の【日の丸の国史上最悪の猟奇殺人事件がきっかけで始まった物語】 作:桃色ぴんく
7月10日午後8時40分
強盗に捕まったみうさんは身動きを取れずにいた。亜李さんどころか、カチコチに固まって動けなかったはずの誠人さんまでいつの間にかいなくなってしまったのだ。もちろん、遥さんの姿もない。
「みんな……どこ?」
みうさんは涙目で、そして掠れた声で強盗に尋ねた。
「知らないね。お前を置いてどっか行っちゃったのかな?ふふ、可哀想に」
強盗がそう答えると、みうさんは冷凍庫に閉じ込められたかのように身体を震わせた。
「……ゆうちゃん……。ゆうちゃん……!」
亜李さんたちが自分を置いて逃げたことは、みうさんには心底どうでもよかった。
「ゆうちゃん……?ああ、話題の食われたあの子か……っ!!ならば、俺はお前を殺してその場で食ってやろうか!」
強盗はなぜか一瞬だけ声を震わせたが、真っ黒な怪物のような重低音の声を必死に作った。
「ああっ!ゆうちゃん……!」
みうさんは、天国にいるゆうちゃんの幸せをひたすら祈っていた。それと同時に、ゆうちゃんはどれだけ痛い思いをしていたのかも考えていた。
「……っ!お願いします!いっそ私も……!」
バンッ!!!!
強盗は、手を震わせながらみうさんの足元に発砲した。
午後8時50分
「みうに手を出すな!撃つなら俺にしろ!」
みうさんの前に現れたのは、王子様の格好をした大輝さんだ。
「ははっ、馬鹿な男だなあ。お前の女がどうなっても知らないよ?」
強盗は右手でピストルを弄びながら大輝さんを煽った。
「だ、大輝……?え、どうして……?」
みうさんはパニックのあまり状況が読めなかった。
バンッ!
強盗は大輝さんに向かって発砲したが、大輝さんは持ち前の運動神経で華麗に避けた。
「おい!みうを返せ!」
大輝さんは大きな剣を何度も強盗に向かって振るった。本当に殺されるかもしれないと動揺した強盗は、みうさんを思わず離してしまった。
「姫。危ないですから下がっていてください」
大輝さんはみうさんの耳元でそう囁いた。
「大輝……?どうして……?」
「俺が守るから大丈夫だ」
大輝さんは、小刻みに震えるみうさんの手をギュッと包み込んだ。
「作戦変更だ!」
強盗が大声で叫んだその瞬間、大輝さんは剣を大きく振りかぶった。
「ぎゃああああああああ!」
大輝さんの剣が直撃した瞬間、強盗は死んだようにパタリと倒れてしまった。
「みう、遅くなってごめん」
大輝さんはみうさんを優しく抱き締めた。
「ううん、気にしないで……。でも、どうしてゆうちゃんだけ……っ!」
みうさんは大輝さんの胸の中でまだ涙を流していた。
「みうちゃんごめんね、怖い思いさせて」
雄馬さんは黒のフェイスマスクをゆっくり外しながら微笑んだ。
「ごめん、みう。ゆうちゃんもここにいたらよかったよな。あ、あと……残業ってのは嘘で、本当はおひさまファッションビルで衣装とか買ってたんだ。雄馬さんと一緒に」
大輝さんもみうさんに謝った。
「あ……。みんな大丈夫?」
遥さんは3人を見つめてそう言った。
「大丈夫だよ。強盗は雄馬さんだったから」
みうさんの涙はいつの間にか消えていた。
遥さんは玄関のドアを開けると、外にいた誠人さんと亜李さんを手招きして中に呼んだ。
午後9時
「蒼森さんごめんね。びっくりさせて」
「みう大丈夫?!ちょっと雄馬にゃん?!みうがめちゃくちゃ怖がってたってさっき遥から聞いたけど!」
誠人さんと亜李さんはみうさんたちの元に駆け寄った。
「いや〜、強盗の演技に熱が入っちゃってさ。って、亜李にゃんが俺たちにメッセージで指示したんじゃん。コラ♡」
「ごめん雄馬にゃん。今度なんか奢るから許して♡あ、みう!雄馬にゃんがスマホ見て玄関出た後からは全部ウチの作戦だから安心して!」
雄馬さんと亜李さんは相変わらずラブラブだ。
「そうだったんだ……」
みうさんは5人の笑顔を見つめながら右手をそっと胸に置いた。
「ウエエエイ!こっからが本番だよ!みんな!キッチンに集合!」
亜李さんは一体何を考えているのだろうか……