の【日の丸の国史上最悪の猟奇殺人事件がきっかけで始まった物語】 作:桃色ぴんく
7月10日午前8時30分
ゆうちゃんのお母さんはおひさまホテルの部屋の椅子の上で目を覚ました。
「やだ。もう朝……。ゆう、今頃本物の王子様に出会えている……わよね。ゆうは本物のお姫様だもの。王子様と朝ごはん、仲良く食べているかしら……?……っ!あ……あああ……。ああああああああああああああああっ!」
バタートーストに、カリッとしたベーコンを添えた半熟の目玉焼き、そして、うさぎの形に切ったりんご。
一昨日、ゆうちゃんのために作った朝ごはんが、ゆうちゃんのお母さんの頭の中をぐるぐる回っていた。ゆうちゃんが幼い頃から大好きだったおひさまランドのメリーゴーランドのように……
「ゆう……ああああああああ!!!!」
プルルルルルル
ゆうちゃんのお母さんはスマホの着信音に気づけなかった。最愛の娘を失った悲鳴に全てかき消されてしまったのだ。
午前8時45分
「……っ。今日も聞き取り調査……これもゆうのため、そうよね?……って、もうこんな時間……。ちょっと遅れますって下田さんたちに伝えなきゃ……。あ、今日出勤日なの完全に忘れていたわ……」
ゆうちゃんのお母さんはようやくおひさま弁当の店長からの電話に気づき、折り返し電話をかけた。
プルルルルルル
一方その頃、昨日まで青山さんがいたあの家では……
青山さんのお母さんは台所で目を覚ました。
「やだ。もう朝……。守、今頃あのお姫様と幸せに暮らしているかしら?……そうよね。守は強くて優しい本物の王子様だもの。あの子もきっと喜んで……っ!ああああああああっ!!」
世界一可哀想な織姫様の似顔絵が描かれたトイレットペーパーの芯、うさぎマーケットのチラシの下に隠されていた王子様とお姫様と魔王の絵、そして、青山さんの身体中に描かれていた大量の真っ赤なバツ。
最愛の息子が生前抱えていた心の闇が、青山さんのお母さんの頭の中をぐるぐる回っていた。青山さんもまた幼い頃から大好きだったおひさまランドのメリーゴーランドのように……
「……っ。こんなところで泣いていたらいけないわ。守はもちろん、守が好きだったあの子。それに、あの子の家族やお友達はもっと苦しいに違いないわ。」
青山さんのお母さんは、真っ赤に染まった白いタオルを大事に抱え、青山さんの部屋へと向かった。
「それにしてもあの魔王!私の大切な王子様をバツだらけにして殺したうえに、お姫様をさらって食べてしまったなんて!絶対に許さない!仇討ちよ!守が王子様なら私は……。そうね!赤き鎧の女剣士!」
45歳にして人生最大の怒りが33歳の魔王への復讐心に火をつけたのだ。
午前8時55分
黒田さんは、聞き取り調査の前に1回心の痛みを打ち消そうと思い、外に出た。
「……桃松さんと青山くん、もう会えないなんて……。はぁ……2人とも天国で朝ごはんちゃんと食べているかな?……!!!」
黒田さんは、変わり果てたうさぎマーケットの入口に気づいてしまった。
店員食われた激ヤバスーパーwwwwww
ここに来ればあたしも食べてもらえますか?
なりきり桃松ゆうちゃんのための撮影スポットはココだよ♪
いつ営業再開するんですかー?カニバリズムマーケットさんwwwwww
などなど……
誰が貼ったのかはさっぱり分からない。本当によくわからん悪趣味な貼り紙が何枚も貼られていたのだ。
「何……これ……」
黒田さんは貼り紙に心を蝕まれ、崩れ落ちるようにその場に倒れてしまった。