の【日の丸の国史上最悪の猟奇殺人事件がきっかけで始まった物語】 作:桃色ぴんく
7月10日午後6時30分
ガチャ
みうさんは亜李さんの家のドアをゆっくりと開けた。
「みう、待ってたよ〜!」
亜李さんは玄関でとびっきりの笑顔を作ってみうさんを出迎えた。
「みうさん、今日は来てくれてありがとう。えへへ……」
遥さんは自分の白いエプロンを両腕で隠そうとした。
「ちょっと、隠したら遥の可愛さが台無しだよ。あ、蒼森さんこんばんは。紅茶とかジュースも用意してるよ」
誠人さんは遥さんの両腕をどかそうとしながらみうさんの喉の渇きを気遣った。
「みんな……」
みうさんは昨日とは違う意味でほんの少し涙を浮かべた。亜李さんたちは、早く早くと呼びかけるようにみうさんをキッチンへ手招きした。
「スペシャルケーキバイキングへようこそ!」
みうさんがキッチンに着くと、3人が同時に楽しげな声でそう言った。
亜李さんの家のダイニングテーブルには、銀色のトレイに乗ったたくさんの小さなケーキと1本のトングが置かれていた。
「あ、これ私の手作りなんだ。左から、ショートケーキ、チョコケーキ、抹茶ケーキ、モンブラン、ティラミス、ロールケーキ。あ……、足りなかったら言ってね。また作るから」
遥さんは近くにあった泡立て器で思わず顔を隠した。
「ちょっと!顔隠さないの!遥のケーキはめちゃくちゃおいしいんだから!」
亜李さんは遥さんの両手首をグッと掴んで泡立て器を元の場所に戻そうとした。
「飲み物は冷蔵庫にあるよ。オレンジジュース、アップルジュース、ミルクティー、レモンティーのペットボトルがあるから、紙コップに入れて飲んでね」
誠人さんは、みうさんに青の紙コップを渡し、亜李さんの金色の冷蔵庫を指差した。
「私のために!本当にありがとう……!」
みうさんはおひさまモールにいた時とは全く違う意味で大粒の涙を流した。
「どういたしまして……」
3人の幹事たちはおひさまファッションビルにいた時とは全く違う意味でもらい泣きした。
午後6時40分
ピンポーン
「ウチが行くからそこで待ってて!」
亜李さんは猛ダッシュでインターホンを見た。そこには、リアルなピクルス型のクッションとひまわりの花束を抱えた日の丸ホームセンターの店員さんの姿が映っていた。
「はーい!今行く!」
亜李さんは大急ぎでドアを開けた。
「ウェーイ!ただいマスカット〜!ねえ、亜李にゃん聞いてよ〜!今日めっちゃ怖いお客さんいた〜!」
店員のお兄さんはおかしなテンションでそう言った。まあ、復讐の鬼と化した45歳の女性客が目の前にいたらそうなるのは無理もない。
「イェーイ!おかえリンゴ〜!ってええええええ!!!待って待って待って待って待って!!!!それマジで欲しかったヤツ!ありがとう!!!もう雄馬にゃん超大好き〜♡」
亜李さんは5歳年上の雄馬さんに思いっきり抱きついた。
「ベリーキュートな亜李にゃんのポテト検定1級合格祝い〜♡あ!クッションに夢中になりすぎて俺のピクルスそっちのけはダメだぞ♡……あ、でもよかった……。もし今日も亜李にゃんが泣いてたらどうしようって不安だったからさ……」
雄馬さんは同棲中の亜李さんを妹のように優しく撫でながらそう言った。
「心配してくれてありがとね。でも、今はもう大丈夫だから普段通りのテンションに戻して雄馬にゃん。あ!そのお客さんの話後で詳しく聞かせて」
亜李さんは上目遣いで雄馬さんを見つめた。
「あ、遥たちいるから早く早く!その花束みうに渡してんぷら粉!キエエエエエエイ!!!」
「あ、あはは……。今行くから待ってんぷらうどん〜」
雄馬さんは亜李さんの高すぎるテンションに押されながらキッチンへと向かった。
「遥ちゃんに誠人くんこんばんは。そして、みうちゃん久しぶり。はい、プレゼント♪」
「あ……、こんばんは……」
「雄馬さんこんばんは。すみません、遥は相変わらずシャイなもので」
「お久しぶりです。あと、花束ありがとうございます……!」
「さて、人数増えたしもっと楽しもうよ!ウェーイ!」
亜李さんはピクルス型のクッションを振り回しながらぴょんぴょん跳ねた。
「そうだね。遥のケーキどれもおいしそうだもん。みんなで食べようよ」
みうさんは亜李さんたちに向かってニコッと微笑んだ。
最初に選んだものは、みうさんはミルクティーとショートケーキ、遥さんはアップルジュースとモンブラン、誠人さんはレモンティーとモンブラン、亜李さんと雄馬さんはオレンジジュースとロールケーキだった。
午後6時45分
「じゃあ乾杯の挨拶は俺がやっちゃうね!乾杯!」
「乾杯!!」
33歳の雄馬さんの完璧な乾杯の挨拶は、28歳の同級生4人を笑顔にした。
午後6時55分
「ゆうちゃん……、白馬の王子様と一体どんなケーキ食べているのかな……?」
ロールケーキを食べていたみうさんは、蛍光灯のリングをじっと見つめて小声でそう呟いた。