の【日の丸の国史上最悪の猟奇殺人事件がきっかけで始まった物語】 作:桃色ぴんく
7月10日午後9時30分
スペシャルケーキバイキングの時間はあっという間に終わった。
4人を見送った亜李さんと雄馬さんは、何も置かれていない銀色のトレイと蛍光灯のリングを何度も交互に見つめていた。
「みう……。少しは楽になれたかな?あと、遥たちも……」
「どうだろう?でも、みんなも明日の同窓会に行くんでしょ?ゆうちゃんはもういないけど……」
いつものテンションを完全に失った亜李さんと雄馬さんは、涙を堪えながら抱き合った。
「あ、雄馬にゃん。えっとその……怖いお客さんって……?」
声が震えた亜李さんは、必死に話を逸らそうとした。
「あ、亜李にゃん大丈夫?ゆうちゃんは大事な友達だったもんね……。あ、えっと、どう言えばいいのかな?40代くらいの女の人で、斧が欲しいって言ってた……。いわゆるクレーマーではないんだけど、とにかく目がめっちゃ怖かった!俺ガチで殺されるんじゃないかと思ったよ……!」
雄馬さんの声は、悲しみと恐怖で震えていた。
一方その頃……
「魔王の城はどこよ!早くこの手でトドメを刺してやりたいのに!」
青山さんのお母さんは、イライラしながら青い軽自動車を走らせていた。
松島県根ノ江市は、おひさまモールやおひさまファッションビルなどの商業施設がそれなりにある。だが、大きな山や深い森も少なくない。だからこそ、男の住む洋館を見つけるのは決して簡単ではないのだ。
「おひさまモール近くの森にも無いなんて……。一体どこの森にいるのかしら?全く!これじゃあ守のためにならないじゃないの!」
青山さんのお母さんは、血走った目で車を運転し続けていた。
午後10時
夜になっても涼しくない。それどころかかなり蒸し暑い。
だが、ドリンクホルダーに置かれたペットボトルの水は、まだ4分の3も残っていた。
「一旦休憩しましょう。もしかしたら新しいヒントがあるかもしれないわ!」
青山さんのお母さんは、サニーランドに車を停めた。
「ここ便利なのよね。24時間営業だもの」
青山さんのお母さんは、早足で1階の充電スペースへと向かった。
午後10時10分
青山さんのお母さんは丸椅子に座った。
充電が18%のスマホの画面に映し出されていたのは、もちろん例のSNSだ。
誰かゆうちゃんとイケメンの服の特定よろ!
ゆうちゃんのシュシュ欲しかったけど売り切れだった……。
今日美容院でこのイケメンと同じヘアスタイルにしてくださいって頼んでやったぜ!
など、やっぱり相変わらずよくわからんコメントの嵐だ。
「どうしてご冥福をお祈りしますの一言も言えないのかしら。ゆうちゃんが可哀想だわ……」
青山さんのお母さんは充電ケーブルを挿し、潤んだ目で画面をスクロールし続けた。
「え……?桃松ゆうちゃんはうさぎマーケットの店員、根ノ江南高校に通ってたよ……?……!ゆうちゃんって守の先輩の桃松さんじゃない!どうして気づけなかったのよ、バカ……!」
特定班かゆうちゃんの同級生か、はたまたその両方か。正体不明のコメントが青山さんのお母さんの心に火をつけたのだ。
「……?これヒントになるかしら」
青山さんのお母さんは、
イケメンさんの服めっちゃ高そう♡まさに王子様って感じがする♡
間違いない!10万円余裕で超えるやつじゃん!
というコメントを見つけた。
「信じてみましょう!今度こそ魔王の城を見つけてやるわ……!」