の【日の丸の国史上最悪の猟奇殺人事件がきっかけで始まった物語】 作:桃色ぴんく
7月9日午後9時30分
ゆうちゃんのお母さんは、おひさまホテルの部屋にいた。ここは、おひさまモールから徒歩5分くらいの場所にあるビジネスホテルだ。
「……。あ、もう空っぽね。はぁ……」
ゆうちゃんのお母さんは、右手に持った麦茶の空のペットボトルをじっと見つめていた。入口に2台の自販機があるのだが、もう新しいお茶を買いに行く気力はちっとも残っていなかった。
机の上に置かれた真っ白な封筒には小さな水たまりがいくつもできていた。その封筒は、黒田さんがゆうちゃんのお母さんにホテル代を渡すために使ったものだ。
「神様お願い。ゆうを返して……」
ゆうちゃんのお母さんは真っ暗な空に向かって絶対に叶わない願い事をした。58歳のリアリストの仮面は、33歳の偽物の彦星様のせいで簡単に剥がれ落ちてしまったのだ。
「ゆう……。痛かったでしょ……怖かったでしょ……。王子様に化けた悪魔に襲われて……挙句の果てに食べられて……!ああああっ……!お姫様を返して……」
真っ白な封筒の水たまりはどんどん大きくなっていった。ゆうちゃんを最悪な形で失った叫び声と同時に……
一方その頃……
「ああ、もう空っぽだ……」
男は、右手に持った真っ赤な『ジュース』の空のペットボトルをじっと見つめていた。その『ジュース』は世界に1つしかない特別なものだった。
男は隠しきれない苛立ちを28.0cmの足に込め、ペットボトルを何度も踏みつけた。そして、洋館の壁に乱暴に投げつけた。
「僕は神を許さない!どうして桃松ゆうは1人しかいないんだ!ごく普通の垢抜けない見た目だが、味はどんな高級食材よりも素晴らしいじゃないか……!」
無駄に怒り狂った男は、近くにあった真っ黒なピアノに何度も蹴りを入れた。それだけでは足りず、とうとう鍵盤をハンマーで壊し始めたのだ。それも全ての鍵盤を壊すかのように88回も。
午後10時
180cmで73kgの男は、158cmで43kgだったゆうちゃんが生前着ていたピンクのセーラーワンピをそっと抱き締めた。
「まあいい。赤く染まったお姫様の液体は無くなってしまったが、僕にはこれがある。お姫様、僕は今日も君を味わうからね……。あっはは!ジュルリ……。いただきます」
男はゆうちゃんのピンクのセーラーワンピの襟元をキャンディのように舐め回した。もちろん、胸元の布を吸い付くように貪りながら。
「桃松ゆう。まだあの時の甘みが残っているね。ふふっ。汗かいちゃった?塩味がよく効いているね。ああ、それにしても本当にお馬鹿なお姫様だったなあ。愛してるって言葉を本気にしてしまうなんて。本当の僕は君をさらって食べる恐ろしい魔王なのにね。あっははは!」
男はゆうちゃんが抱いていた乙女心をからかいながら、袖にも大蛇のように舌を這わせていた。
「ああ……本当においしいお姫様だ。肉がなくても最高の味がたっぷり染み込んでいる。最高の食べ物だ……。そうだ。いいこと思いついた」
男は最高級のスーツケースからパステルピンクのブラジャーと桃柄の綿のパンツを取り出した。あの日のゆうちゃんの首筋と同じように『桃』の香りを楽しみながら寝室に戻った。
「お気に入りの下着にお着替えしましょうね、お姫様。ふふっ。ジュル……」
男の目は子うさぎを目にした大人の狼の目と全く変わらなかった。
「あれ?もしかしてエプロンがよかったのかな?そっかそっか。君は桃味のお姫様であり、僕という大きな狼の餌のお馬鹿な子うさぎだもんね♪28歳だけどお子ちゃまだから♪ふふっ、そうだよね♪」
男は自分勝手な妄想をしながらまた最高級のスーツケースがある場所へと向かった。男はニヤニヤ笑いながらうさぎマーケットの緑のエプロンを大事に抱えていた。
「あっはは!もう大人の狼の魔王からは逃げられないよ。子うさぎのお姫様♪本当においしそうだ……。ジュル……」
男はゆうちゃんのピンクのセーラーワンピをハンガーにかけ、2つの可愛い下着をエプロンの中に隠した。そして、ゆうちゃんの小麦色の肌を思い出しながらエプロンを噛みちぎるように味わった。