の【日の丸の国史上最悪の猟奇殺人事件がきっかけで始まった物語】 作:桃色ぴんく
7月9日午前7時30分
「お姫様いけません!あの男は見かけだけの恐ろしい魔王です!このままではさらわれて食べられてしまいますよ!こっちへ逃げるのです!さあ!僕の手を握ってください!……何してるんだろう、僕は……」
布団の中に隠れていた青山さんは、右手に持っていたトイレットペーパーの芯に語りかけていた。
トイレットペーパーを交換する時にゴミ箱に入れるつもりだったのだろう。
だが、何を思ったのか世界一可哀想な織姫様の似顔絵を無意識にペンで描きなぐっていた。
「桃松さん……。僕は……。本当に弱くて情けない男です……。お姫様って軽々しく呼んでしまってごめんなさい……」
青山さんは急に涙が溢れて止まらなくなってしまった。
「守!仕事は?ご飯食べないと遅れるわよ!」
「守?!そんな名前呼ばないでよ!母さん!」
「守?どうしたのよ!馬鹿なこと言わないで!」
「バカだよ僕は!お姫様を守れなかった名前負けしたバカな男だよ!店長に欠勤の連絡入れるから……。母さん、先にご飯食べてよ……」
青山さんは元々お母さん思いのとても優しい人だった。
幼い頃は守って名前かっこいいから大好きって言っていたし、中高生の反抗期はクソババアなんて一度も言わなかったほどだ。
「僕はバカだ。母さんにあんなことを言った男だ……。母さんを傷つけるような男なんかが可愛いお姫様を守れるわけないや……。あーあ。店長に電話しよ……」
午前8時
青山さんはボソッと呟いた。
プルルルル
「もしもし青山くん?」
「はい、青山です……。せっかく副店長が昨日早退させてくださったのですが……。未だに……うっ!……具合が悪くて……お休みさせてください……。すみません……」
「分かった……。ゆっくり休んでね。」
黒田さんは全てを察したようだ。
午前8時30分
黒田さんは昨日と同じようにゆうちゃんの家に電話をかけていた。
「はい、桃松ゆりです。」
「すみません、うさぎマーケットの店長の黒田誠と申します。桃松さんと連絡は取れましたか?」
これはただの業務上の店長のお仕事だが……
「ゆうは亡くなったんです!七夕の日に悪魔に殺されて……!食べられたんです!!!」
「え?!殺されて……た、食べられた?!え、ええええ?!」
動揺した黒田さんは受話器を落としてしまった。
「証拠もあります!今からそちらに行きますので!」
「ご冥福をお祈りします……」
震える手で受話器を拾ったが、もうそれしか言えなかった。
「桃松さん、まさか!でもお母さんがそう言うなら……」
そして警察に電話した。
一方その頃、うさぎマーケットの休憩室では……
?「あらあら?桃松さん今日はお休みだったかしら?」
?「え、出勤ですよ。もしかして遅刻したのかしら?」
?「昨日見ちゃったSNS……。まさか……」