※この作品はR-18です。

の【日の丸の国史上最悪の猟奇殺人事件がきっかけで始まった物語】   作:桃色ぴんく

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第42話

7月10日午後1時30分

 

「ゆうちゃん……。天国で白馬の王子様と幸せに暮らしているといいな……」

 

おひさまモールの従業員専用の休憩室にいたみうさんは、白のショルダーバッグの中に入っている超強力両面テープをじっと見つめていた。それは、昨日の午後6時30分頃に大輝さんがこっそり忍ばせたものだ。

 

「大輝……私たちが離ればなれにならないようにしてくれたんだな……」

 

みうさんは1人で静かに涙を流していた。ちょうど同じ時間に休憩していた他の店員さんたちは、親友の死を悲しむ人に気づくことなくゆうちゃんと男の二次創作マンガを楽しんでいた。

 

みうさんは、7月8日の午前8時に投稿された例のSNSを無意識に見てしまった。気づいたら、いいね数500万、リポスト数300万と恐ろしいほど数字が増えていた。

 

「私バカだ……。昨日泣きすぎてちゃんと見てなかった……。これ完全に私のなりすましアカじゃん!この日スマホ使えなかったし!それに、あんなスプーン届いてないし……。でも……ゆうちゃんが死んだのは嘘……じゃな……い……あ……っ……」

 

みうさんは震える人差し指で、

 

 

私はゆうちゃんの親友です。ゆうちゃんがこの恐ろしい怪物に食べられたのは事実ですが、投稿したのは私ではありません。

 

 

と例のSNSを引用して投稿した。

 

「ゆうちゃん……!ゆうちゃん……っ!!」

 

一方その頃、うさぎマーケットのバックヤードでは……

 

下田さんたちは、昨日の聞き取り調査の続きをしていた。もちろん、今日も交互に質問した。

 

そこには、もはや出勤どころではなかったゆうちゃんのお母さんと、貼り紙に心を蝕まれていた黒田さんもいた。

 

「7日に娘さんお出かけされていましたよね。根ノ江駅の他にどこか行くと言っていましたか?」

 

「娘さんが7日にどのルートを歩いていたか、あるいはどのバスや電車を利用していたか分かりますか?」

 

「お2人は初対面ということで間違いありませんね?娘さん、マッチングアプリか何かされていませんでしたか?」

 

「大変申し上げにくいのですが……。今朝SNSの投稿主を調べたところ、娘さんの親友ではなく、娘さんご本人のアカウントでした。7日の夜に娘さんが食べられたとお聞きしましたが、本当に間違いありませんか?」

 

とか、昨日よりさらに踏み込んだことを聞いてきたのだ。

 

ゆうちゃんのお母さんは、大粒の涙を浮かべながらも口頭で伝えようとした。だが、結局スマホのメモに文字をゆっくり打つことしかできなかった。

 

 

ゆうはおひさまファッションビルとおひさまモールも行くと言っていました。

 

松ノ実6丁目発、根ノ江駅着の松島バスに乗って、根ノ江駅発、おひさまファッションビル前着の日の丸バスに乗り換え、最後におひさまファッションビルからおひさまモールまで30分ほど歩く予定だったはずです。ゆうは決まったルートに従って行動する子なので。

 

悪い男に襲われたら危ないから、マッチングアプリや出会い系サイトは絶対にしないでと私は伝えました。

 

はい、ゆうは7日の夜に食べられました……。

 

 

ゆうちゃんのお母さんは、打った文字の一文字一文字を濡らすほど、大粒の涙を流していた。

 

「……!間違いない!あいつゆうさんのスマホを盗んで投稿したんだ!きっと!」

 

1人目の下田さんは、遂に例のSNSは男の犯行声明だと気づいた。

 

「お母さんの話が本当ならゆうさんが8日にSNSを投稿できるはずがない!兄さんの言う通りだ!あいつ……!絶対に捕まえてやる!」

 

2人目の下田さんは、怒りのあまり自分のボールペンを右手でボキッと折った。

 

「すみません黒田さん!もう少し質問させてください!」

 

下田さんたちは2人同時にうっかり大声を上げてしまった。

 

「は、はい。どうぞ……」

 

黒田さんはやや震えた声で言った。

 

「SNSの投稿は全従業員把握していますか?」

 

「もちろんです。むしろそれが原因で1人の新人が自殺しました……」

 

「ゆうさんの最後の出勤日は、6日で間違いありませんね?」

 

「はい、6日で間違いありません」

 

「もう少し情報が欲しいので、他の皆さんにも質問したいのですが……。よろしいでしょうか?」

 

「すみません。僕だけで対応させてください。店長として部下の心の傷をこれ以上広げることはできません……」

 

「あなたは立派な店長さんですね。あ……実は今朝、拝郷さんと風雅さんに7日の防犯カメラの映像を見てもらいました。ですが、ゆうさんは根ノ江駅にいなかったと言っていました。ランチを食べる前に別の場所に行くという話は聞いていませんか?」

 

「えっ、それは聞いていません……。さきほど桃松さんのお母さんがメモで見せてくださった通りのルートで行くと聞きましたよ……?」

 

黒田さんは、目を潤ませながら左手で黒のネクタイをぎゅっと握っていた。

 

この時、誰も知らなかった。

 

ゆうちゃんがあの日に限っていつもと違うルートで行動していたことを……

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