の【日の丸の国史上最悪の猟奇殺人事件がきっかけで始まった物語】 作:桃色ぴんく
7月11日午後0時
青山さんのお母さんは、まだ男を探していた。だが、その姿はどこにも見当たらなかった。
「全く、魔王はどこに行ったのかしら。見つけたら斧でバツだらけにしてやりたいのに!あ、その前に薬をかけてやるのが先かしら?」
そんなことを言っていたが、空腹には抗えなかった。
「そろそろお腹が空いたわ。私ってバカね。食べ物も買っておけばよかったわ……。あら?魔王がいないってことは、冷蔵庫にあるものこっそり食べていいのよね?これはこれでいい復讐になりそうだわ!お姫様をさらって食べたし、王子様をバツだらけにした悪い魔王だもの!当然の報いね!」
青山さんのお母さんは斧を振り回しながら冷蔵庫を探した。洋館はかなり広かったが、幸運にもキッチンはすぐそばにあった。
「何これ?すごく広いし、綺麗だわ!私には手が出せないわね……。あら?これ冷蔵庫かしら?こんなに大きなものは初めて見たわ!」
あまりの大きさに目を丸くした青山さんのお母さんは、冷蔵庫をそっと開けた。
キャビア、フォアグラ、トリュフはもちろん、ロマネ・コンティや超高級フルーツタルトなど、ありとあらゆるご馳走がそこに入っていたのだ。
「夢みたいだわ……。ああ、守がいないのが悲しいわ……。何個かこっそり持って帰りたいけど、保冷バッグが……あったわ」
もういない青山さんを思い出して胸が苦しくなりかけたが、たまたま近くにあった男の黒い保冷バッグが皮肉にも心の支えとなった。
「キャビアとフォアグラとトリュフと……。タルトも持って帰りましょう!とりあえず今はロマネ・コンティと高そうな生ハムとチーズと……。とりあえず何でもありそうね!いただきます」
青山さんのお母さんは、今までで1番豪華なランチを楽しんだ。
一方その頃……
「心配かけてすみません……」
まだ少し足がふらついていた赤竹さんは、やや暗い顔で黒田さんたちに謝った。
「大丈夫だよ。桃松さんや青山くんのことを大事に思ってたんだよね……」
少し心が楽になった黒田さんは、優しい眼差しでそう言った。
「落ち着いたようで何よりです」
下田さんたちは口元を緩ませた。
「娘が……お世話に……っ!!」
ゆうちゃんのお母さんだけは、ゆうちゃんを失った心の傷が大きすぎてまだ思うように話せなかった。
「……っ」
赤竹さんは、ゆうちゃんのお母さんの涙を見て何も返す言葉が見つからなかった。
「とりあえず……お昼ご飯……に……しましょうか……」
黒田さんの声がまた震え出した。
一方その頃……
拝郷さんと風雅さんが、ゆうちゃんの家の郵便受けのチェックを終えて帰ろうとしていた。
「今日も郵便受けには何も無いみたいね」
「とりあえず安心です……かね?」
2人はお互い見つめあって少しだけ微笑んだ。
「そうね。今日の鑑定結果がどうなろうと、私たちは最善を尽くすしかないわ」
「ですね。でも指紋は検出できました」
「そこが救いね」
「とりあえず浅川さんに近況報告しましょうかね?一応藤田くんにも」
風雅さんは浅川さんに電話した。
プルルルル
「はい、浅川です」
「もしもし?風雅だけど、郵便受けには何も入ってなかったよ。ところで、ゆうさんの情報は何か得られたのか?」
「はい。藤田くんの活躍により、ゆうさんは7月7日の午前中にアイスを食べていたことが分かりました」
「よくやった!場所は?」
「松ノ森3丁目のバス停の近くにあるアイスクリームワールドです。7月1日にオープンしたばかりの新しいお店です」
「え!そこって根ノ江駅からかなり遠いよ……」
「ですよね。僕も最初聞き間違いかな?と思ったのですが、監視カメラを見せてもらったところ、確かにゆうさんがストロベリーアイスを食べていました」