の【日の丸の国史上最悪の猟奇殺人事件がきっかけで始まった物語】 作:桃色ぴんく
実際の行為を肯定・助長する意図は一切ありませんのでご安心ください。
7月10日午後3時
男は、今日もおやつを食べようと冷蔵庫を開けた。
「さて、どれにしようか。キャラメル・キャンディ・チョコレート」
3つのおやつは、どれも男の顔と同じくらい美しかった。うさぎマーケットやおひさまスーパーでは絶対に売られない。
「いや、今日はお手頃アイスに限るな。あ、そういえばあれが残っていたな」
男は右手で冷蔵庫のドアを閉めると、左手に持ったゆうちゃんの白いブラジャーのカップの内側をチロチロと舐めながら玄関まで歩いた。
ゆうちゃんのブラジャーには、胸の部分に白いフリル、真ん中にピンクのリボンが添えられていた。
午後3時15分
テーブルに戻った男は、ゆうちゃんの白いブラジャーをネックレス感覚で首にかけ、玄関にあった白いケースからゆうちゃんの黒髪を取り出した。
男はキッチンバサミでゆうちゃんの黒髪を細かく切り刻んだ。
お世辞にも芸能人のように綺麗とは言えないゆうちゃんの髪には、うねりやパサつき、そのうえ枝毛も何本か見られた。だが、そんなことは男にはどうでもよかった。
「ふふっ。完璧♪」
男はゆうちゃんの切り刻まれた黒髪をバニラアイスに金箔感覚でパラパラとかけた。
「あっはは!安物のアイスが『最高級』のアイスに早変わり♪誰かさんと違って僕は天才だよね、そう思わない?ね、お姫様♪」
テーブルに置かれたゆうちゃんのシュシュを見つめながら、男はゆうちゃんを小馬鹿にしていた。
「いただきます。ああ……思った以上においしい……。これからは少しずつ『バニラビーンズ』をかけなくては」
男がバニラアイスの最後の一口を食べ終えた時、あることを思い出した。
「そういえば……。あのね彦星様。あたし、暑すぎて駅に着く前にバス降りてランチの前にアイス食べちゃった。なんて助手席で言っていたな。桃松ゆう。君は本当にお子ちゃまなお姫様だなあ……」
一方その頃、おひさまファッションビルの1階では……
遥さん、誠人さん、亜李さんはサンサンベーカリーというパン屋さんのイートインスペースにいた。
「ぱふぇっこはうす昨日から臨時休業らしいね。ゆうちゃんのことがあるから……」
遥さんは例のSNSを思い出し、潤んだ目でメロンパンを食べた。
「どういうこと?あ、みんなそこで自撮りするからか……。ストロベリーパフェなんかすぐ売り切れただろうな……」
誠人さんは知りたくなかった真実に怯えながらチョココロネを食べた。
「営業再開したらまた3人でシェアしよ、ジャンボパフェ……」
亜李さんは最後の希望の光に縋りながらクリームパンを食べた。
サンサンベーカリーのパンはどれもおいしくてハズレが無い。だが、3人とも真っ黒に焦げた失敗作のパンを食べるような顔をしていた。
3種類の甘いパンは、気づけばどれもしょっぱいパンに変わってしまったのだ。
「一昨日も昨日もプリンだけやたら売れたの……。リニューアルに成功したからじゃなかったんだ……!うう……!」
「遥、恋人繋ぎするから泣かないで……。あれ?料理の本借りるお客さんと洋服作りの本借りるお客さんが昨日からやたらいっぱいいたけど、まさか……!」
パティスリーサニーで働く遥さん、根ノ江市立図書館で働く誠人さんは残酷な真実に気づいてしまった。
「え、何?どういうこと……?」
SUN SUN BURGERで働く亜李さんは2人の涙の意味がまだ分からなかった。