の【日の丸の国史上最悪の猟奇殺人事件がきっかけで始まった物語】 作:桃色ぴんく
7月9日午後6時30分
赤森さんは、真夏とは思えないほどぶるぶる震えていた。なぜなら、メリーゴーランドの周りをぐるぐる回るように歩く4体の『アンドロイド』を見てしまったからだ。もちろん、全員虚ろな目をしていた。
「あ……怖い、怖い……。助けて……。み、緑ヶ丘さん……」
赤森さんは恐怖のあまり、緑ヶ丘さんの左手首を両手でガシッと掴んだ。
「おい!なんで副店長たちにビビってんだよ!いくらなんでもおかしいだろ……」
緑ヶ丘さんは赤森さんのあまりの怯えっぷりに呆れていた。
「すみません……。それは分かるんですが、なんというかその……。人間じゃないみたいなんです……!」
「はぁ?どういうことだよ……。分かったよ、手握っといてやるから」
赤森さんは緑ヶ丘さんに手を引かれながらメリーゴーランドの近くに向かって歩いたが……
「あ……」
「ああ……」
「あああ……」
「ああああ……」
赤竹さん、青木さん、金森さん、白谷さんは完全に『人間』ではなくなっていた。さらに、歩き方はホラー映画のゾンビの歩き方に近づいていた。
4体の『アンドロイド』は恐怖の『メロディー』を奏でていたのだ。
「ぎゃあああああああ!!!」
「おい、赤森!大丈夫か?!」
「あの……!緑ヶ丘さんっ……。本当に……あれ……副店長たち……です……よね……?」
「落ち着け!どう考えてもそうだろ!確かに顔つきとか歩き方とか色々やべえけどさ……」
赤森さんは、恐怖のあまり叫びながら緑ヶ丘さんにしがみついた。少し慌てた様子の緑ヶ丘さんは、なんとか赤森さんを落ち着かせようとした。
2人は4体の『アンドロイド』から少し離れたところで黒田さんに電話することにした。
プルルルルルルルル
「繋がらねえな……」
「繋がりませんね……」
緑ヶ丘さんと赤森さんはそれぞれのスマホを不安そうに見つめていた。
一方その頃……
みうさんと大輝さんは、恋人繋ぎをしながらおひさまモールを出た。
「ありがとう大輝。少しだけ楽になれたよ……」
「ならよかった。ごめんな、みう……。SNSのこと……俺、言えなかった……っ!!!」
今度は大輝さんの方が大粒の涙を流していた。お姫様のように大切な恋人の心を意地でも傷つけたくなかったのだ。
「大輝のせいじゃないよ。ゆうちゃんのこと大事に思ってくれてありがとう……。また明日ね……。っ!!あああああっ!」
みうさんはまた泣いてしまった。
「またな……。もし辛くなったら……遠慮せずに俺を頼れよ。……っ!みうより泣いたらごめんだけど……!」
大輝さんはみうさんを強く抱き締めた。
「俺がみうを……いや!最愛の姫を守るから」
「ありがとう……。やっぱり大輝は王子様だよ」
みうさんが持っている袋の中の4つの絵の具は、たくさんの太い輪ゴムでくくられていた。
「みう。目を閉じて」
大輝さんはみうさんにそっとキスをしながら、みうさんの白のショルダーバッグにこっそり何かを入れた。
「……っ!」
みうさんの頬は真夏の昼の太陽そのものだった。
「驚かせてごめん。みうが愛しすぎてつい。あと、これ以上泣きたくねえからさ。ごめん。そろそろ帰らねえとな」
大輝さんはみうさんから離れた。
「そうだね、またね」
みうさんは、明後日の同窓会に予定通り参加しようか迷いながらそう言った。