の【日の丸の国史上最悪の猟奇殺人事件がきっかけで始まった物語】 作:桃色ぴんく
7月10日午前10時30分
カラフルメロディーで働くみうさんは、潤んだ目をしてキャンディの袋詰めをしていた。
いつもだったら10秒あれば余裕で1袋分詰め終わるのだが、心の痛みが腕に移ってしまったのか20秒もかかったのだ。
「……っ、ゆうちゃん……っ!」
イチゴ味とモモ味のキャンディを詰める時に至っては30秒もかかってしまった。
みうさんは、このままでは仕事にならないと思い、深呼吸をしようと重い足でトイレに行った。
午前10時45分
「……。私には大輝がいるから……大丈夫……。お仕事頑張らなきゃ」
みうさんは涙を堪えながら新商品のキャンディの袋詰めを始めた。
「今日からマンゴー味が追加されたんだ……。残ってたら買ってみようかな……。ゆうちゃ……あ。マンゴー味とパイナップル味。相性良さそうだな……。真夏にぴったりの組み合わせ……。メロン味とソーダ味を一緒に食べたら……あ、バニラアイスを足したらクリームソーダ……だね。あはは……は」
みうさんは極力キャンディの味のことだけを考えようと必死だった。そうでもしないと、キャンディのフルーティーな甘さが余分な塩気で全部台無しになってしまうからだ。
作り笑顔のみうさんは、出来上がったソーダ味、イチゴ味、モモ味、メロン味、パイナップル味、そしてマンゴー味のキャンディの袋を売場に並べた。
「いらっしゃいませ〜、新商品のマンゴー味入荷しました〜。いかがでしょうか?」
一方その頃……
おひさまランドで働く大輝さんは、昨日と同じように右手にマイクを持った。
「メリーゴーランド〜♪まだまだ〜、回りっ、まっすっよ……」
だが、ゆうちゃんが食べられたことによる心の痛みがなくなることはなかった。いつも通りの明るい歌声はだんだん失われてしまった。
「……あ、俺が楽しませなきゃ意味がない。みうもお客さんも悲しませてしまうから!」
大輝さんは小声でそう呟いた。
「まだまだ回りますよー!楽しんでってくださいねー!」
作り笑顔の大輝さんは、泣きたい気持ちをごまかそうと今までで1番大きな声で叫ぶように歌い始めた。少しでも仕事に集中しようと、本来のアナウンスと違ったアドリブも取り入れたのだ。
「楽しい!楽しい!メリーゴーランド!イェーーーーイ!!!!わーいわーい!さあみんなー!朱林大輝と一緒に夢の世界を楽しみましょうねーーーーー!!!」
午前11時
2人の若い女性と1人の若い男性が日の丸コンビニの近くの歩道を歩いていた。
その近くには、ニコニコしながら自撮りを楽しむなりきり桃松ゆうちゃんたちだけではなく、ピンクのセーラーワンピ、ピンクのシュシュ、スプーン、そして、赤と銀の絵の具が買えずに落ち込む人たちが歩いていた。
平日なのにも関わらず、車道にはたくさんの車が走っていた。その中でも、ナンバープレートが無い大きな車は一際目立っていた。
?「ねえ、今の見た?絶対あれSUVだよね……。私びっくりしたよ……」
?「え!それ最低でも1億円するやつじゃん!いいな〜。僕も乗ってみたいな〜」
?「いやいや、アンタには無理だって。Super Unbelievable Victory carだよね、正式名称。キャー!ウチらマジラッキーじゃん!やったね!」
日の丸の国においてお金持ちの象徴であるSUV。3人ともこのとんでもない高級車にかなりテンションが上がっていた。
ゆうちゃんを殺して食べたあの恐ろしい男の20億円する漆黒のSUVであることを知らずに……