘をおひさま託児所に迎えに行った後にイートインスペースに戻ったら他の4人もいなくなったんです……。あ、副店長に電話したのですが、繋がりませんでした……」
黄ノ山さんは全てを伝えた。
「そっか」
緑ヶ丘さんはそれしか言えなかった。
「黄ノ山さん。実は僕、2時間くらい前に熱中症になって病院に運ばれました。念のため副店長に伝えようとしましたが、ダメでした……」
赤森さんも赤竹さんと連絡が取れなかった。
「え、大丈夫?真夏日だもんね……」
黄ノ山さんは赤森さんを心配そうに見つめた。
「黄ノ山さんお腹減ってますよね……?よかったら食べてください。あ、娘さんたまごボーロもう食べられますかね?もし食べられるのであれば、あたし今から買ってきましょうか?」
藍谷さんはイチゴ味のキャンディを黄ノ山さんに2つ渡した。そのキャンディは、1階にあるカラフルメロディーで買ったものだ。
「ありがとう。茜ちゃんのおやつは家から持ってきたのがあるから大丈夫だよ。はあ……。桃松さんにもキャンディ分けてあげたかったな……」
「あの、よかったら僕の分もどうぞ」
赤森さんは黄ノ山さんにソーダ味のキャンディを2つ渡した。
「黄ノ山の分も買っときゃよかったな!ごめん!」
緑ヶ丘さんは黄ノ山さんにメロン味のキャンディを2つ渡した後、大急ぎでカラフルメロディーへと向かった。
「そんな、申し訳ないですよ!」
黄ノ山さんは断ろうとしたが、緑ヶ丘さんにその声はもう届かなかった。
午後5時30分
「とりあえずオレンジ味にしたけど、よかったか?」
「すみません、ありがとうございます……。あ、平仮名であかりって書いてありますね」
黄ノ山さんは緑ヶ丘さんからおなまえロリポップを両手で受け取った。
「バブー♪バブバブ♪」
まだ言葉がはっきりしていない茜ちゃんのおしゃべりは、4人の若手さんの口元をほんの少しだけ緩ませた。
藍谷さん、赤森さん、緑ヶ丘さんも黄ノ山さんと同じようにおなまえロリポップを両手にしっかりと持っていた。藍谷さんはイチゴ味、赤森さんはソーダ味、緑ヶ丘さんはメロン味を選んでいた。
藍谷真理奈、赤森健太、緑ヶ丘涼太。3人のおなまえロリポップにもそれぞれの下の名前が平仮名で書いてあった。
一方その頃、おひさまモールの4階にあるおひさまでんきでは……
?「あーあ最悪。前のスマホ壊れたのなんでよりによって一昨日の仕事帰り……。ゆうちゃんのゆめこちゃんストーリー七夕バージョン今年も楽しみにしてたのに。はあ、もういいや。昨日今日は連休だったから仕事に影響なかったし、無償交換してもらえたし。ここスマホ安いけど代替機貸出サービスないからな〜」
1人の若い女性がテレビコーナーに向かって歩いていた。
続いて、今週のおひさまトップニュース☆
キランッ☆
今、SNSで話題になっているあのニュース☆
ピンクのセーラーワンピ姿の28歳の女性が超イケメンに殺されて食べられた事件!
警察は、She was my best foodって持ち手に書かれたスプーンに付いた血が、桃松ゆうさんのものではないかと見て捜査を進めてるよ!怖すぎー!
次は天気予報だよ☆
?「え……?ゆうちゃん……?ねえ……。もう会えないの……?明後日の同窓会一緒に行こうって言ったのに……。ゆうちゃん!ゆうちゃーーーーん!!!」