の【日の丸の国史上最悪の猟奇殺人事件がきっかけで始まった物語】 作:桃色ぴんく
7月11日午前9時30分
青木さんは、日の丸コンビニの外で買った麦茶を飲んでいた。
「ふぅ、2本買っておいて正解だったわ。やっぱり今日も暑いわね」
もう1本のお茶をカバンにしまおうとした時、あるものが目に入った。
「……っ!あああああ!!桃松さんっ……。青山くんっ……」
底にあったのは、2日前に食べ忘れたチョコ味のくまさんマドレーヌだ。原型を留めないほど中でボロボロに崩れてしまっていたのだ。
青木さんは、涙を流しながら空に向かってそっと手を合わせた。
一方その頃、おひさまモールの2階では……
茶山さんは、おひさまファッションというシンプル系の服屋さんにいた。そこは、洋服だけでなく靴下や下着も売っているとても便利なお店だ。
「そろそろ夏の靴下を買い足さなきゃだわ。これからさらに暑くなるもの。嫌ね……。ただでさえ桃松さんも青山くんもいなくなっちゃったのに……」
茶山さんは、目を潤ませながら冷感素材の靴下を2足カゴに入れた。
午前9時45分
茶山さんは、1番入りたくないはずのお店にブラックホールのように吸い込まれてしまった。
そこにいた黒髪ツインテールのマネキンは、白い丸襟が付いたピンクのフリルブラウスとピンクのチュールスカートにドレスアップしていた。襟元には、ビビットピンクの立体リボンが付けられていた。
マネキンの近くにあるハート型の白い看板には、
ゆうちゃんになれちゃう♡オススメの組み合わせ♡
と書かれていた。
看板を見る気力すら失った茶山さんは、死んだ目でフリルブラウスコーナーの商品を見ていた。
「可愛いわね……。桃松さん……休みの日はいつもこんな感じのを着ていたわ……」
茶山さんが何も手に取らず静かに涙を流していたのに対し、なりきり桃松ゆうちゃんは笑顔で付け襟やスカートなどを手に取り、ゆうちゃんに近づけそうな組み合わせを必死に考えていた。
土曜日なのもあり、なりきり桃松ゆうちゃんは一昨日の倍以上いた。
一方その頃、サニーランドでは……
金森さんと白谷さんは、サニーショップというスーパーにいた。お昼ご飯を買おうと思ったが、お惣菜の種類が七夕の日までの半分しかなかったのだ。
「白谷さん、ここも桃松さんを思い出しちゃうわね……」
「そうね、金森さん。私は青山くんも思い出しちゃって苦しいわ……」
金森さんはミニ鮭弁当、白谷さんはミニ唐揚げ弁当をカゴに入れてそう言った。
「桃松さんもそうだけど、青山くんも可哀想よね。桃松さんは食べられちゃったし、青山くんは心も体もボロボロになっちゃったし……!」
ミートボールをカゴに入れる金森さんの手は震えていた。
「そうよね、本当に可哀想。顔しか取り柄のない……。いや!もう何もかも腐ったあの男が許せないわ……!」
卵焼きをカゴに入れる白谷さんの手も同じように震えていた。
「私たちどうしたらいいの……?2人の分までちゃんと生きていけるのかしら……?」
金森さんと白谷さんは、不安で涙を流しながら手を繋いでセルフレジへと向かった。
セルフレジには、お客さんが自分で取る用のナイロン袋、箸、フォーク、スプーンがあるはずなのだが……
「やっぱり……!ああああああああああ!!!!!」