※この作品はR-18です。

の【日の丸の国史上最悪の猟奇殺人事件がきっかけで始まった物語】   作:桃色ぴんく

48 / 132
第48話

7月10日午後5時30分

 

ようやく下田さんたちによる聞き取り調査が終わった。

 

ゆうちゃんのお母さんと黒田さんは、お客さん用に使うはずだった段ボール箱に寄りかかるようにして座り込んでいた。

 

「もう嫌……」

 

ゆうちゃんのお母さんは天井を見つめてそう呟いた。

 

「……っ。今日も泊まりますか?」

 

黒田さんはゆうちゃんのお母さんを心配そうに見つめた。

 

「はい……」

 

ゆうちゃんのお母さんの声は、もう掠れていた。

 

下田さんたちは、あえて何も言わずにその場を去った。

 

午後5時40分

 

うさぎマーケットのバックヤードは静まり返り、外のセミの鳴き声だけが響いている。

 

ゆうちゃんのお母さんは、自分のピンクの軽自動車に乗り込み、今日もおひさまホテルへ向かい、黒田さんは、ふらふらしながらうさぎマーケットの休憩室に繋がる階段を登っていた。

 

午後5時45分

 

黒田さんはうさぎマーケットの休憩室の扉をゆっくりと開けた。

 

「あ、みんな……。あれ……?」

 

赤竹さん、茶山さん、金森さん、白谷さん、青木さん、緑ヶ丘さん、赤森さん、藍谷さん、黄ノ山さんは気絶しているかのように、茜ちゃんは楽しい夢を見ているかのように眠っていた。

 

「あっ……おーい……。スマホ……」

 

黒田さんは9人の部下を起こそうとしたが、思うように声を出せなかった。

 

充電が1%しかない9つのスマホは、どれも例のSNSに影響を受けた投稿だけを映していた。

 

なりきり桃松ゆうちゃんなどの自撮り、リアルに再現された恐ろしいスプーンの写真、ゆうちゃんと男の二次創作マンガやファンアート。

 

その他にも、うさぎマーケットの入口に貼られた貼り紙のような世も末なコメントなどもたくさん書かれていた。

 

「桃松さん……!」

 

黒田さんは休憩室の扉を閉め、泣きながらその場を去ってしまった。

 

無意識に7月11日のシフト表を見つめたその時、黒田さんはあっという間に気を失った。

 

同時に、9人の大人たちのスマホの充電も0になってしまった……

 

一方その頃……

 

 

♪〜僕はいなくなったわけじゃないよ

 

ただ住む世界が変わっただけ

 

僕は消えてしまったわけじゃないよ

 

ただ透明人間に変わっただけ

 

 

Aさんで、永遠にそばにいるよをお送りしました。ケンケンさん、リクエストありがとうございました。

 

実は私、2ヶ月前にトイプードルのメロンちゃんを亡くしました。ですが、この曲のおかげでメロンちゃんの分まで頑張って生きようと思えました!Aさんのオリジナル曲はいつ聞いても名曲ですよね。

 

 

ゆうちゃんのお母さんは、運転しながらラジオを聴いていた。だが、Aの美しい歌声も虚しく、それはかえって心の傷を抉ってしまったのだ。

 

「ゆう……!ゆうは悪魔の胃袋になんか住みたくなかったのに……!お姫様どころか透明人間にもなれず悪魔の食べ物にされただけなのに……!あああああああっ……!」

 

ゆうちゃんのお母さんは、泣きながらハンドルをぎゅっと握り続けていた。まるで1番の宝物だったゆうちゃんの手を握るかのように……

 

午後6時

 

ゆうちゃんのお母さんは、唇を少し強く噛みながらおひさまホテルのフロントへと向かった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。