※この作品はR-18です。

の【日の丸の国史上最悪の猟奇殺人事件がきっかけで始まった物語】   作:桃色ぴんく

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第66話

7月11日午後1時35分

 

冷房がしっかり効いたうさぎマーケットの休憩室に、金森さんと白谷さんがいた。

 

金森さんは、名前と全く違った目をしてミニ鮭弁当とミートボールを食べていた。白谷さんは、名前と全く違った顔をしてミニ唐揚げ弁当と卵焼きを食べていた。

 

「今日ってDNAの鑑定結果の日よね……」

 

金森さんの声は震えていた。

 

「そうね……」

 

白谷さんの声も同じように震えていた。

 

この時、2人のおしゃべりはこれで終わった。

 

咀嚼音とそれぞれの家から持ってきたお茶を飲む音。うさぎマーケットの休憩室から聞こえてくる音は、ただそれだけだったのだ。

 

当然、テレビをつけようという発想なんかなかった。

 

一方その頃、赤森さんの自宅では……

 

彩音さんがそばにいても、赤森さんの表情が完全に元に戻ることはなかった。

 

元々は焼きたてをその場で食べる予定だったが、イートインスペースも休憩スペースも満員ですぐには食べられなかったのだ。

 

それだけならまだいいものの、どうしてもゆうちゃんと青山さんがいない現実が頭から離れない。

 

「ごめんねお兄ちゃん……。トースターで焼き直せばちゃんとおいしいから!ね!」

 

彩音さんはメロンパンとメープルメロンパンを1つずつトースターに入れた。

 

焼き直した2種類のメロンパンは、午前11時の焼きたてパンと同じくらいいい香りがした。

 

「先食べてね!早く食べないとまた冷めちゃうよ!」

 

「……っ!!!うう……。あっ……!」

 

なんだかんだで大好きな彩音さんの優しさが、赤森さんをさらに苦しめてしまった。

 

パンの甘い香りが、どう足掻いてもゆうちゃんと青山さんの血の臭いに変わってしまうのだ。

 

一方その頃、黄ノ山さんの自宅では……

 

「バーブー♪」

 

「おいしいね……。うん……」

 

茜ちゃんはミルクを飲ませてもらった後、大好きなにんじんペーストを食べさせてもらってニコニコしていた。だが、黄ノ山さんはコップ1杯の水しか飲めず、真っ暗な顔をしていた。

 

スプーンを茜ちゃんの口元に持っていく時、どうしても目を一瞬逸らさずにはいられないのだ。

 

「バブバブ♪ダダダ♪マー、マー♪」

 

その時、茜ちゃんが、今までしなかったおしゃべりを始めた。

 

「え……?茜ちゃん、今なんて……?」

 

黄ノ山さんは思わず茜ちゃんの小さな手をそっと握った。

 

「マー♪マー♪」

 

茜ちゃんはお母さんの手の温もりが嬉しかったのか、真夏の太陽の光に負けないほど明るい顔をしていた。

 

「……っ!!!茜……ちゃ……っ!ああああああああああああっ!!!!」

 

2体のマネキンを見ただけで赤ちゃんのように泣いていた自分の幼さ、そして、茜ちゃんがそばにいるのに笑えなかった自分の心の弱さ。黄ノ山さんは、それらを茜ちゃんに教えてもらったような気がしたのだ。

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