の【日の丸の国史上最悪の猟奇殺人事件がきっかけで始まった物語】 作:桃色ぴんく
7月11日午前11時30分
黄ノ山さんは、おひさまファッションビルの2階にあるCANDY PRINCESSというロリータ系の服屋さんにいた。
今日は珍しく、茜ちゃんをベビーカーに乗せていた。
「ねえ、なんでママここにいるのかな?茜ちゃん、なんでだと思う?」
何も考えられなくなった黄ノ山さんは、茜ちゃんに質問した。
「アーウー、バブー♪」
当然茜ちゃんは答えられなかった。それどころか、黄色のドットの甘ロリを見てニコニコ笑うだけだったのだ。
「ごめんね、分かるわけないか。あ、茜ちゃんそれ欲しいの?もう少しお姉さんになったらね……。あはは……」
黄ノ山さんは操り人形のような作り笑いしかできなかった。
ピンクの甘ロリを手に取ったたくさんのなりきり桃松ゆうちゃんは、黄ノ山さんとは違った満面の笑みで試着室へと消えていったのだ。
「バブバブ♪バーブー♪」
可愛い世界に興味を示した茜ちゃんは、七夕の日の午後0時のゆうちゃんのようにニコニコしていた。
「……っ!!!あっ……!ああああああああああああ!!!!!」
青い王子系ロリを着た黒髪ショートボブのマネキンとピンクの甘ロリを着た黒髪ツインテールのマネキンが、呪いの人形になって黄ノ山さんの心を蝕んでいった。
一方その頃、うさぎマーケットのバックヤードでは……
DNAの鑑定結果が出る日だからか、ゆうちゃんのお母さんと黒田さんは2人とも身体が震えて立っていられなかった。
下田さんたちは、優しい眼差しで今日も交互に聞き取り調査を続けていた。震える2人を見て、頷くか首を振るかで答えられる質問をしようと心がけたのだ。
「根ノ江駅でランチを食べると娘さんが言っていたのは本当に間違いありませんね?」
「松島バスの運転手さんは、娘さんを見ていないと言っていましたが……。本当にそのバスを使ったのでしょうか?」
ゆうちゃんのお母さんは2回ともすぐに頷いた。
「7月7日は暑かったと思います。娘さんは駅へ向かう途中で、アイスか何かを食べた可能性はありませんか?」
「こんなこと言っていいのか分かりませんが……。今朝SNSを見たら、娘さんの高校時代の同級生と思われる方がこう言っていました。娘さんは星座占いが大好きで、毎朝7時30分になると必ずいて座の今日の運勢を調べていた、と」
下田さんたちの想定外の質問は、ゆうちゃんのお母さんを混乱させた。
さらに、2人目の下田さんは続けてこんなことを言い出した。
「7月7日のいて座の運勢を確認したところ、逆方向から出かけるとラッキーとありました。この日は最初におひさまモールに行ったのではないですか?」
ゆうちゃんのお母さんは、とうとうカチコチに固まってしまった。
見かねた黒田さんは、震えた声でなんとか質問に答えようとした。
「あ……。その日は……確かに暑かったですね……。ですが……桃松さんに限ってそんなことは……。待ってください!桃松さん、占いよく見ていましたね……。もしかしたら案外……!」
ガチャ
「店長?!大丈夫ですか?!」
黒田さんを心配した赤竹さんが様子を見に来た。
「え……?なんでここに……?僕は大丈夫だから早く帰りなさい……」
黒田さんの声はまだ震えていた。
「帰りません!そうやってひとりで抱え込むのはやめてくださいって何度も私言いましたよね?」
赤竹さんは意地でもその場を離れようとしなかった。
「それに、外はピンクのセーラーワンピを着た女の子と黒の半袖のシャツを着た男で溢れかえっていましたし、もう本当に心配で!あ……部下たちにこのことを伝え……っ!!うっ……!うぇええ……」
赤竹さんは積もりに積もった悲しみに耐えきれず、その場で吐き出してしまった。
「大丈夫ですか?!」
1人目の下田さんは、大慌てで赤竹さんの元に駆け寄った。
「一旦休憩しましょう!そろそろお昼ですし!」
2人目の下田さんは、今にも倒れそうなゆうちゃんのお母さんと黒田さんを必死に立ち上がらせようとした。